今日の絵:たぶん別れ
さようならという言葉は、彼の辞書にはない。少女はそれを知っていた。だから、最後に彼に何かを伝えようと思った時、彼女は、さようならに変わる言葉を必死に探した。ありがとうとか、大好きだとか、またねとか近いものはたくさん見つかったけれど、でも、彼女の伝えたい「さようなら」にはどれも一歩及ばないような気がした。それは少女にとってはどうしても別れの言葉でなくてはならなかった。彼がさようならを知らないのは、捨てることを知らないからだ。望んだものはなんでも手に入れることができて、なくなったものはすぐに補充することができる。彼の周りには「不足」や「欠落」が存在しなかった。少女はそれを、わかっていたのだと思う。世界を何にも知らなかったけれど、そういう勘が恐ろしくはたらく子だった。最後は「さようなら」でなければならないと、心の深いところで知っていたのだろう。ゆらゆら揺れる光は、一瞬を永遠に近いほどに引き伸ばす。彼女は、永遠の中で彼に微笑んだ。「わすれてくださいね」彼は頷いた。その意味を、ほんとうの意味では理解しないまま。
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