管理建築士とは設計事務所に必ず専任で置かなければならないその事務所の設計業務を統括し管理しなければならないと建築士法で定められた建築士です。
今回は管理建築士の立場からどのような視点で図面を見ているのか、お施主様の家づくりにどう影響するのかを書いていきます。
図面を見て不安に感じる事は大切なことです。
契約前の図面を見て
・本当にこれで進めて大丈夫なのか
・どこを確認すればいいのかわからない
そんな気持ちを抱いた事はありませんか?
本来、契約図面とはお施主様が希望する住まいとそれを実現する為に関わる人たちを繋ぐ言語のような存在です。ですが記号や線がたくさん描かれた図面でどのような暮らしになるかを普段から見慣れていない方が想像する事は難しいですよね。
だからこのように不安に感じる事は当たり前な事です。
それに家づくりを進める上で必要な事でもあります。
「見た目はOK」でも不安が残る理由
図面を見てなんとなく不安になるのには理由があります。
・図面は専門知識がある事を前提に描かれている
・必ずしも要望が優先されているわけではない
・記号や線ではそこでの暮らしが想像しにくい
図面は法規的・構造的な理由で要望がそのまま実現できていない部分が含まれる事もあります。その結果、要望が少し形を変えて実現されている事もあります。作り手側であればすぐに理解できる事でも、専門知識がない方にとってはその意味や理由が読み取れません。
「わからない」からこそ、不安になるのです。
では管理建築士はそのようなお施主様の不安と、作り手の間を繋ぐ役割となる図面をどのように見るのでしょうか
専門的な所だけを見ているわけではありません
管理建築士にとってその図面に示されている計画が法規的・構造的・技術的に問題が無いのか確認する事は当然の役割です。どれだけお施主様にとって満足をしてもらえる図面ができても、建築できないと意味が無いからです。
ただし今回はその専門的な部分の詳細には触れません。
ここではお施主様の不安と作り手側をつなぐ視点についてお話しします。
①適切な建物の計画と要望されている計画の関係を考える。
まずその敷地の環境や特性に合わせてどのように建物を計画する事が適切かを大前提として考えます。そこからお施主様の要望と照らし合わせて改めて適切であるかを確認します。
作り手側からするとお施主様の要望に対して否定的な意味となる提案をする事はとても勇気がいる事です。この会社は要望を聞いてくれないという印象から始まると信頼関係を構築する事は難しいからです。ですが時にその要望をそのまま受け入れるとお施主様にとって素敵な住まいとならない可能性がある事もあります。そこを客観的に考えてお施主様と作り手側の視点にズレがないかを確認していきます。
②法規的・構造的な視点と要望との関係性を確認する
要望の内容によっては法規的または構造的な制約によってできる事とできない事があります。その制約の中で、要望がどの程度実現できているのか、代替え案が適切かを確認する事も大切なポイントです。
③それらを踏まえて後から後悔しやすいポイントを重点的に確認する
①と②に配慮した上で改めて図面に問題が無いか確認していきます。図面上では問題なさそうでも実際に生活してみると感じる問題もあるからです。
例えば
回遊動線を要望されている場合
一見図面上は便利そうな回遊動線が計画できていても
・朝の忙しい時間帯、動線上に配置した洗面台の後ろを通られるとストレスを感じる
・帰宅時の荷物を収納する場所が回遊動線上の玄関から遠い位置にある
・夜でも来客がある生活なのに洗面・浴室と来客の動線が回遊動線上で一緒になる
「通れるかどうか」ではなく「気をつかわずに動けるか」という視点が大切です。
大きな窓がたくさんある開放的な住まいを要望されている場合
一見図面上では大きな窓が大きな空間にたくさん配置されて明るく開放的な空間になりそうでも
・大きな空間を優先して細かい収納が少ない為家具を多く配置する必要がありかえって騒がしい空間になる
・窓の大きさを優先している為家具を配置できる場所が限られ狭く感じてしまう
・窓や家具の掃除が大変でほこりが目につきやすい生活になる
図面は何も置いていない状態なので、家具を配置した後の空間を想像する視点が大切です。
このように要望された内容が図面に反映されているかだけではなく、実際に生活をしてくとどうなるかという視点で図面を確認していく必要があります。
契約図面の確認は「不安を整理する為」のもの
これまでのポイントは
・図面を見慣れていない
・実際の暮らしを図面に落とし込む経験がない
場合、気づけなくて当然の事です。不安を感じる事は当然の事です。
「細かいから」でも「心配性だから」でもありません。
信頼できる方だから不安を伝えるのは失礼かと思う必要はありません。
むしろ家づくりにおいてとても大切な行為です。
図面チェックはその設計を否定するものでは決してありません。
・不安を言葉にする
・判断材料を増やす
・納得して契約する
その為の作業です。
建築士法上では管理建築士とは「技術的な事項を統括する建築士」と定義されていますが
お施主様と作り手側の間に必要な意見のすり合わせが図面を通してできているのかを、その名の通り管理する事も、すべき大きな役割だと私は思います。
もし
客観的な視点で図面を確認してもらいたい
要望通りの図面になっているのか不安
要望通りになっているけどこのまま進めていいのか不安
など、思っている方がいましたら図面チェックのサービスを提供しておりますのでご相談していただければと思います。
家づくりは「納得して進める」事が何より大切です。