安い中古マンション、本当にお買い得?―ファイナンシャル・プランナーが警告する「管理組合の機能不全」という見えないリスク

安い中古マンション、本当にお買い得?―ファイナンシャル・プランナーが警告する「管理組合の機能不全」という見えないリスク

記事
コラム
中古マンションを探していると、立地や広さの割に価格が安い物件を見かけることがあります。

特に築30年、40年と経過したマンションでは、新築や築浅マンションと比べて購入価格を大きく抑えられる場合があります。

住宅価格が高騰する中、こうした中古マンションは魅力的な選択肢の一つです。

しかし、**購入価格が安いからといって、必ずしもお買い得とは限りません。**

中古マンションの購入を検討している方に、ぜひ知っていただきたいことがあります。

それは、マンション購入では、建物の築年数や修繕積立金の残高だけでなく、**管理組合が適切に機能しているかどうかまで確認する必要がある**ということです。

管理状態の悪いマンションを購入することは、単に老朽化した建物を購入することとは違います。

長年にわたって蓄積されてきた管理上の問題や、将来の経済的負担、さらには自分自身では解決できない問題まで引き受ける可能性があるからです。

## 1.購入価格が安くても、住居費が安いとは限らない

マンション購入を検討する際、多くの方が最初に注目するのは物件価格や住宅ローンの毎月返済額ではないでしょうか。

例えば、次の2つの中古マンションを比較してみます。

             | Aマンション  | Bマンション |
| 物件価格         | 1,500万円  | 2,000万円    |
| 管理費          | 月12,000円  | 月12,000円  |
| 修繕積立金        | 月8,000円    | 月20,000円  |
| 管理費・修繕積立金の合計 | 月20,000円  | 月32,000円  |

※比較のために設定した架空の例です。

購入価格も毎月の負担額も、Aマンションの方が安く見えます。

しかし、Aマンションの修繕積立金が長年にわたって十分に積み立てられておらず、近い将来、大幅な値上げや一時金の徴収が必要になるとしたらどうでしょうか。

一方、Bマンションでは、将来の大規模修繕工事や設備更新を見据えて、計画的な積立てが行われているかもしれません。

もちろん、修繕積立金が高ければ必ず安心というわけではありません。

重要なのは、現在の負担額の高低ではなく、将来必要となる修繕費用に対して、適切な資金計画が立てられているかどうかです。

マンション購入後も、住宅ローンの返済に加えて、管理費、修繕積立金、固定資産税などの負担が続きます。

**FPの視点から見ると、購入価格や住宅ローンの返済額だけで住居費を判断することは、将来の家計を考えるうえで不十分なのです。**

2.築古マンションには、建物だけでなく管理組合の問題も蓄積している可能性がある

築年数が経過したマンションでは、外壁、防水、給排水設備、エレベーターなど、さまざまな部分で修繕や更新が必要になります。

こうした建物や設備の老朽化は、ある程度予測できる問題です。

しかし、注意したいのは、建物の老朽化と同時に、管理組合の機能不全が進んでいる場合があるということです。

例えば、長年にわたって修繕積立金の値上げを避けてきたマンション。

必要な設備更新を先送りし続けてきたマンション。

役員のなり手が不足し、管理組合の運営が一部の人に任せきりになっているマンション。

管理会社から改善提案を受けても、必要な合意形成ができず、問題が放置されているマンション。

こうした管理組合では、修繕積立金が不足していること自体も問題ですが、それ以上に深刻なのは、**不足を解消するための意思決定ができないこと**です。

資金不足であれば、修繕積立金の改定や資金計画の見直しによって改善を図る余地があります。

しかし、区分所有者の間で問題意識が共有されず、必要な決議や合意形成が進まなければ、改善策を実行することすら難しくなります。

建物は適切な費用をかけることで修繕できます。

一方、長年にわたって形成されてきた管理組合の無関心や意思決定の停滞は、お金をかけるだけでは簡単に解決できません。

もちろん、築年数が古いマンションすべてに問題があるわけではありません。築古でも管理組合が主体的に活動し、良好な管理状態を維持している物件はあります。

だからこそ、築年数だけで判断せず、管理組合の運営状況まで見極める必要があるのです。

3.管理組合が機能不全に陥っていると、自分が動いても改善できないことがある

中古マンションを購入する際、もう一つ見落としてはいけないリスクがあります。

それは、**管理組合が機能不全に陥っている場合、購入後に自分自身が主体的に管理組合の運営に関わろうとしても、問題を改善できない可能性がある**ということです。

マンションは、専有部分については個人が所有していますが、建物の共用部分や敷地などは、原則として区分所有者全体で維持管理していくものです。

そのため、修繕積立金の改定、大規模修繕工事、管理規約の変更などについては、管理組合として必要な意思決定を行わなければなりません。

例えば、購入後に修繕積立金の不足が明らかになり、自分が理事会役員として積立金の改定を提案したとします。

しかし、他の区分所有者が問題に関心を示さなかったり、負担増加に反対したりして、必要な合意形成が進まなければ、改善策を実行できない場合があります。

また、管理会社の変更や老朽化した設備の更新を進めようとしても、管理組合内で意見がまとまらなければ、問題が先送りされてしまう可能性があります。

特に、長年にわたって管理組合の運営が形骸化し、必要な議論や意思決定が行われてこなかったマンションでは、こうした問題が深刻になるおそれがあります。

ここで重要なのは、購入後に自分自身が管理組合の運営に積極的に参加すれば、必ず改善できるわけではないということです。

**マンション管理は、区分所有者一人の意思だけで進められるものではありません。**

どれほど正しい問題提起を行っても、他の区分所有者の理解や協力が得られなければ、必要な対策を実行することが難しくなります。

つまり、管理状態の悪いマンションを購入することは、将来の修繕費用や管理費の負担増加といった経済的なリスクだけでなく、**自分の意思では解決できない管理上の問題を抱え込むリスク**も意味するのです。

4.マンションの管理は、多数決によって決められる

マンション管理の難しさは、区分所有者一人の判断だけでは、共用部分の維持管理や管理組合の運営を自由に進められないことにあります。

マンションの管理に関する基本的なルールは「区分所有法」に定められており、各マンションでは、これに基づいて「管理規約」が設けられています。

例えば、総会での一般的な議案は普通決議によって決められますが、管理規約の変更など、重要な事項については特別決議が必要になります。

2026年4月施行の改正区分所有法では、管理規約の変更について、所定の定足数を満たしたうえで、出席した区分所有者とその議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要とされています。

つまり、マンションの管理には、他の区分所有者の理解と協力が欠かせないのです。

例えば、購入後に自分が理事長となり、管理規約の見直しや修繕積立金の改定などを進めようとしても、管理組合内で必要な賛成が得られなければ、実現できない場合があります。

特に、長年にわたって管理組合の運営が形骸化しているマンションでは、問題の存在が明らかになっていても、合意形成が進まず、改善策が先送りされるおそれがあります。

**自分が主体的に管理組合の運営に参加する意思を持っていても、他の区分所有者の協力が得られなければ、必ずしもマンションを改善できるとは限りません。**

だからこそ、購入前に確認すべきなのは、修繕積立金の残高や建物の状態だけではありません。

管理組合が必要な議論を行い、適切な意思決定ができる組織なのかどうか。

この点も、中古マンションを選ぶうえで重要な判断材料になるのです。

5.修繕積立金が残っていても、安心できるとは限らない

中古マンションの購入時には、修繕積立金の残高を確認することが重要です。

しかし、単に残高が多いか少ないかを見るだけでは不十分です。

例えば、修繕積立金が5,000万円あるマンションでも、数年後に1億円規模の大規模修繕工事を予定しているのであれば、資金不足が生じる可能性があります。

反対に、直近で大規模修繕工事を終えたために積立金残高が少なくなっていても、その後の資金計画が適切に立てられていれば、必ずしも管理状態が悪いとはいえません。

確認すべきなのは、現在の残高と、将来予定される修繕工事や設備更新に必要な費用との関係です。

さらに、長期修繕計画が作成されていても、その内容が長年見直されていなければ、実際の工事費用や物価上昇が十分に反映されていない可能性があります。

修繕積立金の値上げが計画されている場合には、その改定が既に決議されているのか、今後の検討事項にとどまっているのかも重要です。

**長期修繕計画に値上げ予定が記載されていることと、その値上げが実際に実現することは別問題だからです。**

将来の資金計画を考える際には、数字の裏側にある管理組合の意思決定状況まで確認する必要があります。

6.管理組合の無関心は、将来の家計リスクになる

管理組合の運営というと、マンション管理会社や理事会役員だけの問題だと考える方もいるかもしれません。

しかし、管理組合の運営状況は、区分所有者一人ひとりの家計にも影響します。

例えば、修繕積立金の改定が長年先送りされた結果、購入後に大幅な値上げが必要になる場合があります。

設備更新を先送りした結果、不具合が発生し、緊急工事や予定外の支出が必要になる場合もあります。

また、管理会社からの工事提案を十分に検証せず、不必要な工事や割高な工事が行われれば、管理組合の資金が効率的に使われない可能性もあります。

こうした支出が積み重なれば、結果的に区分所有者の負担増加につながりかねません。

さらに、管理組合が無関心であることは、管理会社からの有益な改善提案を生かせないという問題にもつながります。

能力や意欲の高い担当者が、修繕積立金の見直しや設備更新を提案しても、管理組合が必要な判断を行わなければ、改善は実現しません。

その結果、将来の負担を抑える機会を失ってしまう可能性があります。

**管理組合の意識の低さは、目に見えないものの、将来の住居費を左右する経済的なリスクなのです。**

7.管理会社に任せているから安心、とはいえない

中古マンションを購入する際、「大手管理会社が管理しているから安心」と考える方もいるでしょう。

もちろん、管理会社の実績や専門性は重要な判断材料です。

しかし、管理会社に委託しているという事実だけで、管理状態の良さが保証されるわけではありません。

管理会社は管理組合の運営を支援する存在ですが、同時に営利企業でもあります。

管理組合が管理会社の提案を十分に検証せず、すべてを任せきりにしていれば、管理委託費や修繕工事費の妥当性が十分に確認されないおそれがあります。

また、都市部の投資用マンションなどで採用されることのある、管理会社が管理組合の管理者を務める「管理業者管理者方式」についても、同様の注意が必要です。

この方式には、役員の負担軽減などのメリットがある一方、管理会社が管理者として業務を執行する立場と、管理業務を受託する立場を兼ねるため、利益相反のリスクがあります。

ただし、管理業者管理者方式そのものが悪いわけではありません。

区分所有者が主体的に関与し、独立した監査や利益相反取引の適切なチェックが行われていれば、リスクを抑えながら制度のメリットを生かすことは可能です。

**重要なのは、管理方式の名称や管理会社の知名度ではなく、管理組合が適切に機能し、管理会社を監督できているかどうかです。**

購入検討者は、管理会社の名前だけで安心せず、管理組合の運営実態にも目を向ける必要があります。

8.管理不全は、将来の売却にも影響する

マンションを購入するときには、将来も長く住み続けるつもりであっても、売却する可能性を考えておくことが大切です。

転勤、家族構成の変化、老後の住み替えなど、住宅を売却する理由はさまざまです。

そのとき、マンションの管理状態が悪ければ、買い手から敬遠される可能性があります。

例えば、修繕積立金が大幅に不足している、必要な大規模修繕工事が長期間実施されていない、管理組合の運営状況が不透明である、といった問題です。

こうした問題が購入検討者に認識されれば、価格交渉の材料になったり、売却までに時間がかかったりする可能性があります。

もちろん、マンションの売却価格は立地、築年数、専有面積、市場環境など、さまざまな要因によって決まります。

管理状態だけで資産価値が決まるわけではありません。

しかし、**管理状態が悪いことは、将来の売却において不利な要因の一つになり得る**ということです。

FPの視点から考えれば、住宅は日々の生活を支える場所であると同時に、家計にとって大きな資産でもあります。

購入時の価格だけでなく、将来の維持費や売却のしやすさまで考えておくことが重要です。

9.中古マンション購入前に確認しておきたい管理資料

では、中古マンションを購入する際、具体的に何を確認すればよいのでしょうか。

私が特に重要だと考えるのは、次の資料です。

**① 重要事項調査報告書**
管理費や修繕積立金の額、積立金残高、滞納状況、大規模修繕工事の実施履歴など、マンション管理に関する基本的な情報を確認します。

**② 長期修繕計画**
今後どのような修繕工事が予定され、どの程度の費用が必要になるのかを確認します。
修繕積立金の収支見通しや、将来の値上げ予定にも注目したいところです。

**③ 収支決算書・貸借対照表**
管理組合のお金がどのように使われ、どの程度の資産や負債があるのかを確認します。
不自然な支出や、説明のつかない会計処理がないかも重要な確認事項です。

**④ 総会議事録**
管理組合がどのような問題を抱え、どのような議論や意思決定を行ってきたのかを確認します。
特に、修繕積立金の改定や大規模修繕工事について、どのような議論が行われているかは重要です。
例えば、修繕積立金の値上げが何年も継続審議になっていたり、必要な工事が繰り返し先送りされていたりする場合には、管理組合の意思決定機能に問題がないか注意が必要です。

**⑤ 管理規約**
管理組合の運営方法や費用負担、管理者の権限などを確認します。

管理業者管理者方式を採用している場合には、管理者の監督体制や利益相反への対応にも注意したいところです。

これらの資料は、売主や仲介会社などを通じて、可能な範囲で入手・確認することになります。

すべての資料が必ず開示されるとは限りませんが、重要な資料を確認できない場合には、その理由も含めて慎重に判断する必要があります。

**管理状態の良いマンションを見極めるには、数字だけでなく、その数字に至るまでの管理組合の運営状況を読み解くことが大切です。**

10.購入後は、自分自身も管理組合の一員になる

ここまで、購入前に管理状態を確認することの重要性をお伝えしてきました。

しかし、もう一つ忘れてはいけないことがあります。

それは、**マンションを購入した後は、自分自身も管理組合の一員になる**ということです。

購入前には管理状態の良いマンションを選ぶことが重要ですが、購入後は、その良好な管理状態を維持する当事者になります。

管理組合の運営に関心を持たず、管理会社や一部の役員にすべてを任せきりにしていれば、将来的に管理状態が悪化する可能性もあります。

総会資料や決算書に目を通す。

修繕積立金の改定や大規模修繕工事について、必要な情報を確認する。

総会に参加し、議決権を行使する。

必要に応じて、理事などの役員として管理組合運営に関わる。

こうした一人ひとりの行動が、マンションの管理状態を維持することにつながります。

管理会社に専門的な業務を任せることは必要ですが、自分たちの財産に関わる判断まで他人任せにしてはいけません。

おわりに―安く買うことよりも、安心して持ち続けられること

中古マンションの購入では、どうしても物件価格や住宅ローンの返済額に目が向きがちです。

しかし、住宅購入は長期間にわたる家計の問題でもあります。

購入時の価格が安くても、管理状態が悪ければ、将来の修繕積立金の大幅な値上げや一時金の徴収、想定外の修繕費用などによって、家計に大きな負担が生じる可能性があります。

さらに、管理組合が機能不全に陥っていれば、そうした問題を改善すること自体が難しくなります。

**自分自身が問題意識を持ち、管理組合の運営に積極的に参加しても、他の区分所有者の理解や協力が得られなければ、必要な改善を実現できない場合があるのです。**

築年数が古いことや、購入価格が安いことだけで、マンションの良し悪しが決まるわけではありません。

大切なのは、建物の状態とともに、管理組合が適切に機能しているか、将来の修繕や資金計画について必要な判断が行われているかを確認することです。

**マンション購入とは、建物を買うだけでなく、その管理組合の一員になることでもあります。**

だからこそ、購入前に管理組合の実態を確認し、購入後は自分自身も主体的に管理に関わっていく必要があります。

**購入前は管理を見極める。購入後は管理を人任せにしない。**

この考え方こそが、将来の家計と大切な資産を守るために欠かせないと私は考えています。
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