サンプルシナリオ(物語調その2cafeでお仕事)

記事
小説
Café&レストラン『Charlotte』


香穂
「うーん。このお店は制服が可愛いんだけど、二人には難しそうだよ」
カナン
「そう? じゃぁ……別のお店にしよう」
香穂
「そうだね。そうした方が良いと思う」
「あ! ここなんてどうかなぁ?」
カナン
「えー……制服が超ダサいじゃん……あんたセンス悪すぎない?」
香穂
「そこまで言わなくていいじゃん、ちぇー」
カナン
「うっさいわね! さっさと次、探しなさいよ!」
香穂
「カナンがお店のお仕事体験したいって言ったんじゃん……」
カナン
「なにか言った?」
香穂
「な、何も言ってないよ!」
「ルーンは良いお店見つけた?」
ルーン
「にゃ?」
カナン
「あんたはさっきから魚の動画ばかり見てるじゃない!」
「真面目にやりなさいって言っても無駄よね……はぁ」
「あっ! ここの制服可愛いけど、どうかなぁ?」
香穂
「うーん、でもこれ……経験者限定ってなってるよ。体験じゃないみたいだよ」
カナン
「もう……いいじゃん! 嘘つけば!」
香穂
「ダメだよっ! すぐにバレるし、迷惑かけるでしょ?」
カナン
「うっさい! わかってるわよ、それくらい」
『今、私達はカナンと約束した、店員体験が出来るお店を探しています。
 これがなかなか曲者で、カナンは可愛い制服でないとダメと言って聞きません。
 可愛い制服でお仕事体験をさせてくれるお店なんて見つかるわけもなく……
 100件近いお店をすでにチェックしているのでした』
カナン
「だぁぁっ! ダメだぁ、休憩!」
香穂
「そだねぇ、休憩しよ」
カナン
「何いってんの? あんたは探し続けなさいよ!」
香穂
「えぇぇぇっ! そんな理不尽なっ!」
カナン
「うっさい! 早く続けなさい!」
香穂
「ねぇー! ルーン、この理不尽どう思う?」
「って……あれ?」
女性
「ふふっ、そっかぁ、ルーンちゃんはお店探しに飽きちゃって退屈してたんだね」
ルーン
「そうなのにゃっ! お姉さんどこか良いお店を知らないかにゃ?」
香穂
「ルーンっ! ごめんなさいっ、この子ったら……」
「お邪魔しちゃダメだよっ!」
女性
「良いんですよ。私もちょうど暇していたところです」
ルーン
「お姉さんもルーンと一緒だにゃ!」
女性
「うん。一緒だね」
「ところでえーっと……」
香穂
「あっ! 私、香穂って言います」
女性
「香穂さん、私はロラです。よろしくね」
香穂
「はいっ。ロラさん。よろしくおねがいします」
ロラ
「ところで……ルーンちゃんから少し事情を聞いたのだけれど、体験で働かせてくれるお店を探しているとか?」
香穂
「はい。なかなかお店が見つからなくて……」
ロラ
「香穂ちゃん達が良ければなのだけど、私のお店はどうかな?」
香穂
「えっ……? ロラさんお店をされているのですか?」
ロラ
「町外れの小さいお店だけどね。よければどうかな?」
ルーン
「ルーンは賛成だにゃっ! お姉さんのお店が良いにゃっ!」
香穂
「カナンはどうかな?」
カナン
「今着てるその服ってお店の制服?」
ロラ
「そうだよ。ちょっと地味で恥ずかしいけど」
カナン
「うん……! シンプルでいいと思う。私もお姉さんのお店で良いと思う」
香穂
「それじゃぁ……お願いしてもいいですか?」
ロラ
「もちろん。大歓迎よ」
「こんな可愛い子達に来てもらえるなんて、こっちがお礼を言いたいくらいだわ」
香穂
「ありがとうございますっ!」
ルーン
「わぁーい! お姉さん、ありがとぉー!」
カナン
「ありがと」
ロラ
「準備もしないといけないから、明日、お店まで来てもらえるかな?」
「マップは香穂ちゃんの端末に送っておくわ」
香穂
「分かりましたっ!」
ロラ
「それでは、私はこれで」
香穂
「はい。明日、よろしくおねがいします」
ロラ
「こちらこそ、よろしくね」
香穂
「はい。それでは、さようなら」
ルーン
「ばいばいにゃぁー」
カナン
「さようなら」
ルーン
「楽しみだにゃぁー。おいしいお菓子とか用意してくれてるのかにゃぁ?」
カナン
「ばかっ! 遊びに行くわけじゃないんだからね!」
香穂
「そうだね。お手伝いに行くんだよ」
ルーン
「えぇぇ、お菓子はなしかにゃぁ……?」
香穂
「がんばったら、もらえるかもしれないよっ!」
ルーン
「わぁーい! お菓子がもらえるならがんばるにゃぁっ!」
カナン
「ほっんと、単純なんだから……邪魔だけはしないでよね!」
ルーン
「大丈夫にゃ、ルーンもがんばるっ!」
香穂
「うん。二人共、明日は頑張ろうね」
カナン
「ふんっ! あんたに言われなくても頑張るわよ!」
ルーン
「はぁーい! お菓子いっぱいもらうにゃぁ」
香穂
「それじゃ、明日に備えて今日は帰ってお休みしようね」
ルーン
「はぁーい」
カナン
「そうね。そうしましょ」
【お仕事体験当日】
香穂
「この辺りのはずなんだけど……」
「おかしいなぁ」
カナン
「もしかして、あんた……迷ったの?」
香穂
「マップではこの辺りにあるはずなんだけど、おかしいなぁ……」
ルーン
「香穂、迷子にゃ?」
香穂
「違うって、迷ってなんて……」
「あっ! あそこじゃない?」
ルーン
「行ってみるにゃっ!」
香穂
「あっ! ちょっと、ルーン!」
「もうー、カナン行くよー」
カナン
「はぁ……」
香穂
「Charlotte!! ここだよ!」
「こんにちはー! ロラさーん」
ロラ
「はーい。あら、いらっしゃい」
「お店の場所わかりにくかったんじゃない?」
「迷わなかった?」
香穂
「はい。迷わず来れましたっ!」
ルーン
「にゃぁー!! 香穂がうそついたにゃっ! ほんとは迷子だったんだにゃ!」
「うそはだめっていつも怒るのにぃ! ダメなのにゃぁ!」
香穂
「しーっ! こういうときは良いのっ!」
ルーン
「だめなのにゃっ! だめなのにゃぁっ!」
ロラ
「ふふっ、ルーンちゃんはいい子だねぇ」
「いい子には、これをあげようね」
「はい。クッキー」
ルーン
「わぁーい!! お姉さんありがとにゃぁー!」
カナン
「やめてよ……はずかしい」
ロラ
「はい。カナンちゃんもどうぞ」
カナン
「あ、えっと……その、ありがとう……ございます」
ロラ
「ふふっ、カナンちゃんは恥ずかしがり屋なんだね。かわいい」
カナン
「そんなっ……」
ロラ
「私の勘違いだったかな。ごめんね」
カナン
「いえ……間違いでもない……ですし」
ロラ
「んふふっ! ありがとう、カナンちゃん」
「それでは、簡単に自己紹介をしましょうか」
「私はロラ、café&レストラン『Charlotte』のオーナーです」
香穂
「私は香穂です」
「くせっ毛の子がルーンです」
ルーン
「はぁーい! ルーンだにゃ!」
香穂
「ストレート髪の子がカナンです」
カナン
「あのっ! 今日は一生懸命がんばりますっ。よろしくおね……おねがいします!」
ロラ
「よろしくお願いね、カナンちゃん」
カナン
「はいっ! 私、こういうお店で働くのが夢だったんですっ!」
「えっと……ありがとうございます」
ロラ
「あら、カナンちゃんったら、お姉さん嬉しいわ。ありがとう」
ルーン
「なるほどにゃぁ」
香穂
「なるほど……いつもと違うと思ったら、そういう事なんだ」
カナン
「な、なによ! いいじゃない……別に……」
ロラ
「ふふふっ、カナンちゃん、いつも通りでいいのよ」
「普段のカナンちゃんが見れたほうがお姉さんも嬉しいわ」
カナン
「が、がんばります!」
ルーン
「にゃぁー! カナンが変だにゃぁ。病気かにゃぁー?」
カナン
「うっさい!」
「あ……えっと、やめてよ!」
ロラ
「うんうん。言い直す前のカナンちゃんの方が素敵だよ」
カナン
「えっ……でも……」
ロラ
「自然体で居る方が疲れないでしょ?」
「大丈夫、まだ会って間もないけど、カナンちゃんがどういう子か大体わかってるから」
「だから、ね?」
カナン
「はいっ! じゃない……えっと、うんっ!」
ロラ
「ふふふっ、かわいい」
「素直になれたご褒美にクッキーをあげましょう。どうぞ」
カナン
「別にっ! 素直になんて、ありがと……」
香穂
「すごい……こんな短時間であのカナンを……」
ルーン
「あぁぁー! ずるいー! ルーンもっ、ルーンにもクッキー頂戴にゃ!」
ロラ
「そうね。ルーンちゃんにもあげないとね。どうぞ」
ルーン
「わぁーいっ! ありがとにゃぁー。お姉さん大好きにゃぁー」
ロラ
「ルーンちゃんも素直でかわいいわねぇ」
香穂
「ごめんなさい。ありがとうございます」
ロラ
「香穂ちゃんもクッキーどうぞ」
香穂
「えっ……! 私にも? ありがとうございますっ」
ロラ
「んふふ。香穂ちゃんもしっかり二人の事気にかけててえらいね」
香穂
「ロラさん……!」
ロラ
「んふふ。自己紹介はこのくらいにしてっと」
「三人分の制服を用意してあるから試着してみてくれるかな」
「サイズが合わなかったら遠慮なく言ってちょうだい」
香穂
「はいっ! ありがとうございます」
ルーン
「はぁーい」
カナン
「うん」
カナン
「すごい! ピッタリ!」
香穂
「私もぴったり!」
ルーン
「にゃぅぅ……香穂ぉー」
香穂
「どうしたの? ルーン」
ルーン
「胸のあたりが苦しいにゃぁ……」
香穂
「ロラさんに言ってサイズを交換してもらおうね」
ルーン
「助かるにゃっ!」
香穂
「ロラさんごめんなさい。実は……」
ロラ
「あら、ごめんなさい」
「ルーンちゃんとカナンちゃんは同じサイズで大丈夫だと思ったのだけど」
カナン
「えっ……!」
香穂
「へぇ……そうなんだぁ、新事実だねぇ!」
カナン
「な、なによっ! なんでジロジロ見てるのよ!」
香穂
「べっつにぃー」
カナン
「エロオヤジみたいな目で見ないでよ……きもい!」
『ドカッ』
カナンが香穂のお尻を蹴る音
香穂
「いったぁぁい!」
「わざわざ蹴らなくてもいいじゃん……」
カナン
「ふんっ!」
ロラ
「あははっ、今日はお店がにぎやかでいいわね」
香穂
「はは……うるさくてごめんなさい」
ロラ
「いいのよ。にぎやかなのはすごく好き」
香穂
「ありがとうございます」
ロラ
「さてっと……それじゃぁ、お掃除しましょうか」
「お掃除が終わったら少し練習してからお店を開店するわね」
香穂
「はいっ!」
ルーン
「はぁーい」
カナン
「いよいよ……!」
「よしっ!」
香穂
「ちょっとカナンーここ水浸しだよー」
「モップの水ちゃんとしぼったー?」
カナン
「えっ……? あっ! ごめんなさいっ!」
香穂
「大丈夫?」
カナン
「うっさい! 大丈夫に決まってるでしょ!」
香穂
「あっ! ちょっとルーン!」
「せっかくお皿とお箸セットしたのに!」
「お箸でお皿を叩いちゃダメっ!」
ルーン
「えー……だってこれ楽しいにゃぁー」
香穂
「だめっ! セットし直すから、ルーンはカウンターを拭いててね」
ルーン
「ちぇー……はぁーい」
カナン
「きゃぁぁっ!」
香穂
「カナン!? 大丈夫?」
カナン
「うぅぅ……ごめんー……」
香穂
「あらら、バケツを引っくり返しちゃったんだね」
「乾いた雑巾持ってくるから、一緒に拭こうね」
カナン
「うぅぅ……ありがと」
ルーン
「わぁぁーい」
香穂
「ルーン! ホコリが立つから走りまわっちゃダメ!」
ルーン
「にゃぁぅぅぅ……」
香穂
「お掃除は私がやっておくから、二人はロラさんにお仕事の流れを教わってきて」
ルーン
「はぁーい」
カナン
「えっと……ありがと……」
香穂
「ロラさんに迷惑かけちゃダメだよ。それじゃ、いってらっしゃい」
香穂心の声
(さてっと、掃除をする前よりもひどくなったこの状況をなんとかしないと……)
(こんな調子でオープンして大丈夫かなぁ?)
(ダメダメっ! 二人を信じないとっ!)
(ちゃちゃっと済ませて、私も合流しないとね)
香穂
「ロラさん、お掃除終わりました」
「二人を任せてしまってごめんなさい」
ロラ
「お掃除ありがとね。大変だったでしょう」
「ちょうど今、二人に実技で練習してもらおうとしていたところよ」
香穂
「実技に間に合ってよかったです! 私も参加しますね」
ロラ
「そうしてもらえると助かるわ
「香穂ちゃんはなぜか慣れているようだし、大丈夫でしょう」
香穂
「あっはは……実はお手伝いで働いていたことがあって」
ロラ
「なるほど、頼もしいわ」
ルーン
「香穂はけいけんしゃ?ってやつかにゃ! すごいにゃ!」
香穂
「へへへ」
『ドカッ』
香穂のお尻を蹴る音
香穂
「いったああああい!!」
「二度も蹴った!」
「親父にもっ――」
『ドカッ』
香穂のお尻を蹴る音
カナン
「それ以上言ったら100回蹴る」
香穂
「はい……ごめんなさい……」
カナン
「ふんっ!」
ロラ
「あらあら、仲良しなのねぇ」
カナン
「だれがっ!」
ルーン
「にゃははー、カナンと香穂は仲良しにゃぁー」
カナン
「うっさいわよっ!」
ルーン
「にゃぁぅぅぅっ! カナンが怒ったにゃぁ、怖にゃぁ」
「お姉さんぎゅーにゃ」
ロラ
「はいはい、怖かったねぇ。よしよし」
ルーン
「にゃうぅぅぅ! ゴロゴロにゃぁ」
カナン
「なによっ! ふんっ」
ロラ
「カナンちゃんも、よしよし」
カナン
「ちょっと……やめっ!」
「ゴロ……ゴロゴロ……」
ロラ
「ふふふ、二人共いい子」
香穂心の声
(カ、カナンが……ゴロゴロ言った!?)
(ルーンのはよく聞くけど……カナンのは数回しかないよ)
(こんな短時間でカナンにゴロゴロ言わせるとは……)
(恐るべしっ! ロラさん)
ロラ
「さてっと、それじゃぁ、練習を始めましょうか」
香穂
「はい。よろしくおねがいします」
ルーン
「はぁーい。がんばるにゃぁ」
カナン
「大丈夫、大丈夫……私なら大丈夫……!」
「あっ! はいっ!」
ロラ
「それじゃぁ、テーブルの下に書いてある番号と同じ番号の料理を持っていってね」
カナン
「えっと……二番だから、二番のテーブルに……きゃぁっ!」
ロラ
「カナンちゃんっ!? 大丈夫?」
カナン
「にゃぁぅ……ごめんなさい……」
ロラ
「お料理は作り直せばいいだけだから、大丈夫だよ。ゆっくりでいいからね」
「もう一回、違うお料理を運んでみて」
カナン
「はい……ゆっくり、ゆっくり……」
「三番の料理を三番のテーブルに、ゆっくり、ゆっくり……」
「できたっ!」
「やったぁ! 私、できたよっ!」
ロラ
「うんうん。できたね! その調子でがんばろうね」
カナン
「はいっ! もう一回!」
香穂
「カナンはよく失敗するけど、大丈夫そうだね」
「問題なのは……」
ルーン
「にゃぁぅ! 美味しそうな料理がいっぱいにゃぁ……」
「じゅるりっにゃ」
「ちょっとだけにゃら、ばれにゃ……」
香穂
「ルーン? だめだよ、今食べようとしたでしょ?」
ルーン
「ふにゃっ! し、してないにゃ!」
香穂
「って……すでに食べてるじゃん……」
「口にソースが付いてるよ」
ルーン
「た、食べてないにゃっ!」
香穂
「急いで拭いてもダメッ!」
ルーン
「ばれたら仕方ないにゃっ!」
「食べたにゃっ!」
香穂
「開き直ってもダメッ!」
ルーン
「にゅぅぅ……ごめんなさいにゃぁ……」
香穂
「もうー! ごめんなさい、ロラさん……」
ロラ
「仕方ないよねぇ。こんなにいっぱい並んでるのだもの」
「でも、これはお客様のだから食べちゃダメだよ?」
「我慢できたら、ご褒美にとびきり美味しいおいしい食事を御馳走してあげようかなぁ」
ルーン
「とびきりおいしい食事かにゃ!」
ロラ
「そうっ、とびきりおいしいのっ!」
ルーン
「我慢するにゃっ! 楽しみだにゃぁ!」
「ルーンもお料理運ぶにゃっ!」
「うにゅ……トレーに乗せて……」
「両手に持って……」
香穂
「ちょ、ちょっとルーン、持ちすぎなんじゃ……?」
ルーン
「大丈夫、大丈夫にゃぁ」
「行ってくるにゃぁ!」
カナン
「あれ? もうお料理がない?」
ロラ
「ルーンちゃんが残ったの全部もっていったよ」
カナン
「え? そんな……私まだ2つしか運んでないのに」
ルーン
「ただいまにゃぁ」
「全部同じ番号のところにおいてきたにゃよ」
香穂
「うそ……? 経験者の私よりすごいじゃん……」
ロラ
「あはは、二人共すごいわ」
「はい。ご褒美のクッキー」
ルーン
「わぁーい! このクッキー好きにゃ!」
カナン
「私は別に、クッキーがほしいわけじゃ……」
「うぅ……でも、ありがと」
香穂心の声
(これか……これが餌付けというものなのかっ!)
(なるほど……これなら私にも……)
香穂
「ルーン! カナン! 私もクッキーあげる」
ルーン
「わぁーい! 香穂ぉ、ありがとにゃぁ」
カナン
「ふんっ、どうせロラさんを見て、私も真似すればとか思ったんでしょ」
香穂
「そ、そんなつもりじゃないよ」
『ドカッ』
香穂のお尻を蹴る音
香穂
「ぎゃふっ!」
「いったぁい! 蹴らなくてもいいじゃん……」
カナン
「ふんっ」
「下心が丸見えなのよっ!」
ルーン
「カナンがいらないならルーンがもらうにゃ」
カナン
「どうぞ、好きにすれば?」
ルーン
「わぁーい! ルーンクッキーだいすきにゃ」
ロラ
「あはは、ほんと賑やかでいいわねぇ」
「そうそう、頑張っている二人を見てちょっと思いついたことがあってね」
「Charlotteの看板メニューのシチューを二種類盛り合わせて……」
「じゃーん!」 
「クリームシチューとビーフシチューで二人をイメージしたシチューを作ってみたよ」
ルーン
「わぁー! ルーン達の髪色と同じなのにゃ!」
「すごいすごいー! おいしそうにゃ」
カナン
「わぁ……! 素敵」
香穂
「二人をイメージした料理っ! 感激ですっ!」
ロラ
「ふふふ、喜んでもらえてよかった」
「今日からメニューに追加しましょうね」
「今から名前を考えている時間はないから、今日は適当な名前をつけておこうかしら」
ルーン
「んーっ! おいしいにゃっ」
香穂
「ルーン!? 勝手に食べちゃダメっ!」
ロラ
「ふふっ、いいのよ、試作品だから」
カナン
「私も……私も、たべていい?」
ロラ
「どうぞ、カナンちゃんも食べてみて」
カナン
「やった! ありがとうございます」
ロラ
「二人が食べている間に、お店を開けてこようかしら」
「ゆっくり食べていていいからね」
【3時間後】
ルーン
「にゃぅ……全然お客さんがこないにゃ」
香穂
「ルーンっ! ダメっ!」
ロラ
「あはは。ごめんね。先月くらい前からこんな感じなんだよ」
香穂
「何かあったんですか?」
ロラ
「目の前に大型チェーンのレストランがオープンしてね」
「お客さんはみんなそっちに流れちゃった」
香穂
「なるほど……それで……」
ルーン
「こないにゃら、連れてくればいいにゃ!」
カナン
「それが出来たらとっくにやってるでしょ!」
香穂
「うーん……何かいい方法はないかなぁ?」
ロラ
「いろいろ試したりはしてるんだけどねぇ。なかなかうまく行かなくて」
カナン
「お客さんを連れてくる……うーん……」
「お客さんを、連れてくる……
「連れてくる……」
「そうだっ!」
香穂
「カナン、なにかいいアイデアでも思いついた?」
カナン
「私がよくチェックしているSNSがあるんだけど」
「それを使ってみようと思うの」
「さっき撮った私達がシチューを食べている写真、あれを使おうと思うの」
香穂
「私は詳しくないから、カナンにまかせてもいい?」
カナン
「うん。やってみる」
ロラ
「カナンちゃん、ありがとね」
カナン
「ううん! お客さんがいっぱい来てくれたら私も嬉しいもんっ!」
「直ぐに反応があるわけじゃないから、ビラ配りでもしながら反応を待ってみよう」
ロラ
「チラシなら前に作ったものがたくさん残っているわ」
「持ってくるから、少し待っていて頂戴」
香穂
「カナン、なんだか楽しそうだね」
カナン
「別にっ!」
ルーン
「にゃはは、カナンがてれてるにゃ」
カナン
「うっさい! 余計なこと言わないで」
ルーン
「にゃぁぅぅ」
ロラ
「おまたせっ! たくさんあるから、ガンガン配っちゃって!」
カナン
「ありがとうございます!」
「それじゃ、三人でビラ配りをしてきますね」
ルーン
「行ってくるにゃぁ」
香穂
「Charlotteです。よろしくおねがいします」
カナン
「おいしい食事を用意して待ってます」
ルーン
「これあげるにゃ!」
カナン
「ちょっとルーン! 真面目にやりなさいよ」
ルーン
「ルーンは真面目にやってるにゃっ!」
香穂
「喧嘩してないでしっかり配ってよぉー」
女の子
「わぁー! 写真と一緒だ! かわいい」
ルーン
「にゃ?」
女の子
「ねぇー! お名前何ていうの?」
ルーン
「ルーンだにゃ」
カナン
「私はカナンだよ」
「どうしたの?」
女の子
「あのね、わたし二人の写真を見て、会いに来たの」
カナン
「えっ! うれしい、ありがとっ!」
母親
「ごめんなさいっ!」
香穂
「いえいえ、大丈夫ですよ」
「二人の写真を見て会いに来てくれたんですね」
「ありがとうございます」
母親
「そうなんです。会いたいって言って聞かなくて……」
香穂
「あはは、わざわざ会いに来てくれるなんて嬉しいです」
「良ければ、中でゆっくりしていきませんか?」
母親
「そうね。ちょうどお腹も空いてきましたし、お邪魔しようかしら」
香穂
「ありがとうございますっ!」
ロラ
「あら、いらっしゃいませ」
「空いているお席へどうぞ」
女の子
「ねぇー! ネコちゃん達とお写真撮って」
母親
「えぇっ? ご迷惑になるからダメ」
カナン
「私達はいいですよ」
ルーン
「わぁーい! お写真にゃ」
香穂
「それじゃ、私が撮りますので、お母様も一緒に写ってあげてください」
母親
「あらっ! ありがとうございます」
香穂
「いえいえ、それじゃ、撮りますね」
『カシャッ』
シャッターをきる音
香穂
「はい。きれいに撮れました」
母親
「ありがとうございます」
「あっ、そうだ」
「お友達にもここのお店のことを教えてあげたいので、この写真SNSにのせてもいいですか?」
香穂
「もちろんですっ」
母親
「ありがとうございます」
ロラ
「おまたせしました。写真と同じスペシャルシチューです」
女の子
「わぁー! 写真と一緒だぁー!」
ロラ
「んふふ。熱いから気をつけてね」
女の子
「うんっ!」
母親
「このシチューもさっきの写真と一緒にのせて大丈夫ですか?」
ロラ
「えぇ。もちろんです」
『チリンチリン』
店の扉が開く音
ルーン
「いらっしゃいませですにゃ」
男の子
「あっ! 写真に写ってたネコのお姉ちゃんだ!」
ルーン
「にゃにゃっ! ルーン達に会いに来てくれたのにゃ?」
男の子
「うんー! 一緒にお写真とってもいい?」
父親
「こらこら、先に注文を済ませてからだろ」
「すいません。息子がわがままを言ってしまって」
ルーン
「気にしないでにゃ! ルーンはうれしいにゃ」
「空いてる席に座ると良いにゃ」
父親
「あぁ、ありがとう」
男の子
「ネコのお姉ちゃんありがとっ」
ルーン
「後でいっぱいお写真撮ろうにゃぁー」
『チリンチリン』
店の扉が開く音
カナン
「いらっしゃいませ」
女子高生
「わっ! ほんとにいた。ちょーかわいい」
「SNSでネコちゃんが働いてるって見て来てみたんだ」
カナン
「あ……えっと、ありがとう、ございます」
女子高生
「あははっ! やば、まじかわいい」
カナン
「えっと……空いてるお席へどうぞ」
女子高生
「ありがとー。後で一緒に写真取らせてね」
『チリンチリン』
香穂
「いらっしゃいませ。空いてるお席へどうぞ」
『チリンチリン』
ルーン
「いらっしゃいませにゃ。空いてるお席へどうぞですにゃ」
ロラ
「香穂ちゃんゴメーン!」
「オーダーが多すぎてキッチンが間に合わないの!」
「こっち、手伝ってもらえる?」
香穂
「あっ、はい! すぐいきますー」
「ルーン、カナン、こっちまかせるね。何かあったらすぐに呼びに来て!」
ルーン
「はぁーい」
カナン
「集中してるから話しかけないでっ!」
香穂
「ロラさん食材ここに置きます」
ロラ
「ありがと。お料理できたから、持っていって」
香穂
「はいっ!」
「ルーン! お料理出来たよー」
ルーン
「はいにゃ」
「持って行くにゃ」
香穂
「ホール大丈夫?」
ルーン
「大丈夫にゃよ。お客さんがいーっぱいで楽しいにゃ」
香穂
「この状況で楽しめるルーンが羨ましいよー」
ルーン
「にゃはは、いってくるにゃぁ」
カナン
「香穂、食べ終わった食器下げてきた」
香穂
「ありがとう。そこに置いといて!」
カナン
「うんっ」
香穂
「そっちは大丈夫?」
カナン
「なんとか……大丈夫っ!」
「それじゃ、私、戻るね」
香穂
「うん、ゆっくりでいいからね!」
香穂心の声
(本当に大丈夫かな? 少しだけ様子を見てみよう)
カナン
「ルーン! 3番さんおねがい!」
ルーン
「はいにゃっ! ここ片付けたらすぐに行くにゃ」
カナン
「ありがと」
ルーン
「カナンーごめんにゃ。1番さんが呼んでるにゃっ」
カナン
「わかった。私が行くー」
香穂心の声
(うそ……二人が協力しあってる……)
(自分の事ばかり考えていた二人が協力しあってるなんて)
(この経験で協力し合う事を覚えたのかなっ!)
(へへっ、連れてきてよかった)
ロラ
「香穂ちゃーん! お皿持ってきてー!」
香穂
「はーい! すぐに持っていきます」
香穂心の声
(向こうは大丈夫そうだから私は自分の仕事に集中しよっと)
ロラ
「ありがとうございました」
「ふぅ……なんとか最後のお客様をお見送りできたね」
「みんな本当にありがと」
ルーン
「にゃははは、楽しかったにゃぁ」
カナン
「ぐぅぅ……もう無理、一歩もあるけにゃい……」
香穂
「私も……ちょっと休ませて……」
ロラ
「本当にありがとうね」
「約束の美味しい料理いっぱい作っておいたから、向こうで食べよ」
ルーン
「わぁーい!! ルーンお腹ペコペコなのにゃ」
香穂
「ありがとうございます」
カナン
「テーブルまで連れてって……もう動けない」
ルーン
「仕方ないにゃぁ」
「よいしょっにゃ」
カナン
「ちょっと! 引きずらないでよっ!」
ルーン
「だってカナン重いにゃ」
カナン
「うっさい! 重くないっ!」
「もうっ! 自分で歩くから離して」
ルーン
「なんだにゃ……せっかく連れて行ってあげようとおもったのににゃぁ」
カナン
「うっさい! もういい!」
香穂、ロラ
「ははは」
ロラ
「さてっ! では、いただきましょうか」
一同
「いただきます(ルーンのみ)にゃー」
ルーン
「にゃぅぅっ! おいしーにゃぁー」
カナン
「んーっ! このお肉柔らかくておいしいっ」
香穂
「ロラさん、こんなにおいしい料理をありがとうございます」
ロラ
「ううん。お礼を言いたいのはこちらの方よ」
「三人のおかげでお客さんがいっぱい来たしねっ」
「もうダメかもって諦めてたけど……」
「今日お客さんが喜んでる顔を見たら、もう少し頑張ろうって気になれた」
「本当にありがとう」
ルーン
「にゃっ! そうだったにゃ」
「お客さんがロラさんにとても美味しい料理をありがとうって伝えてほしいって言ってたにゃ」
カナン
「私もお客さんから、素敵な雰囲気で良いお店ですねって伝えてって言われたよ」
ロラ
「ほんとにっ! うれしいっ!」
「明日からはまた閑古鳥が鳴くだろうけど……」
カナン
「そんな事ないかもしれないよ?」
ロラ
「え?」
カナン
「今日来たお客さん達がSNSに色々つぶやいてくれてるの」
「こんなおしゃれなお店が近所にあるなんて知らなかった」
「ネコちゃん達も可愛かったけど、料理が美味しくて感動した」
「また料理を食べに来たい」
「だって、他にもいろいろあるよ」
ロラ
「ほんとに……? うれしいっ!」
「直接お客さんの声を聞くことってなかなかないから」
「こうやって色々嬉しい言葉が書かれているのは本当にうれしいね」
カナン
「Charlotteは素敵なお店だもん!」
「料理も美味しいし!」
「大型チェーン店なんかに負けないよっ!」
ルーン
「にゃっ!? カナン熱でもあるのかにゃ!?」
「救急車よぶにゃ??」
カナン
「う、うっさい! 呼ばなくていいっ!」
ロラ
「んふふ。カナンちゃん、ありがとう」
「あっ! そうだ。オープン前に作ったメニューの名前考えないとね」
「良ければルーンちゃんとカナンちゃんで考えてもらってもいい?」
カナン
「えっ? いいの……?」
ロラ
「えぇ、ぜひっ!」
ルーン
「わぁーい、じゃぁー」
「マグロっ!」
カナン
「マグロってあんた……ちゃんと考えなさいよ」
ルーン
「ルーンはちゃんと考えたにゃっ! このシチューもマグロと同じくらい好きだから」
「マグロッ!」
カナン
「はぁ……」
「双子ネコのまかないシチュー……」
ロラ
「カナンちゃん! それいい!」
「マグロもいいけど……今回はカナンちゃんの案にしようかな」
ルーン
「にゅぅー、残念にゃ……」
ロラ
「ごめんね。ルーンちゃん」
ルーン
「ううん! カナンが双子って言ったことには驚きにゃけど、私もいいと思うにゃ」
カナン
「ちょ……べつに、深い意味はないし!」
「変なこと言わないでよっ!」
香穂
「あははっ、今日のことで、カナンも少しは素直になれたのかもね」
「来てよかった」
「ロラさん、ありがとうございます」
ロラ
「ううん。またいつでもいらっしゃい」
ルーン
「わぁーい! 毎日来るにゃっ!」
ロラ
「うふふっ、毎日来るならお給料を出さないといけなくなっちゃうね」
香穂
「毎日は来れないけど、時々来ようねっ」
ルーン
「わかったにゃ、時々でいいにゃっ!」
『この後、私達はしばらく談笑をした後、Charlotteを後にした。
 後日、私のもとにロラさんから一通のメールが届いた』
ルーン
「にゃー! お姉さんからのお手紙早く読むにゃっ!」
カナン
「ばかっ! メールだよ」
ルーン
「なんでもいいにゃぁっ! 早く読んでにゃ」
香穂
「はいはい。それじゃ読むよ」
ロラの手紙
『先日はどうもありがとう
あの日以来、お客さんが来てくれるようになって、お店は前と同じくらい繁盛しています
これも三人のおかげだね。本当にありがとう。
またゆっくり遊びに来てね』
香穂
「繁盛してるみたいでよかったねぇー」
カナン
「うんっ! 本当に良かった」
ルーン
「また遊びに行きたいにゃぁ」
香穂
「そだねっ! また行こうね!」

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