マンション管理は人任せで大丈夫?―元フロント担当者が見た管理不全の実態と管理組合の責任

マンション管理は人任せで大丈夫?―元フロント担当者が見た管理不全の実態と管理組合の責任

記事
コラム
「マンションの管理は管理会社に任せているから安心」

「管理組合のことは理事長や役員が考えてくれるだろう」

このように考えている区分所有者の方も、少なくないのではないでしょうか。

しかし、マンション管理会社のフロント担当者として、さまざまな管理組合の運営に携わってきた私の経験からすると、こうした人任せの姿勢には大きな危険が潜んでいます。

マンション管理の質を左右するのは、管理会社の知名度や担当者の能力だけではありません。

**区分所有者一人ひとりが、自分たちのマンションの管理にどれだけ関心を持ち、主体的に関わっているか。**

これが非常に重要なのです。

今回は、マンション管理士であり、元管理会社のフロント担当者でもある私の視点から、管理不全マンションの実態、管理会社との付き合い方、そして管理組合に求められる姿勢についてお話しします。

1.自主管理マンションで実際に目にした深刻な問題

私は以前、築30年以上にわたり、管理会社に委託せず自主管理を続けてきたマンションの担当者になったことがあります。

そのマンションでは、管理委託契約を結ぶ前までの、管理組合の運営が非常にずさんで、修繕積立金の不足だけでは済まない問題が生じていました。

具体的には、**元組合員で理事長だった区分所有者の管理組合資金の着服に使途不明な支出、そして必要性や支出の妥当性が理解し難い修繕履歴や支出**といった問題です。

マンションの管理費や修繕積立金は、区分所有者全員が負担する大切な財産です。

本来であれば、管理組合の収支は適切に記録され、会計監査が行われ、修繕工事についても必要性や金額の妥当性を確認したうえで、適切な手続きを経て支出されなければなりません。

ところが、こうした仕組みが十分に機能していなければ、何のために支出されたのか分からないお金や、必要性を十分に説明できない修繕支出があっても、長期間にわたって問題が放置されるおそれがあります。

さらに、会計や預金管理に対するチェックが働かなければ、着服などの不正行為を防止・発見することも難しくなります。

**マンション管理で恐ろしいのは、単に修繕積立金が不足することだけではありません。長年にわたって区分所有者が積み立ててきた大切なお金が、適切に管理されず、失われてしまうことなのです。**

ただし、ここで誤解していただきたくないのは、自主管理そのものが悪いわけではないということです。

自主管理であっても、区分所有者の管理意識が高く、会計や修繕計画を適切に管理し、管理会社に委託しているマンション以上にしっかりと運営されている事例も多くあります。

問題なのは自主管理か委託管理かという形式ではなく、**管理組合が適切に機能しているかどうか**なのです。

2.管理会社に委託していれば安心、というわけではない

では、管理会社に管理を委託していれば安心なのでしょうか。

残念ながら、そうとも限りません。

管理会社はマンション管理の専門的な業務を担う存在ですが、同時に利益を追求する営利企業でもあります。

管理組合が管理会社の提案を十分に検討せず、すべてを任せきりにしていれば、管理委託費や修繕工事費の妥当性を検証する機会が失われます。

例えば、管理会社から修繕工事の提案を受けた場合、本当に今実施する必要があるのか、工事範囲は適切なのか、見積金額は妥当なのか、といった点を確認する必要があります。

しかし、理事会が十分に議論せず、管理会社から提案された内容をそのまま承認することが常態化していれば、管理組合にとって不利な契約や支出を見逃してしまう可能性があります。

また、管理会社の担当者の能力や仕事への意欲にも個人差があります。

経験の浅い担当者が配置されることもあれば、経験豊富に見えても、十分な知識や対応力を備えていない担当者、積極的な改善提案を行わない担当者が配置されることもあります。

もちろん、若手だから能力が低いというわけではありません。経験が浅くても、熱心で優秀な担当者はいます。

重要なのは、**管理組合が担当者の業務品質を適切に評価し、必要な改善を求められるかどうか**です。

管理会社に委託しているという事実だけで、良好な管理が保証されるわけではありません。

3.優秀な担当者がいても、管理組合が無関心では意味がない

管理会社との関係について、もう一つ知っておいていただきたいことがあります。

それは、**管理組合の意識が低いと、能力や意欲の高い担当者が配置されても、その能力を十分に生かせない**ということです。

例えば、フロント担当者が将来の修繕積立金不足を見越して、積立金の改定を提案したとします。

あるいは、設備の老朽化に備えた更新工事や、管理規約の見直し、管理組合運営の改善を提案したとします。

しかし、管理組合がそうした提案に関心を示さず、理事会でも十分に議論されず、必要な意思決定が先送りされれば、担当者がどれだけ熱心でも改善は進みません。

こうした状況が長期間続けば、担当者側も「提案しても管理組合が動かない」と感じ、積極的な改善提案を控えるようになる可能性があります。

その結果、管理組合は本来得られたはずの専門的な助言や、問題を未然に防ぐ機会を失ってしまうのです。

**管理組合の無関心は、管理会社から不利益を受けるリスクだけでなく、良い提案を生かせないという機会損失にもつながります。**

これは見落とされがちな問題ではないでしょうか。

4.管理業者管理者方式も、区分所有者の意識次第

近年、役員のなり手不足などを背景として、管理会社が管理組合の管理者に就任する「管理業者管理者方式」が注目されています。

この方式には、区分所有者の役員負担を軽減し、専門的な管理を進めやすくするというメリットがあります。

一方で、管理会社が管理業務の受託者であると同時に、管理組合の業務執行を担う立場になるため、利益相反の問題が生じやすいという側面があります。

特に、区分所有者の多くが実際には居住していない都市部の投資用マンションでは、オーナーが賃貸収入や投資利回りには関心を持っていても、管理組合の運営にはほとんど関心を示さないケースが考えられます。

こうした状況で管理会社に権限が集中し、区分所有者による監督が十分に働かなければ、管理費や修繕積立金からの支出について、必要性や金額の妥当性が十分に検証されないおそれがあります。

例えば、管理会社やその関連会社が修繕工事を受注する場合、その工事が本当に必要なのか、価格は適正なのか、第三者の視点でチェックできる仕組みが重要になります。

また、管理組合の財政状態が悪化したり、管理会社にとって契約の採算性が低下したりすれば、管理会社が契約の継続を見直す可能性もあります。

仮にその時点で、区分所有者が管理組合運営の実態を把握しておらず、自分たちで運営を立て直す体制も整っていなければ、深刻な事態に陥りかねません。

しかし、ここで強調したいのは、**管理業者管理者方式そのものが悪いわけではない**ということです。

管理会社が管理者を務めていても、区分所有者が主体的に管理組合の運営に関心を持ち、適切な監督やチェックが行われていれば、利益相反などのリスクを抑えることは可能です。

そのためには、管理者の業務報告や会計を確認することに加え、独立した監事による監査や、利益相反取引の適切な承認手続きなど、実効性のある仕組みを整える必要があります。

**大切なのは、誰が管理者を務めるかという形式だけではなく、その管理者を誰が、どのように監督するのかということです。**

管理を委託することと、管理に対する責任を放棄することは、まったく違うのです。

5.管理会社に厳しくすればよい、というものでもない

ここまで読むと、管理会社に対して厳しく接することが重要だと感じる方もいるかもしれません。

しかし、管理会社を一方的に敵視することも、望ましい姿勢とはいえません。

管理会社も人員や採算の制約の中で業務を行っています。

契約に含まれていない業務を当然のように要求したり、担当者に過剰な負担をかけたり、理不尽な苦情を繰り返したりすれば、管理会社との関係は悪化します。

場合によっては、管理委託費の大幅な値上げを求められたり、契約更新を断られたりする可能性もあります。

実際に私が以前にいた会社では、わざと管理委託契約の申し出を受けないように仕向け、管理委託契約の更新をしないようにした事例がありました。

もっとも、管理会社に対して業務内容の説明を求めたり、契約に基づく適切な対応や改善を要求したりすることは、管理組合の正当な行動です。

大切なのは、必要なことを確認せずに任せきりにすることでも、何でも要求することでもありません。

**管理会社の専門性を尊重しながら、管理組合として必要な確認と判断を行うこと。**

管理会社とは、適切な緊張感を保ちつつ、協力関係を築くことが重要なのです。

6.管理状態の良いマンションは、管理組合が機能している

では、管理状態の良いマンションには、どのような特徴があるのでしょうか。

私が重要だと考えるのは、次のような点です。

- 総会や理事会で必要な議論が行われ、意思決定の過程が記録されている。
- 管理費や修繕積立金の収支が明確で、預金残高や支出内容が適切に確認されている。
- 長期修繕計画が定期的に見直され、必要な資金の確保について議論されている。
- 修繕工事の必要性や見積金額を検証し、必要に応じて複数の見積りや専門家の意見を活用している。
- 管理会社からの提案を鵜呑みにせず、管理組合として判断している。
- 問題が発生したときに、先送りせず改善に向けて行動できる。

特に重要なのは、最後の点です。

マンションは築年数が経過すれば、建物や設備にさまざまな問題が生じます。

修繕積立金の不足、設備の老朽化、役員のなり手不足など、どのマンションにも課題が生じる可能性があります。

しかし、問題があることと、管理組合が機能不全に陥っていることは同じではありません。

問題を認識し、必要な対策を検討し、合意形成を図りながら改善できる管理組合であれば、課題に対応することができます。

反対に、問題が明らかになっていても誰も関心を持たず、必要な意思決定が行われなければ、状況は悪化していくばかりです。

**管理状態の良し悪しは、問題が存在するかどうかだけでなく、その問題に管理組合がどう向き合っているかによっても判断すべきなのです。**

7.管理不全を招いているのは、区分所有者自身かもしれない

管理会社の対応が悪い、修繕積立金が足りない、建物の維持管理が行き届いていない。

こうした問題が起きたとき、管理会社に原因を求めたくなることもあるでしょう。

もちろん、管理会社の業務に問題がある場合は、適切な改善を求める必要があります。

しかし、管理不全の原因が管理会社だけにあるとは限りません。

長年にわたって修繕積立金の値上げを避けてきたのは誰でしょうか。

必要な修繕工事を先送りしてきたのは誰でしょうか。

管理会社から改善提案を受けても、議論せずに放置してきたのは誰でしょうか。

管理組合の運営に関心を持たず、総会資料にも目を通さず、すべてを他人任せにしてきた結果、管理不全を招いている場合もあるのです。

管理会社は管理組合の運営を支援する存在であって、区分所有者に代わってマンションを所有しているわけではありません。

管理会社に管理業務を委託することはできても、**自分たちのマンションをどう維持し、どのような費用を負担し、将来に引き継いでいくかという判断まで、他人任せにしてよいわけではないのです。**

おわりに――自分たちの財産は、自分たちで守る

マンションの管理状態を左右するのは、築年数や管理会社の知名度だけではありません。

自主管理であっても、管理組合が主体的に運営されていれば良好な管理を実現できます。

一方で、管理会社に委託していても、区分所有者が無関心であれば、管理不全に陥る可能性があります。

また、優秀な担当者が配置されても、管理組合が動かなければ、その専門性を生かすことはできません。

マンション管理において、最も避けたいのは「誰かが何とかしてくれるだろう」という人任せの姿勢です。

総会資料や決算書に目を通す。管理費や修繕積立金の使い道に関心を持つ。必要な議論に参加し、議決権を行使する。

一人ひとりができることは、決して特別なことばかりではありません。

**マンションの管理は、管理会社や一部の役員だけが行うものではありません。区分所有者全員が、その当事者なのです。**

管理会社に任せるべき業務は任せながらも、自分たちの財産に関わることは、自分たちで考え、判断する。

**マンション管理を人任せにしないこと。自分たちの財産は、自分たちで守るという主体性を持つこと。**

それこそが、良好な管理状態を維持し、大切なマンションを次の世代へ引き継いでいくための基本だと考えています。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す