過去(トラウマ)との対峙の仕方 その7「Virtual」
血の海、血糊、刀、十文字槍、狂った父親、泣き叫ぶ母親、フリーズした弟、心臓、手汗、アブ、ネズミ、足の痺れ、ひんやりした本堂の床、心地よい風、セミの鳴き声、和尚の喝…。座禅は、暇だ。とはいえ、心の中では、色々な事を考え、次から次へと、時系列を無視して、「何か」が浮かんでくる。よく「無心」になるというが、そんな事は、とても無理だ。もし、自分で「何も思わないし、考えない」と思っても、そうする事ができる人は、この世にいないだろう。いわゆる高僧・名僧という方達も、実は、そのあたりは、変わらないらしい。「無心」になれる訳ではなく、「心に浮かんでくる何かを追わない」「なんとかしようとしない」という事らしい。よくあるビジネス本の、問題解決のうんちくとは、真逆の考え方だ。夕食後、寝る前に、最後の座禅をする。夜の本堂は、蝋燭の炎のみだ。座っている畳は、半眼で見ているせいか、ほぼ真っ暗で、どこが畳なのかも、わからない。戸は、開け放たれていて、夜風が、時折、吹いてくる。虫が鳴いている。トラウマやら、血なまぐさい復讐にさえ、こだわらなければ、良い夜だ。復讐?復讐とはなんだ?そういえば、まだ、自分は、こうして生きている。時折、畳の上をネズミが走る。ふと、視界の端に、なにやら、虹色の何かが、跳ね出した。「あれは…。」虹色は、近くに来たり、遠くに来たり、ゆっくり動いている。大きさは、それ程大きくはない。拳ほどか…。「綺麗だな…。」私は、しばし、その虹色を追う事にした。縁側近くまで離れて行って、ふっと消えたかと思うと、また、眼の前で、ふわっと現れたりする。「幽霊じゃないな…。人魂か?」そんなこんなで、結局、座禅
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