みどり壮の人々③

記事
小説
急に、このアパートをみんなで買ってくれと言われてもねぇ。
だからさぁ、みんなでゆっくりと此の件について話し合ってくれないかなぁ。少し愛想笑いを浮かべて大家は言った。
それで、大家さんイヤ深堀さん一体いくらでこのアパートを売ると言うのかねと60代の男の大宮が言った。
大宮が大家と呼ばずに苗字で言い直したのは既に深堀は大家としてのオーラの雰囲気を失っていたからだ。
それまでもアパートの修理を頼んでも依頼をいつも渋っていたし、前回の台風で被害を屋根に受けた時も大家の深堀は対応しなかった。
雨が天井から漏れて降って来るので布団や畳が濡れる。
大家が動くまで待っていられないから自分たちでお金を出して修理したのだった。
それはーと少し小声になって九百万円で売ろうと思って居る。
九百万円で買ってくれないか。
土地の広さも200坪ほどあるから高い買い物じゃないだろう。
九百万円だったら一所帯で150万円ずつ出し合えば丁度900万円になるから一人の負担としては、そんなに無理な話ではないだろうと小声ながらも、おもねるような語調で深堀は言った。
アパートの住人達は900万円と聞いて何にも云わなかったが目が泳いでいた。
では、みんなで検討して良い返事を聞かせて呉れと言って深堀は帰って行った。
急に降って沸いた青天の霹靂の事態にアパートの人々は動揺していた。


サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す