株式市場には常にエネルギーが流出入していることは、9月16日の記事「市場のエネルギー」で述べました。これは、言い方を変えれば、常に資金が出入りしているということです。
資金は株式市場に入ると、そこに一定期間留まった後、再び市場から出て行きます。資金の単位は大から小まで、留まる時間も長から短まで、様々です。
資金が市場で留まっている間、それは株式に姿を変えていることになります。
さて、このような資金の流れ、特に、現在市場に留まっている資金(株式)を把握することは可能でしょうか?
その一つの目安として、時価総額というものを考えることができます。時価総額とは、発行済株式数にその日の株価の終値を掛けた値で、現時点における当該株式発行企業の価値を示します。
しかし、発行済株式数にほとんど変化がないならば、これは単に株価の変化を捉えているに過ぎません。
それならば、日々の株価に日々の出来高を掛け合わせたらどうでしょうか?
これはその株式の日々の売買高であり、この値が大きいほど売買が活発であると言えるでしょう。しかし、残念ながらそれだけでは、現在市場に流通している株式の元々の価値は分かりません。
私たちが株式の売買を行なう場合、一つの銘柄を分割して買ったり、分割して売ったりすることがあります。信用取引であれば、売りと買いとを自由に組み合わせることができますが、現物取引の場合はやや事情が異なります。
株式譲渡益税の確定申告をしたことがある方はご存知だと思いますが、株式の取得価格には「平均取得価格」というものを用いる必要があります。
そして、株式を買い足すたびに平均取得価格を再計算し、売るたびに売値からそれまでの平均取得価格を差し引いた金額が譲渡損益ということになります。
このやり方は、当初は煩わしさを感じることもありますが、よくよく考えれば極めて理に適った方法であることが分かります。
同一銘柄の場合、所有する株式は同一のものであり、本来、この部分は500円の株、この部分は800円の株などと分けることはできません。全部ひっくるめて何円の株としか言えないのです。
すなわち、その株式を取得するのに全部でこれだけの金額が掛かり、その結果これだけの株数になったというだけのことです。そして、その金額を株数で割ったものが、平均取得価格ということになります。
これは、ナンピンを好む投資家にはお馴染みのものでしょう。ナンピンは、平均取得価格を下げて、それを売買の基準にする方法です。
持ち株の内この部分はいくらいくらで買ったから、あの値段になるまで売らない、などということはない訳です。あくまで、平均取得価格が現在株価を下回ることを目指します。
このように、平均取得価格は投資家が当該銘柄を取得するために要した平均費用を意味します。
今までは、一人の投資家について考えてきましたが、これを全投資家で考えてみるとどうなるでしょう?一見難しそうですが、以下、順を追って考えてみましょう。
まず、ある銘柄Aに対して何人かの株主がおり、彼らは平均s円でその株を取得しているものとします。
今、持ち株の内pの割合だけ株を売りに出したところ、s+⊿s円で売ることができました。すると、元々の株主の持ち株は1-pの割合に減少し、新たにs+⊿s円で購入した株主がpの割合だけ加わることになります。
その結果、全株主の平均取得価格は、s×(1-p)+(s+⊿s)×p=s+⊿s×pに変化します。これが株式上場時から現在まで継続することで、株主の入れ替わりに伴い、彼らの平均取得価格が変化していくことになります。この直近の平均取得価格を、「平均保有株価」と呼ぶことにします。
これは、現在の株主達が株式を取得するのに要した平均費用であり、現在株価よりも低ければ含み益が出ている状態、高ければ含み損が出ている状態となります。
株主の含み損益は、株式の需給動向に大きな影響を与えます。例えば、平均保有株価が株価よりも十分低ければ、多少の株価の変動にも落ち着いていられますが、これらが接近してくると、様々な思惑が働くことになります。
さて、元々の株主が株式を売りに出す場合、その割合pは元々の株主が何であるかによって異なってきます。もしも、全ての株主を対象とするのなら、pは発行済株式全数に対する出来高の割合ということになります。
しかし、株主の中にはほとんど売買を行なわない安定株主がかなりの割合存在します。そのような株主を含めてpを決定すると、実際の売買を反映し辛くなります。
そこで、安定株主を含んだ長期投資主体、外国人投資家を中心とした中期投資主体、浮動株層を中心とした短期投資主体に分けてpを決定することで、より実際の売買に即した判断が可能となります。
これらは、移動平均になぞらえるなら、それぞれ長期移動平均、中期移動平均、短期移動平均に相当します。すなわち、移動平均と同様の判断材料とすることができるわけです。
pの基準を変えるということが、移動平均期間を変えるということに相当します。
こうして求められた平均保有株価が上場時のそれよりも高ければ、株式はその価値を増加させていると言えます。そして、それと同時にΣ(⊿s×p)に相当する資金を市場外に流出させています。
これらの事実を見るならば、株式投資はけしてゼロサムゲームではないことが、お分かりいただけると思います。
資金の流出入という点に関して言えば、⊿s×pにおけるpをそのまま出来高に置き換えることで、日々の実際に流出入する資金量が分かります。
これは、市場に働きかける力のようなものであり、それに株価を乗じた値は市場のエネルギーを表すものと考えられます。
以上のように、平均保有株価という考えを用いることで、市場の資金の流出入を定量的に捉えることが出来るようになります。
先日の記事でも述べたように、このダイナミックな動きを上手く循環させることにより、価値が創造されていくのです。
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