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📖 悪魔会議・裁判官糾弾編

「役立たずめ!」円卓に怒声が飛び交った。「人間どもの“優しさ”ごときに押され、力を失っただと?」「笑わせるな! 悪魔の恥さらしめ!」悪徳裁判官はうつむいたまま、唇を噛みしめる。その姿を、最上位の悪魔の冷たい視線が射抜いていた。「……しかし、まだ方法は……」声を振り絞る裁判官の言葉は、別の悪魔に遮られた。「黙れ!」不安の番人が机を叩く。「もっと“恐怖”を流せばよかったのだ! 数字を並べ、見出しを暗く塗れば、人間どもは勝手に震え上がる!」期待する観客が鼻で笑った。「甘いな。不安などすぐに慣れる。だが“他人の視線”は永遠に逃げられぬ。SNSに縛りつけ、比べさせ、心を削り取るのだ!」「ふん、比べる余裕があるうちはまだ甘い!」不安の番人が反撃する。「未来を真っ黒に塗りつぶして、歩みを止めさせる方が早い!」「未来など曖昧だ!」観客が嘲笑う。「だが“今すぐの比較”は容赦がない。“なぜお前だけできない”──これほど人間を追い詰める言葉はない!」円卓は怒鳴り声で揺れ、罵声と嘲笑が入り乱れる。そのとき、沈黙の証人がただ冷ややかに見つめていた。言葉を発さず、視線だけで場を凍りつかせる。耐えきれなくなった裁判官が叫んだ。「そうだ、人間は沈黙に弱い!会議で誰も発言しないときの、あの気まずさ!家庭の食卓で、食器の音だけが響く夜の重さ!そして学校の授業だ! 先生の問いかけに誰も手を挙げず、ただ時間だけが過ぎていくあの沈黙!あれこそ、人間の心を確実に削る最高の毒だ!」「ハハハ!」不安の番人が腹を抱えて笑う。「わかるわかる! その空気にいるだけで“責められている”と勝手に震えるのだからな!」期待する観客もニヤリ
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ありがとうが悪魔たちに効く理由

ありがとうの賢者に負かされた悪徳裁判官は、地の底で悪魔会議にかけられることになった。人の幸せが大嫌いな悪魔たちにとって、裁判官の敗北は大問題だった。彼らは、誰かが幸せになると困るのだ。満たされることのない世界、常に「足りない」と責め立てられる世界でなければ、自分たちの居場所がなくなってしまうからだ。最大の敵は「感謝」だった。感謝は、いまこの瞬間を満たしてしまう言葉。不足を探すのではなく、すでにあるものを見つめさせてしまう。悪徳裁判官も、この言葉の前にはかなわなかった。「ありがとう」のひとことに力を失い、膝を折ったのだ。そのため悪魔会議では、彼を再び働かせるための「更生プログラム」が議題となった。「人間の子どもに教え込むのだ」一人の悪魔が言った。「点数が足りなければ叱り、隣と比べて競わせ、失敗を恐れさせろ。そうすれば『まだ足りない』という声に耳を傾けるようになる。感謝など、湧きようがない」別の悪魔が口をゆがめて笑った。「大人になっても続ければいい。仕事でも評価で縛り、『まだまだだ』と責め続ければ、奴らは満たされぬまま走り続ける。心に穴があいたまま、決して満たされることはない」その会議のやり取りは、どこか私たちの社会と似ていた。点数、順位、成果、評価。子どものころから大人になるまで、ずっと「足りない」と言われ続ける。それはまるで、悪魔の更生プログラムを忠実に実行しているかのようだった。しかし、最後にひとりの悪魔が低い声でつぶやいた。「だが……“ありがとう”だけには、どうしても打ち消せぬ」どんなに巧妙な仕組みを敷いても、誰かが小さく「ありがとう」と口にするだけで、心に光が差し込み、計
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