【シリーズ】行政書士は胃が痛い 第3話:受話器の向こうの溜息

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コラム
重い足取りで事務所のドアを開け、高橋は自分のデスクの前で深くため息をついた。役所で突き返された建設業許可の更新書類が、やけに重たく感じる。工事経歴書と契約書の工期、たった一日のズレ。しかし、その「たった一日」が、今は大きな壁となって立ちはだかっている。

一番気が重いのは、これからしなければならない連絡だ。あの気の短い社長に、この不備をどう伝えるか…。考えただけで、また胃の奥が鈍く痛み始める。

スマートフォンを手に取り、社長の番号を表示させる。コールボタンを押す指が、一瞬ためらう。ええい、ままよ。意を決して発信すると、数コールで相手が出た。

「…あ、社長、先ほどはどうも。行政書士の高橋です。大変申し訳ないのですが、書類の件で一点だけ…」

恐る恐る切り出すと、受話器の向こうから、予想していたよりもさらに深い溜息が聞こえてきた。

「なんだよ先生!しっかりしてくれよ!こっちはその許可がないと仕事が進まないんだぞ!」

叱責に近い声色に、胃がきりりと締め付けられる。高橋は痛みをこらえ、努めて冷静な声で、不備の内容と必要な訂正箇所、そして再度提出が必要なことを丁寧に説明した。

「…わかったよ。すぐに対応する。だけどな先生、次はないぞ!」

ガチャン、と少し乱暴に電話は切られた。高橋は、受話器を置くと同時に、椅子の背もたれに深く体を沈めた。安堵と疲労が、一気に押し寄せる。クライアントの期待と、役所の厳格さ。その狭間で神経をすり減らす日々。この慢性的な胃の痛みは、その証なのかもしれない。

(第4話へ続く)
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