第12話「未来を決める夜」
再会の夜から、二週間が過ぎていた。あの夜、蒼に抱きしめられた感触はまだ澪の中に残っている。安心する温度。言葉よりも確かな気持ち。恋が静かに形になった瞬間だった。それからも二人は、毎日連絡を取り合っていた。朝の「おはよう」夜の「おやすみ」些細なやり取り。でも、その小さな言葉の積み重ねが二人の距離を繋いでいた。ただ、一つだけ変わったことがある。蒼が時々、何かを言いかけてやめるようになった。電話でも、メッセージでも。「澪さ」そこまで言って少し沈黙する。そして「いや、なんでもない」そう言って話題を変える。澪は気づいていた。蒼は何かを考えている。それはきっと二人の未来のこと。恋が進むとき、避けて通れない問いがある。この関係をどうするのか。ある夜、蒼から電話が来た。「澪、今いい?」澪は少し緊張した。蒼の声がいつもより真剣だったから。「うん、大丈夫」少しの沈黙。電話の向こうで蒼が息を吐く。「俺さ」「うん」「こっちの仕事、来年で区切りつけようと思う」澪は一瞬、意味が分からなかった。「え?」蒼はゆっくり言った。「東京戻ろうかなって」澪の心臓が強く跳ねた。東京。それは澪が住んでいる街。「え…なんで?」蒼は少し笑った。「正直に言う?」「うん」蒼は言った。「澪とちゃんと付き合いたい」澪の胸が一瞬で熱くなる。蒼は続けた。「遠距離でも続けられると思う」「でも、本気で好きなら」「近くにいたい」その言葉はとても静かだった。でも、重かった。恋は、想いだけでは続かない。人生と繋がるとき、そこには覚悟が必要になる。澪はゆっくり聞いた。「仕事は…?」蒼は答える。「今の会社、東京にも支社ある」「異動できる可能性ある」澪
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