【自作短編小説】ちょっとめんどくさいやつら  <日常・青春 / 会話劇 / コメディ>

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「カラオケいかね?」

「いいよ、何時まで?連絡せんといかんから」

「あ、俺連絡必要ないから、そっちでいい感じに決めて」

「へ~い。てか、二人?」

「おう。他のやつはこう、ノリが合わん」

「そうなの?意外だね」

「…あれは、合わせることができるだけだね。お前みたいに、どうでもいいやつに嫌われてもいい、とか思ってないってのもある」

「なんで?どうでもいいじゃん」

「デメリットがでかい。協調性がないとか言われて避けられたり、必要な情報が回ってこなかったりするぞ?お前」

「…あんたは、損得で人間関係考えてるってこと?」

「嫌な言い方するなぁ。誰しも、そういう側面はあるって話だよ」

「う~ん?でもさぁ、私別に、誰かの悪口言ったりしてないよ?それでなんで、悪口言い合ってるやつの方が得してんの?なんで?」

「わかったわかった。俺の負け。とりあえずカラオケ行くぞ」

「勝ち負けじゃないんだけど…。まぁ、いっか」

こいつは、幼馴染で。小学校から今まで、ずっと会う機会がある。
名前はショウキ。
お互いに扱いが雑で、気心の知れた仲、だと思う。
私はよく、宿題を助けてもらっていた。
こいつがいなかったら、私の成績は悲惨なことになっていただろう。

カースト?だとかいろいろあるらしいが、よくわからない。
こんなに若いころからそんなドロドロとした関係を作ってるのは、なんだかおもしろくもあって。
たまにショウキから話を聞いては、凄いなぁと感心している。
社会に出てからもこんなものらしいし、英才教育ってやつかな。
なんて合理的なんだろう。

学校からの帰り道から少しずれて、目的地に向かう。
高校生になって門限が20時までに延長されたから、嬉しい。
カラオケでご飯を食べようとすると高いので、遊びに行く報告と同時に、ご飯は家で食べる、と連絡を入れる。
ご飯はみんなで食べたい派のお母さんなので、今日の夕飯の時間は少し遅くなりそうだ。

「連絡入れたか?」

「うん。今日は7時までね」

「あいよ」

堂々と歩きスマホをしていたけど、ショウキが前にいるから、最悪こいつにぶつかるだけで済む。
スマホをポッケにしまって。
少し小走りになって、隣に並ぶ。

…でかくなってね?こいつ。

「そういやあんた、声変わりって終わったの?」

「…どうなんだろ?わからん」

「声変わりの時期にカラオケってどうなの」

「大丈夫だろ」

「あれ、なんか、もっと低くなりたいとか言ってたっけ」

「いや、別になんでもいいな。てか誰だそいつ」

「まぁ、そんなもんか。望んで操作できるもんでもないだろうし」

「男性ホルモン打ったらできるんじゃね」

「そこまでのやついるかね」

「いるだろ、多分」

そんな他愛のない会話をしていたら。
カラオケ屋の看板が見えてきた。
なんでカラオケってあんな音ダサいんだろう。

とか思いながら自動ドアをくぐっていく。

受付でショウキが、適当に注文?を済ましてくれた。
こいつとしか来ないし、こいつがいつもやってくれるから、フリータイムだとかなんだとか、全てが謎。
最近は機械でやるのもあるとかなんとか。よくわからん。
宿題といい、世渡りの要領の良さだけは昔からブレない。
私はこういうの全部で、最初失敗して恥をかくから、嫌いなんだよな。
朝マックでポテトを頼んだことがある女だぞ、私は。

ドリンクバーで飲みものを入れてから、部屋に向かう。
通された部屋は、二人で使うには少し広い角部屋だった。
平日だし、あんま人いないんだろ。
部屋に入って、そこらへんに鞄を置く。

誰にでも合わせられるこいつがわざわざ私だけを誘うのは、愚痴を言うためだろう。
歌ってストレス発散というなら、別に一人で来ればいいしな。
…家に帰ってから通話でよくね?まぁ、歌いたいのもあるんだろ。

大きな画面には、よくわからんアーティストが映っている。
カラオケの契約ってどうなってるんだろ。最初に考えたやつ天才過ぎないか?

「先俺でいいか?」

「いいよ~」

この、何というか。
意味わからん映像が流れるタイプの曲が来ると、外れ感があるな。
全部本人映像というか、MVがあるならそれがいいです、はい。

で、適当に二人とも歌って。
疲れてきた頃。
雑談が始まった。

「本当にくだらん話ができるのは、お前だけだよ」

「そうなの?」

「そうだよ。人にもよるけどな。いろいろめんどくさいんだよ、本当に」

目をつぶって首の後ろをかきながら、疲れたように言った。

「なんか言葉を知らな過ぎていちいち説明しないといけないやつとか。マウントを取ろうとしてどうにか、自分が有利というか、得意な話題に引っ張れないかとずっと考えてるやつとか。なんかいろいろ言ってるようで実際は何も言ってないやつとか。褒めることが負けだと思ってるやつとか。自分の話は楽しそうにするくせに、他人の話聞いてないやつとか。なぜかずっと腕組んでるやつとか…てか、何をどうしたらそうなるんだ?」

「…前も聞いたけど、なんか2つくらい増えてない?」

「そりゃ、高校生になって環境も変わったからな」

「そうね。というか、あんたはもっといいとこ行けたんじゃないの?今更だけど」

「家が近いし、いいとこって言っても、今だって別にそんなに悪くないだろ」

「そう?でもほら、頭が凄くいいところって、人間性もいい人ばっかみたいな話聞くよ?そっちの方が楽だったんじゃない?」

「確かに。でも、近いから…」

「そこそんなに大事なんだ」

「大事だろ」

「まぁ大事か」

「というかお前、俺がいなかったらどうしてたんだ?」

「何を?」

「いや、いろいろ」

「いろいろ?」

「クラスラインには俺が入れたし。部活動見学も俺と行ったし。俺以外と喋ってるところマジで見ないし」

「あー…」

「え、友達いる?大丈夫?」

「あんなに愚痴が出てくる友達はいらないです」

「あれは一部の人間だけだよ。いいやつだってたくさんいる。たくさんの人間と関わってたら、そりゃ悪い部分だって目に入るだろ」

「…疑問なんだけどさ。みんな、自分から話しかけて友達になってるの?」

「そりゃ人によるだろ。誰と仲良くなるかなんて、自分からいかない限り運だ。席が近いやつとか、そういう外的要因に引っ張られて仲良くなることが多くなるからな」

「じゃあ、私は悪くないな。話しかけてくる人間がいなかっただけ。中学は友達いたし。というかあれだね、あんたがいない世界線の場合は、いろいろ積み重なって話しかけられまくってたから」

「わかった。じゃあ今の話しよっか」

「くそ騙されねぇこいつ」

一旦ジュースを飲んで落ち着く。
わざわざストロー使う人ってなんで使うんですかね。

「…よし。わかった」

「お。じゃあ、俺の友達とまず友達になろうぜ」

「私、歌います」

デンモクを操作して、曲を入れる。
マイクを持って、きらりとした目でショウキを見る。

「……」

あ、凄い蔑んだ目だ。
辛。



「ただいまー」

家に着くと既に、いい香りが充満していた。
流石である。

「おかえり。またショウキくん?」

「そ」

「ほんと仲いいねぇ」

「ん~」

「手洗って、着替えてきなさい」

「へーい」

自分の部屋に入って、少しスマホを触る。
ショウキからラインが来ていた。

「お前が思ってるよりはみんないいやつだよ。探そうとすれば悪いところなんていくらでも見つかるし、いいところだってそうだからな」

…わかっとるが。
私からやろうとするとだいたい失敗するから、誰か来てくれるのを待ってんだよ。

「あんたに哀れまれて用意された友達なんか嫌だね」

…よし。

自分の部屋から出て、リビングへ歩いていく。
既に私以外は座って待っていた。

「おねぇちゃん早くー」

「へいへい」

座る。

「いただきまーす」

そう誰かが言い始めたら、みんなそれぞれいただきますと言って、適当に食べ始める。
我が家の習慣というかなんというか。
他の家知らんからわからんけど。

「高校はどうだ」

「どうだ、じゃ抽象的すぎてわからないから、もっと抽象度を落として」

「…相変わらずだな。じゃあ、高校は楽しいか?」

「お父さん。思い返してみてほしいんだけど、学校が楽しいなんてことあった?それも、行事とかじゃなくて、普段から」

「…ないな」

「そういうこと。楽しいよ」

「…?」

「あんまりお父さんをからかわないの」

「思い通りの反応してくれるから楽しいんだよね」

「もう…」



「ごちそうさまでした」

自分の部屋に戻って。
とりあえずベッドで横になる。
そのまま寝落ちしそうになって。

そういえばやってなかった宿題を思い出して。
とりあえずお風呂に入って。

全部忘れて寝た。

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