今日の絵:たぶん別れ

今日の絵:たぶん別れ

コンテンツ
小説
さようならという言葉は、彼の辞書にはない。
少女はそれを知っていた。

だから、最後に彼に何かを伝えようと思った時、
彼女は、さようならに変わる言葉を必死に探した。

ありがとうとか、大好きだとか、またねとか
近いものはたくさん見つかったけれど、

でも、彼女の伝えたい「さようなら」には
どれも一歩及ばないような気がした。


それは少女にとっては
どうしても別れの言葉でなくてはならなかった。


彼がさようならを知らないのは、
捨てることを知らないからだ。

望んだものはなんでも手に入れることができて、
なくなったものはすぐに補充することができる。
彼の周りには「不足」や「欠落」が存在しなかった。


少女はそれを、わかっていたのだと思う。
世界を何にも知らなかったけれど、
そういう勘が恐ろしくはたらく子だった。

最後は「さようなら」でなければならないと、
心の深いところで知っていたのだろう。



ゆらゆら揺れる光は、一瞬を永遠に近いほどに引き伸ばす。
彼女は、永遠の中で彼に微笑んだ。




「わすれてくださいね」



彼は頷いた。
その意味を、ほんとうの意味では理解しないまま。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す