この記事は、休職中・復職後・退職後に「再発が怖い」「不安で動けない」と感じている方に向けて、心理職の立場から心の整理のヒントをまとめたものです。
休職して、少しは休めているはずなのに、
「このまま時間が過ぎていって大丈夫なんだろうか」。
そんな不安が、ふとした瞬間に浮かんでくることはありません。
再発はしたくない。でも、何をしたらいいのかは分からない。
調べれば調べるほど、正解が分からなくなって、動けなくなる。
これは、決して特別なことではありません。
むしろ、ちゃんと自分のことを考えている人ほど起きやすい状態だと、私は感じています。
休職中に不安で動けなくなる理由|再発が怖くなるのは自然なこと
休職中、多くの人が「このままでいいのだろうか」という不安を抱えながら、同時に「何をしたらいいかわからない」という状態に陥ります。
これには、いくつかの理由があります。
まず、再発への恐怖がブレーキになること。
厚生労働省の調査によれば、メンタルヘルス不調による休職者の再発率は約30〜50%と報告されています。
この数字を知ると、「もう二度とあんな思いはしたくない」という気持ちが強くなるのは当然のことです。そして、みなさん、「再発すること」を不安に思っている人は多くいます。
次に、「正しい過ごし方」を探しすぎてしまうこと。
インターネットで検索すれば、休職中の過ごし方についての情報はあふれています。
でも、書いてあることはそれぞれ微妙に違っていて、「結局どれが正解なの?」と混乱してしまう。
さらに、主治医・会社・家族、それぞれ言うことが違うことも少なくありません。
主治医は「焦らずゆっくり」と言い、会社は「復職の見通しを」と聞いてくる。
家族は心配そうに「大丈夫?」と声をかけてくる。
その間で、やった方が良いこと、こうした方が良いはすぐに見つかるんですが、「自分がどうしたいのか」が見えなくなってしまうのです。
そして、「休む=何もしない方がいい」という思い込み。
たしかに、休息は必要です。
でも、ただ時間が過ぎるのを待つだけでは、不安は消えないし、再発を防ぐ準備にもなりません。
ここで大切なのは、動けないのは「怠け」ではないということです。
これは、あなたの心と体が発している防衛反応として自然な状態なんです。
多くの人が、まったく同じところで立ち止まっています。
再発予防のために本当に大切なこと|「頑張らない」ための考え方
再発予防と聞くと、「もっと強くならなきゃ」「同じミスを繰り返さないように頑張らなきゃ」と考える人が多いのですが、実はこれが落とし穴です。
調子が悪くなった原因を自分の弱さだと責めても、何も解決しません。
むしろ、自分を責めることそれ自体が、心の負担を増やしてしまいます。
日本産業カウンセラー協会の研究では、復職後に再発しない人の特徴として
・「自分のストレスサインに気づく力」
・「適切に休む力」
・「助けを求める力」
が挙げられています。
つまり、再発しない人は「無理をしない仕組み」を持っているんです。
気合や根性では続きません。
大切なのは、無理なく続けられる「仕組み」を作ることです。
休職中にできる再発予防|不安を減らす3つの視点
では、具体的にどんなことができるでしょうか。
ここでは、3つの視点をお伝えします。
1. 自分の調子の波を知ること
これは、再発予防の土台になる部分です。
「調子が落ちる前のサイン」を言葉にしてみてください。
たとえば、
・体の変化(眠れなくなる、食欲がなくなる、頭痛がする)
・気分の変化(イライラしやすい、何もかも面倒になる、涙もろくなる)、
・考えの変化(「自分はダメだ」という考えがぐるぐる回る、先のことが不安になる)
など。
これらのサインは人によって違います。
だからこそ、自分だけのサインを知っておくことが、早めに対処するカギになります。
2. ストレスへの対処パターンを増やすこと
「我慢しない」という選択肢を持つこと。
これは、決してわがままではありません。
ストレス対処には、大きく分けて2つがあると言われています(Lazarus & Folkman, 1984)。
・「問題焦点型」(問題そのものを解決する)
・「情動焦点型」(気持ちを落ち着ける)
でも、多くの人は「問題を解決しなきゃ」と考えすぎて、
・「逃げる」
・「休む」
・「人に頼る」
という選択肢を持てなくなっています。
すべての問題を正面から解決しなくてもいいんです。
時には、そこから離れることが最善の対処になることもあります。
3. 働き方を「1択」にしないこと
元の職場に戻るだけが正解ではありません。
もちろん、復職を目指すのも一つの選択肢です。
でも、それだけが唯一の道ではないんです。
・時短勤務
・配置転換
・別の職場への転職
・しばらく休んでから考える
場合によっては退職後の選択肢も含めて、いくつかの可能性を視野に入れておくこと。それが、心の余白を作ります。
厚生労働省の「働き方改革」の取り組みでも、多様な働き方の推進が謳われています。
フルタイムで働くことだけが「普通」ではない時代になってきているんです。
復職・退職はゴールじゃない|自分に合った働き方を考える
私がこれまで70人近くの方の支援に関わってきた中で、強く感じるのは
・「復職=成功」
・「退職=失敗」
という二元論では測れないということです。
元の職場に戻った人もいれば、別の道を選んだ人もいます。
雇用される働き方が合わない人もいるし、それは悪いことでも恥ずかしいことでもありません。
大切なのは、「自分の人生」として考えること。
「会社のための人生」ではなく、「あなた自身の人生」です。
しんどさを減らす選択は「逃げ」ではありません。
自分を守るための、とても勇気ある決断です。
ひとりで抱えなくていい
ここまで読んで、「分かるけど、でも実際にどうしたらいいかはまだよく分からない」と感じる方もいるかもしれません。
それも、とても自然なことです。
心理相談やカウンセリングというと、「何か深刻な悩みがないと行っちゃいけない」と思う人が多いのですが、実はそうではありません。
「答えが欲しい」「整理したい」という状態も、十分に相談の入口になります。
公認心理師・臨床心理士という立場で多くの方を見てきて感じるのは、考えや気持ちを一緒に整理する役割の人がいるだけで、景色が変わることがあるということです。
一人で考えていると、同じところをぐるぐる回ってしまう。
でも、誰かと一緒に言葉にしてみると、「あれ、意外とこういうことだったのかも」と気づくことがあります。
私が大切にしている支援のスタンス
私は、正解を押しつけることはしません。
ただ、中には答えやアドバイスもしくは、画期的な現状を打破する方法を教えてくれると思っている人はいます。
でも、それがあなたに当てはまり、良くなる結果までをコントロールすることはできません。
なぜなら、正解はその人の中にしかないからです。
だから、「話を聞くこと」が重要になってきます。
大切にしているのは、その人のペースを尊重すること。
そして、少しずつ、余白を取り戻していくこと。
これまで70人近くの方の心理教育、再発予防、復職準備に関わってきましたが、みなさん本当に多様です。
同じ「休職」という状態でも、背景も、価値観も、目指す方向も、それぞれ違います。
だからこそ、「こうすべき」ではなく、「あなたはどうしたい?」から始めることを大切にしています。
最後に
休職中や復職後、退職後の不安や再発への怖さは、一人で抱え込むほど大きくなりやすいものです。
もし今、「何かしなきゃいけない気がするけど、動けない」、そんな状態にいるなら、それはあなたがダメだからではありません。
ちゃんと自分を守ろうとしている証拠です。
一人で整理しきれなくなったら、誰かと一緒に考える、という選択もあります。
それは弱さではなく、自分を大切にするための一歩です。
この記事が、少しでもあなたの心の余白を作るきっかけになれば嬉しいです。
あなたのペースに合わせて、一緒に考えていければと思っています。
休職中や復職後、退職後の不安や再発への怖さは、一人で抱え込むほど大きくなりやすいものです。