「児童相談所」と聞くと、どのような場所を思い浮かべるでしょうか。
ニュースなどでは、児童虐待に関する報道の中で登場することが多いため、
「虐待を受けた子どもを保護するところ」
というイメージを持っている方も多いかもしれません。
もちろん、それも児童相談所の重要な役割です。
しかし、児童相談所が扱っている問題は、児童虐待だけではありません。
子どもの養育、発達、非行、家庭環境など、**子どもに関するさまざまな問題について相談を受け、必要な支援や措置につなげる専門的な行政機関**です。
今回は、児童相談所がどのような役割を担っているのかを見ていきましょう。
○児童相談所とは
児童相談所は、児童福祉法に基づいて都道府県等に設置される行政機関です。
児童福祉法では、児童相談所の業務として、子どもに関する家庭その他からの相談に応じること、必要な調査や判定を行うこと、子どもや保護者に対して必要な指導を行うことなどが定められています。
つまり、単に相談を聞くだけの窓口ではありません。
相談を受けた後、
「この子どもには、どのような支援が必要なのか」
「家庭で生活を続けることができるのか」
「一時的に保護する必要があるのか」
「他の福祉サービスや専門機関につなぐべきなのか」
といったことを専門的に判断し、必要な対応を行っていく機関でもあります。
児童虐待への対応
児童相談所の役割として特に知られているのが、児童虐待への対応です。
児童虐待には、大きく分けて、
・身体的虐待
・性的虐待
・ネグレクト(養育の放棄・怠慢)
・心理的虐待
があります。
虐待が疑われる場合、児童相談所は通告や相談を受け、子どもの安全確認や家庭状況の調査などを行います。
重要なのは、実際に虐待があったことが完全に証明されてから動く機関ではないという点です。
子どもの生命や身体に危険が生じる可能性がある以上、疑いの段階でも状況を確認し、必要に応じた対応を行う必要があります。
「一時保護」も重要な役割
子どもの安全を迅速に確保する必要がある場合などには、児童相談所による「一時保護」が行われることがあります。
たとえば、家庭内で深刻な虐待が疑われ、そのまま自宅に帰すことが危険であるような場合です。
一時保護は、子どもの安全を確保しながら、その後どのような支援や措置が必要なのかを検討するためにも行われます。
ただし、子どもを家庭から離すことは、子ども本人にも家族にも非常に大きな影響を与えます。
そのため、一時保護は単なる「行政上の預かり」ではありません。
子どもの安全確保と家族関係への介入という二つの側面を持つ、非常に重要な行政作用といえるでしょう。
虐待以外の相談も扱っている
児童相談所というと虐待対応ばかりが注目されますが、実際には相談内容はもっと幅広いものです。
たとえば、
・子どもの発達について心配がある
・家庭での養育が難しくなった
・子どもの非行について困っている
・学校や家庭で問題行動が続いている
・保護者が病気などの事情により養育できない
・子どもの性格や行動について相談したい
といった問題も対象となります。
つまり、
「虐待が起きたから行く場所」ではなく、「子どもを育てるうえで専門的な支援が必要になったときの相談機関」
という側面もあるのです。
子どもを「取り上げる機関」ではない
児童相談所について、ときどき「親から子どもを取り上げるところ」というイメージで語られることがあります。
しかし、この理解は正確ではありません。
児童相談所の目的は、親を罰することではなく、基本的には子どもの福祉を確保することにあります。
そのため、家庭での生活を継続できるのであれば、必要な助言や支援を行いながら家庭での養育を支えることも重要な仕事です。
一方で、子どもの生命や身体に危険がある場合には、保護者の意向とは別に、子どもの安全確保を優先しなければならない場面もあります。
ここが児童相談所という機関の難しいところです。
「親子を一緒にしておくこと」と「子どもを守ること」が常に一致するとは限らないからです。
児童相談所には大きな権限もある
児童相談所は相談機関であると同時に、一定の行政権限を持つ機関でもあります。
必要な調査を行ったり、一時保護を行ったり、状況によっては児童福祉施設への入所等に向けた手続を進めたりすることがあります。
また、保護者の意向と児童相談所の判断が対立するケースでは、家庭裁判所が関与する仕組みも設けられています。
したがって、
「児童相談所に相談する」
という柔らかな側面と、
「行政が子どもの安全のために家庭へ介入する」
という強い側面の両方を持っていることが、児童相談所という機関の大きな特徴です。
## なぜ児童相談所の仕事は難しいのか
児童相談所の対応がニュースになると、
「なぜもっと早く保護しなかったのか」
という批判が出ることがあります。
反対に、子どもを保護した事案では、
「なぜ親から子どもを離したのか」
という批判が出ることもあります。
これは児童相談所が置かれている立場の難しさをよく表しています。
家庭という、本来は行政が簡単に介入すべきではない私的な領域に対して、子どもの安全を守るためには介入しなければならないことがある。
しかも、その判断を誤れば重大な結果につながる可能性があります。
介入しなさすぎても問題となり、介入しすぎても問題となる。
児童相談所の仕事は、この非常に難しい境界線上にあります。
「189」という番号
児童虐待かもしれないと思った場合には、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」が設けられています。
「いちはやく」と覚えることができます。
虐待が確実でなければ連絡してはいけない、というものではありません。
「もしかすると虐待ではないか」
という段階であっても、相談・通告することができます。
虐待かどうかを最終的に判断することまで、一般の人に求められているわけではないからです。
まとめ
児童相談所は、単に虐待された子どもを保護するためだけの機関ではありません。
子どもに関する相談を受け、家庭環境などを調査し、専門的な判定を行い、子どもや保護者を支援し、必要な場合には子どもの安全を確保する。
相談・支援と行政による介入の両方を担っているところに、児童相談所の大きな特徴があります。
そして、児童福祉の場面では、「親がどうしたいか」だけではなく、「子どもにとって何が必要なのか」という視点が極めて重要になります。
家庭の問題だから家庭だけで解決する。
必ずしも、それが正しいとは限りません。
子ども自身が助けを求めることが難しいからこそ、家族だけでなく、学校、医療機関、市区町村、警察、そして児童相談所など、社会全体で子どもの安全と成長を支える仕組みが必要なのです。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本