◆ 「これは完璧だ」――Kさんの自信
営業歴10年のKさんは、ある外資系企業との大型商談に向けて、
何日もかけて提案資料を作りこんでいた。
会社の実績、ソリューションの特長、
他社との違い、データ、専門性…
「これだけ盛り込めば、きっと説得力は十分」
Kさんは、そう確信していた。
◆ プレゼン当日、空気がズレる
商談の当日。
プロジェクターに資料を映し、堂々と話し始めたKさん。
が・・・
先方の反応は、どこか薄い。
途中で相手の部長がこう口を開いた。
「御社の強みはわかりました。でも、うちの現場では何が変わる
のかがまだ…」
(あれ? ちゃんと話してるはずなのに?)
Kさんは、焦りながら資料を進めた。
だが、温度感は最後まで戻らず、
商談は「検討します」で静かに終わった。
◆ 上司の一言:「それ、君の“自己紹介”じゃないか?」
帰社後、Kさんは上司に報告をした。
「自信あったんですけどね… 想定外でした」
上司は、一言で切り返した。
「K、それってさ、“自分が言いたいこと”ばかりじゃなかったか?」
「相手の“知りたいこと”は、ほとんど載ってないぞ」
Kさんはハッとした。
◆ 「言いたいこと」と「知りたいこと」は違う
提案資料をもう一度見返すと、たしかに「自社の強み」ばかりが
並んでいた。
でも相手が知りたかったのは、
「この提案が、自分たちの課題とどうつながるのか」
「導入後にどう変わるのか」
「リスクや不安点はどうフォローされるのか」
だったのだ。
◆ あの提案、どうしたらよかったのか?
あの時のKさんは、「自社の強み」を語ることに全力を注いでいた。
資料には、自社の実績・差別化ポイント・最新機能がぎっしり
詰まっていた。
でも・・・相手は、その情報を求めていなかった。
では、どうすればよかったのか?
答えはシンプル。
“相手の視点”から、資料の順番を設計すること。
◆ たとえば、こう変えるだけで伝わる
・1ページ目:相手が抱えている“具体的な課題”を一言で書く
→「あ、それ、うちの話だ」と“自分ごと化”される
→ 導入のつかみとして、共感と興味を引き出せる
例:
「日中の荷下ろし遅延が、全体スケジュールに影響して
いませんか?」
・ 2ページ目:その課題と提案内容の“関係性”を図解で示す
→ なぜこの提案が有効なのか?が直感的に理解できる
→ 図で説明すれば、決裁者も社内に共有しやすくなる
例:
「原因分析 → 改善手段 → 導入後の流れ」を1枚で可視化
・3ページ目以降:成果イメージ・導入コスト・不安への対策
→ 「導入したらどうなるか」「本当に安全か」の不安を先回りして解消
→ 決断しやすい状態をつくる
例:
・「導入3ヶ月で作業時間が◯%短縮」
・「初期費用は〇〇、月額△△でスタート可能」
・「専属担当が導入後2ヶ月は無償サポート」
◆ つまり:構成に必要なのは「ストーリー」ではなく「導線」
資料はストーリーではなく、「決断への“思考の導線”」である。
相手が「なぜそれが必要か」「どう変わるか」「不安はないか」
と順に思考をたどっていけるように、情報の順番を組み立てるだけで、
伝わり方と反応は、大きく変わる。
結果・・・
「これは、うちに向けた提案ですね」
「よく現場の状況を理解されている」
商談はスムーズに進み、無事に成約となった。
◆ まとめ:プレゼンは“自分の話”ではなく、“相手の未来”を
語る資料は、自分のすごさを伝えるためのものではない。
相手の不安をなくし、未来を描き、意思決定を後押しする
設計図だ。
Kさんはこの経験を通して、こう言うようになった。
「資料は、“自分の言いたいこと”を書く前に、
“相手の知りたいこと”を3つ書き出すのが先ですね」
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