素敵なことってたいてい面倒くさい
「スーパーって何人でくることが多いんだろう?」
こんな唐突な疑問が浮かんで鮮魚売り場の前で立ち止まってしまった。
「これはいいな」とか、「この刺身はちょっと高いな」と主婦さながらの品定めをしていたが、流れる人を丁寧に見始めたら魚よりも人が面白くなった。老夫婦といえる二人連れもいれば、男の子と楽しそうにはしゃぐ小さな女子をつれた母親もいる。動きが止まってただ黙々とサバをながめる初老の男性もいた。
「二人の方がひとりより多く買う?」
「それとも、相談して無駄な買い物をしなくなる?」
こんな勝手な疑問と回答も頭の中で繰り返していた。
メモを見ながら食い入るように商品を見詰める女性もいた。きっと今日のおかずは既に決めていてその食材を探しているのだろう、計画的な人だ。紙の代わりにスマホを片手に持つ人もいる。どんなメモがどこまで詳しく書いてあるのか、ちょっと覗き見したくなる。文字じゃなくて人気のレシピサイトを見てるかもしれない。
自分の買い物そっちのけで売り場の景色を楽しんでいた。
そしてもっと面白いものはないかと店内を見渡してみれば、あるじゃないか、いるじゃないか、小走りに動き回る店員さんがいる。
恰好のターゲットを見つけ、今度はこの店員さんを目で追ってみた。実際に追っかけるわけじゃないからストーカーと疑われることはないだろう。
40歳くらいかな、キビキビと動く動作は見ていて気持ちいい。コンテナの袋入りのマヨネーズを棚に並べるスピードはとにかく速い。右腕が無駄なく機械のように同じ動作を繰り返していた。
おっと、このままでは怪しいストーカーにされてしまう。未練は残るがその場を離れ目的の買い
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