前々回のブログで、強制的支配(Coercive Control)についてお話ししました。
今回は、具体的な事件を見ていきたいと思います。
実際の事件の概要と登場人物を見ると、そのパターンがはっきりと見えてきます。
ご紹介するのは海外の事件です。
もちろん日本でも同様のパターンの事件はあるはずですが、まだ強制的支配(Coercive Control)の概念が一般的ではないので、このような視点から報道されているものが少ないですね。
ジェフリー・エプスタイン事件
富豪の金融家であるエプスタインが、未成年者を含む多数の女性を性的に搾取した事件です。
彼は、通称エプスタイン島と呼ばれる彼が所有していた島で、権力者達を顧客とし、人身売買を行なっていたとされています。
(裁判前に死亡したので人身売買では有罪になっていません。)
被害者たちは経済的依存、孤立化、恐怖によって長期間支配されていました。
権力者(アンドリュー元王子などの著名人)が顧客であったことで、被害者が声を上げたとしても当初は「示談金、口止め料を狙った、お金目当ての被害妄想」として扱われていました。被害者たちはしばらくの間「誰も信じてくれない」「相手は権力者だから勝てない」という絶望の中にいましたが、実際に10年以上かけて地道な活動を行い、エプスタインを逮捕、アンドリュー王子は称号を剥奪されて元王子となりました。アンドリュー元王子と民事裁判で戦っていた被害者は、今年亡くなっていて、自ら命を絶ったとされています。
ショーン・"ディディ"・コムズ事件
音楽プロデューサーのショーン・"ディディ"・コムズ(元パフダディ)による性的暴行と人身売買の疑惑です。
経済的・社会的な権力を利用し、監視、脅迫、孤立化などの手法で被害者を支配していました。
逃げようとした被害者は暴行され、連れ戻されていました。その時の映像がホテルの防犯カメラに映り、裁判の証拠として提出されましたが、売春関連で有罪となっただけで、人身売買では有罪に至っていません。
逃げようとすれば報復される恐怖、業界での地位を失う恐怖が、被害者を縛り続けていました。周囲の人々も、業界での地位を失う可能性があり介入できない状況です。
*この裁判が行われたニューヨーク州では、強制的支配(コアーシブコントロール)が法制化されていません。
この2つの事件の共通点は:
ご褒美(お金や偽りの愛情など)を与えながら、
洗脳と心理的操作を繰り返し、
恐怖を植え付けて支配、
被害者たち社会から孤立、
「逃げられない」と信じ込まされる、
逃げようとしても、連れ戻される、
周囲の人々も異変に気づいていたものの、介入できない。
身近な例でも同じパターン
有名人、著名人の事例ではなくても、パターンは同じです。
たまたま、海外の事件、男女の事件を取り上げましたが、国、性別は関係なしに起こりうる事件です。
振込詐欺の受け子、新興宗教、ブラック企業も強制的支配(コアーシブコントロール)の一種かもしれないですね。
ちょっとした操作(マニピュレーション)から始まり、徐々に支配へとエスカレートしていきます。
では、身近な関係でこのパターンがどう展開するか、段階を追って見てみましょう。
ステップ1:ご褒美と小さな操作
最初は優しい言葉、プレゼント、「あなたは特別だ」という承認
「今日は疲れているから、代わりに買い物に行ってくれない?」(罪悪感を利用)
相手の好意や愛情を示しながら、小さなお願いをする
→ 「この人は私を大切にしてくれる」と信じ込む
ステップ2:境界線の侵食と心理的操作
「あなたのその友達、あまり好きじゃないんだよね」
「その服、似合わないと思うよ」
「心配だから」という理由で頻繁に連絡を求める
あなたの好きなことをすると、相手が不機嫌になる
→ あなたは無意識に「相手の不機嫌を避ける」ようになる
ステップ3:孤立化とコントロールの強化
「あの友達とは会わないでほしい」と直接要求
友人や家族との連絡を遮断
どこに行くか、誰と会うか、何時に帰るかを詳しく聞く
お金の使い道を管理し始める
「あなたのためを思って」という言葉でコントロールを正当化
→ 社会から孤立し、相談できる人がいなくなる
ステップ4:恐怖による完全支配
常にGPSで監視
違反すれば怒鳴る、無視する、脅す
「お前は何もできない」「誰もお前を助けない」と繰り返し言う
暴力を示唆する、または実際に暴力を振るう
→ 被害者は「逃げられない」と信じ込み、常に恐怖の中で生きるようになる
ステップ5:逃げられない状態の完成
逃げようとすると、泣いて謝る、または激しく怒る
「もう二度としない」「あなたがいないと生きていけない」と懇願
一時的に優しくなり(ご褒美の再登場)、また支配が始まる
周囲の人々も「内部のことだから」「本人が選んでいる」と介入できない
→ 完全に逃げられないサイクルが完成
これは恋愛関係だけでなく、職場でも、ビジネス関係でも、組織でも同じパターンで起こります。
これらのステップが、いきなりではなく、数ヶ月から数年かけてゆっくりと進行するため、被害者は「いつから」「どうやって」この状態になったのか気づかないのです。
気づいた時には大きな問題となっていて、このまま従い続けるか、抜け出すために戦うか選択をしなければなりません。
人間の脳は、従う方が楽なので、大抵の場合は従う方を選んでしまいます。
「相手を傷つけたくない」
「波風を立てたくない」
「自分が我慢すれば丸く収まる」
そうやって自分の脳を説得して、違和感を飲み込み、気づいたときには「逃げられない」状況を作り出してしまいます。
この様なことを未然に防ぐためにも、自分の感覚を信じることが大切です。
例えば、罪悪感にやられやすいことを自覚するだけでも、大きな武器になります。
「また罪悪感を使われている」と気づけば、その操作は効力を失います。
この小さな気づきの積み重ねが、自身を守る力になります。
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