「●万部突破!」の本のカラクリ
最近、本屋に行くたびに感じるのは——
本の立ち位置がどんどん変わっている、ということです。
大型書店に入ると、ベストセラーがずらっと平積みになっています。
ランキングの棚には「○万部突破!」という帯が並び、まるでヒットチャートのようです。
それだけを見ると、出版業界はまだまだ活気があるように見えます。
でも、実際のところはまったく違います。
出版全体で見ると、60%以上の出版社が経営的に厳しいという現実があります。
初版3000部から始まる本も珍しくなくなりました。
つまり、「数万部売れている本」は、ごく一部の特別な存在なのです。
「なぜ、あんなに売れている本があるのか?」これは、業界の外から見ている人ほど疑問に思う点かもしれません。
答えはシンプルです。
出版社が「重版(増刷)」を決めるときに必要なのは、内容の良さではなく、返品リスクを取れるキャッシュフローです。
書店に本を出荷しても、実際に売上が入金されるのは半年後。
この間、もし返品が増えればキャッシュが回らず、次の重版をかけることができません。
だから、多くの中堅以下の出版社は、「良い本でも増刷できない」というジレンマに陥っています。
逆に、大手出版社は広告を打ち、大量出荷をしてでも話題をつくる。
東京都内のJR線で広告を出すだけでも、数百万円単位以上の費用がかかります。
その費用を回収できる体力がある企業だけが、大部数を仕掛けられる。
つまり——
「大きく売れている=内容が優れている」とは、必ずしも言えない時代なのです。
「売れている本」を信じる時代は、もう終わりかもしれない
もちろん、ベストセラーの中には本当に素晴
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