慣用句小説"手"「オレとマコトと絵師のおっさん」
マコトのやつと来たら、ホント手に負えない。あれだけダメだと念を押したのに、またしてもシノノメさんの手を借りて展覧会用の水彩画を描いたのだ。これがもしシノノメさんも納得のうえで、2人が手を組んでいると言うのなら話はまだわかる。オレだっていっそその方が2人と手を切りやすい。でもシノノメさんはあんな人だ。まるで手のかかるおっきな子どものようなんだ。どうせシノノメさんの手があいたタイミングをねらって、マコトが無理やり共同作業を持ちかけたに違いない。あいつと来たら、自分の望みをかなえるために、いつだってシノノメさんのライフワークの油絵が一時中断するのを、手ぐすね引いて待ってるんだ。だけどさ、シノノメさんもシノノメさんだよ。マコトの強引な誘いに手もなく引っかかるなんて。マコトにしてみれば、シノノメさんの手が入った水彩画なら、展覧会入賞もありえると打算的に動いただけなのに…。頼まれたら断れない気の弱い性格なんだと言えば、それはよくある話で片が付く。でもはるかに年下の子どもに話を持ちかけられて、唯々諾々とその手に落ちる47歳のおっさんは、やっぱりどこかフツーではない。経歴サショーとか言うけれど、マコトの名で出品する水彩画にシノノメさんが手を貸すのは、そんな言葉があるか知らないが立派な絵師サショーだ。それはまた、純真無垢なシノノメさんが知らず知らず悪事に手を染めることでもある。もちろんシノノメさんにしてみれば、水彩画だってお手のもの。手玉に取られているとも知らず、いつものように手取り足取り指導して、マコトの描いた藤棚の絵に真剣に手を加えたのに違いないのだ。ゲージュツカ肌だなんてマコトはうそぶくけ
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