風が強い。
窓が鳴る。
人差し指で、机をトントンと叩く。
それは、一か所から。
窓。
どこから音がするのか。
私は、よくわかっていない。
私は、勉強が嫌いでした。
苦手だったわけでも、できなかったわけでもありません。
ただ、自分がやりたいと思えること以外が、嫌いでした。
宿題も、あまりやりませんでした。
それでもいいと思っていました。
テストというものに対して、勉強するときも。
それも、あまりありませんでしたが。
指定された場所をやるのではなく、自分で勝手にやりたいのでした。
私は、怒られます。
当たり前ですが。
しかし、テストの点数が悪いというわけではありません。
良いとも言えませんでしたが。
学校をほぼ休んでいたというにもかかわらず、特に自分で勉強することもなく、それなりの成績でした。
しかし、私は怒られます。
みんなの前で。
やればできることをなぜやらないのか、と言われます。
私は、なぜやらなければいけないのかわかりません。
やればできることをやる、というのであれば。
指定されたものでなくても、良いと思うのです。
さて。
私は、結局、あまり勉強というものをしたことがありませんでした。
読書感想文というのも、やったことがありません。
私はそもそも、文章を読むのが好きではないからです。
私は、怒られるのが嫌いです。
怖いからです。
なので、特に反抗したりはせず、なぁなぁな態度を取ることで、どうにか日々を過ごしていました。
しかし、それを許さない人もいます。
私に、なぜか期待をしているのか知りませんが。
授業に出るたびに、催促をされるのです。
やらない私が悪い、というのも、私はわかりませんでしたが。
ずっと怒られるのも、そろそろ気が滅入っていましたから。
ついぞ、やることに決めました。
家に帰り、やろうと思いました。
ところが。
私が勉強できるところは、よく考えたら存在しないのです。
自分の部屋はありません。
リビングの机は、もので埋まっていて、到底、何かできるような状態ではない。
私は、どうすればいいのか途方に暮れて。
お母さんやお父さんに何か言っても。
やる気がある人間はどんな環境でも頑張れる、ということしか言われませんでした。
私は、それでもいいと、今まで思っていましたが。
なんだか、おかしいのは私じゃないのではないか、という気持ちが湧きました。
私は結局。
床でやりました。
下敷きなんてものは、不真面目な私はどこかへやってしまったものですから。
がたがたな字で、一生懸命に、膨大な量を、変な体勢で、腰を痛めながら、やったのでした。
私は、どうして姉だけ自分の机があるのだろう、と思いながら。
仕方がないので、やりました。
母曰く。
使わない人間に持たせても意味がない、とのことでした。
私は、珍しく。
何の気兼ねもなく、学校に行きました。
毎日、重い足取りで向かっていたのですが。
その日は、何か言われることもないと思って。
まるで優等生のように、軽やかな足取りで向かいました。
いつもは目に入っても、何も思わない光景が。
きちんと、何かを通して、自分に入ってきたような感覚がありました。
その先生の授業になって。
私は、宿題を出しにいけませんでした。
今思えば、自分から何かをしたことがありません。
話しかけに行くことが、どうにもできませんでした。
でも、それでもよかった。
私が呼ばれた時に、やりましたと、胸を張れるからです。
いつも丸まっている私の背を、伸ばせるような気がしました。
ただでさえ小さな私が、少しばかり大きくなれるような気がしました。
その日は、珍しく。
先生が、宿題のことについて何も言わず、職員室に帰ってしまい。
私は、昨日やった宿題を机の中にしまい。
休み時間を過ごしました。
結局、それを誰かに見せることはありませんでした。
年々。
宿題をやらないことは、難しくなりました。
高校生にもなると。
宿題をしないと、そもそも成績が付かないこともあります。
私は、また。
自分の布団の上や、即席の机のようなものを用意して、宿題をやりました。
私は、文句を言ったこともありますが。
図書館に行くとか、やりようはいくらでもある。
そう言われて、終わりました。
カウンセリングを受けたことがあります。
私は、家の状況を話したことがあります。
特に、気にはならなかったようです。
学校に来ない方が、ずっと問題だったようで。
そのことについてばかり、聞かれました。
なんだか。
めんどくさい相手だな、とでも思われているような表情を、私は見ました。
私は。
特に、不思議にも思っていませんでした。
何かを与えられることは期待をされることであって。
何も与えられない方が、楽でいいと思っていたからです。
しかし。
私が思ったようではなく。
別に、与えられたからといって、期待をされているというわけでもないようです。
私よりも勉強ができない人も、自分の部屋があるようでした。
友人を見ると、みんな、それを、前提であるように喋るのです。
それを妬むことはありませんでしたが。
どうして私は、学校でも、家でも。
いつも怒られているのか、不思議でなりませんでした。
私が特別。
何が悪いのか。
わかりませんでした。