中古戸建てを購入しようとしたとき、不動産会社から「この建物には未登記の増築部分があります」と説明されることがあります。
例えば、もともとあった住宅に洋室やサンルームなどを増築しているものの、その内容が登記記録に反映されていないケースです。
「未登記の部分があっても購入できるのか」
「住宅ローンの審査に影響するのか」
「購入後に自分で登記しなければならないのか」
こうした疑問を持つ方もいるでしょう。
未登記の増築部分があるからといって、直ちに購入できないわけではありません。しかし、登記の問題だけでなく、建築基準法への適合状況や住宅ローン、売買契約の条件にも関係することがあります。
今回は、中古戸建てに未登記の増築部分が見つかった場合に、契約前に確認しておきたい事項を整理します。
■未登記の増築部分とは?
建物を新築すると、所在、種類、構造、床面積などが登記記録に記載されます。
その後、建物を増築して床面積が変わった場合には、原則として建物表題部変更登記という手続きが必要になります。
これは、登記記録に記載された建物の情報を、変更後の状態に合わせる手続きです。
不動産登記法第51条では、対象となる登記事項に変更があった場合、原則として変更があった日から1か月以内に申請することが定められています。
しかし、中古住宅の中には、過去に増築工事が行われたものの、登記が変更されていない建物もあります。
例えば、登記記録には床面積90平方メートルと記載されているのに、実際の建物は増築によって105平方メートル程度になっている場合です。
このように、現況と登記記録の内容が一致していない状態が、未登記増築の典型的な例です。
■登記面積と実際の床面積はどこで確認する?
まず確認したいのは、登記事項証明書の表題部です。
建物の表題部には、主に次の事項が記載されています。
・建物の所在
・家屋番号
・建物の種類
・構造
・各階の床面積
中古戸建ての場合は、登記事項証明書に記載された床面積と、販売図面に記載された建物面積を比較します。
例えば、登記事項証明書では90平方メートル、販売図面では105平方メートルと記載されていた場合です。
このとき、単に15平方メートルの差があるというだけでは、その理由は分かりません。
確認したいのは、次の事項です。
・どの部分を増築したのか
・増築した時期はいつか
・増築部分の面積はどの程度か
・増築時の図面や工事記録が残っているか
・販売図面の面積には未登記部分が含まれているか
なお、販売図面と登記面積が異なる理由は、必ずしも未登記増築とは限りません。
床面積の算定方法や資料の記載内容など、別の理由による場合もあります。
そのため、面積の違いが見つかった場合は、まず不動産会社へ理由を確認することが重要です。
■未登記の増築部分があると違法建築になる?
ここは特に誤解されやすいところです。
未登記の増築部分があることと、建築基準法に違反していることは、同じ意味ではありません。
建物の登記は、不動産の物理的な状況などを登記記録に反映する制度です。
一方、建築基準法は、建物の安全性や敷地に対する規模などについて基準を定めています。
そのため、登記がされていないという事実だけで、増築工事が違法だったと判断することはできません。
反対に、増築部分を登記できたとしても、それによって建築基準法への適合性が証明されるわけではありません。
確認したいのは、増築当時の建築関係法令に照らして、必要な手続きが行われていたかという点です。
また、建ぺい率や容積率などについても確認する必要があります。
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合です。
容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合です。
増築によってこれらの制限を超えている場合は、住宅ローンや将来の建替え、売却などに影響する可能性があります。
ただし、建築当時は適法だった建物が、その後の法令変更によって現在の基準に適合しなくなる「既存不適格建築物」という場合もあります。
現在の基準に適合していないことだけで、直ちに違反建築物と判断しないことも大切です。
■建築確認済証と検査済証を確認する
増築の経緯を調べるうえで参考になるのが、建築確認済証や検査済証などの資料です。
建築確認済証は、建築計画が建築基準関係規定に適合していることについて確認を受けた際に交付される書類です。
検査済証は、工事完了後の検査で、建築基準関係規定への適合が認められた場合に交付される書類です。
ただし、すべての増築工事に建築確認申請が必要だったわけではありません。
例えば、防火地域・準防火地域の外で行われる一定の小規模な増築には、建築確認申請が不要となる場合があります。
また、建築確認の対象や審査範囲については、2025年4月1日に制度改正が施行されています。
過去の増築について調べる場合は、現在の制度だけでなく、増築当時の法令や建物の条件を確認する必要があります。
建築確認済証や検査済証が手元にない場合でも、自治体に保存されている建築計画概要書や建築確認台帳の記載事項などから、確認履歴を調べられる場合があります。
ただし、資料の保存状況や交付方法は自治体によって異なります。
書類が見つからない場合は、不動産会社に調査状況を確認してみましょう。
■住宅ローンの審査にはどのような影響がある?
未登記増築がある中古戸建てを購入する場合、特に注意したいのが住宅ローンです。
金融機関は、住宅ローンの審査において、借入希望者の返済能力だけでなく、購入する不動産の担保としての状況なども確認します。
建物に未登記部分がある場合、登記記録と現況が一致していないため、金融機関から登記の変更を求められることがあります。
また、建築基準法への適合状況が不明確な場合や、建ぺい率・容積率の制限を超えている場合には、融資の審査に影響する可能性があります。
ただし、金融機関によって審査基準や必要書類は異なります。
未登記部分があるという理由だけで、すべての金融機関が融資を断るわけではありません。
確認したいのは、次の事項です。
・未登記部分があることを金融機関へ伝えているか
・登記の変更が融資の条件になっているか
・建築確認や検査の履歴について追加資料が必要か
・登記を完了する期限が指定されているか
・現状のままで融資審査を進められるか
住宅ローンを利用する予定なら、未登記増築の事実を金融機関へ伝えたうえで、契約前に融資条件を確認することが大切です。
■未登記部分は誰が登記するのか?
中古戸建ての売買では、売主が引渡しまでに建物表題部変更登記を行う条件で取引を進めることがあります。
ただし、売主が登記を行うことが、すべての売買で一律に決められているわけではありません。
具体的な負担や手続きは、売買契約の内容によって異なります。
確認したいのは、誰が、いつまでに、どのような登記を行うのかという点です。
例えば、売買契約書の特約に、売主が自己の費用負担で引渡しまでに建物表題部変更登記を完了する旨が定められる場合があります。
このような条件であれば、登記の完了予定日と引渡し日との関係も確認する必要があります。
また、未登記部分の状況によっては、単純な床面積の変更登記ではなく、別の登記手続きが必要になることもあります。
登記の種類や必要書類については、土地家屋調査士などへの確認が適切です。
■具体例:15平方メートルの増築部分が未登記だった場合
ここでは、説明のための架空の事例を考えます。
ある買主が、築35年の木造2階建て中古住宅の購入を検討しています。
販売図面には、建物面積105平方メートルと記載されています。
ところが、登記事項証明書を確認すると、床面積は90平方メートルでした。
不動産会社へ確認したところ、以前の所有者が1階部分に約15平方メートルの洋室を増築していたことが分かりました。
しかし、その増築部分は登記に反映されておらず、増築時の建築確認に関する資料も確認できていません。
買主は住宅ローンを利用する予定です。
この場合、契約前に整理したいのは次の事項です。
・増築部分の正確な位置と面積
・増築工事が行われた時期
・当時の建築確認申請の要否と手続きの履歴
・建ぺい率や容積率への影響
・金融機関が求める条件
・売主による登記変更の予定
・引渡しまでに必要な手続きが完了する見通し
仮に金融機関が、融資実行までに建物表題部変更登記を完了することを求めていた場合、登記が間に合わなければ資金計画や引渡し日程に影響します。
また、増築時の建築基準法への適合状況が確認できない場合には、建築士などによる追加調査が必要になることも考えられます。
大切なのは、未登記部分があるという事実だけで判断するのではなく、何が確認できていて、何が未確認なのかを整理することです。
■売買契約書の特約事項で確認すること
未登記増築のある中古戸建てでは、重要事項説明書と売買契約書の両方を確認します。
重要事項説明書では、登記記録と現況の違い、法令上の制限、建築確認の状況など、物件に関する説明を確認します。
一方、売買契約書では、未登記部分について売主と買主がどのような条件を取り決めているのかが重要です。
特に、次の事項を確認しておきたいところです。
・未登記部分の位置と面積が明示されているか
・売主が登記変更を行う取り決めがあるか
・登記にかかる費用は誰が負担するか
・登記の完了期限はいつか
・住宅ローンの融資条件と整合しているか
・予定どおり登記できなかった場合はどうなるか
また、住宅ローン特約の内容も確認が必要です。
住宅ローン特約は、融資が利用できなかった場合に、一定の条件のもとで契約を解除できるようにする取り決めです。
融資承認期限や解除期限、解除の手続きなどは、契約によって異なります。
未登記増築が融資審査に影響する可能性がある場合は、金融機関の確認結果と契約条件を照らし合わせておきたいところです。
■不動産会社へ確認するときの質問例
未登記増築について不明点がある場合は、次のように質問すると具体的な確認につながります。
・販売図面と登記事項証明書で建物面積が異なっていますが、どの部分が未登記になっていますか?
・増築された時期と、増築部分の面積が分かる資料はありますか?
・増築時に建築確認申請が必要だったかどうか、確認されていますか?
・建築確認済証や検査済証がない場合、自治体の記録から確認できますか?
・増築後の建物について、建ぺい率や容積率などの制限は調査されていますか?
・住宅ローンを利用する予定ですが、未登記部分について金融機関へ確認されていますか?
・建物表題部変更登記が必要な場合、売主と買主のどちらが費用を負担する予定ですか?
・引渡しまでに登記が完了しなかった場合、売買契約ではどのような取扱いになりますか?
・今回の物件について、現時点で確認できていない事項は何ですか?
このように質問すると、単に「未登記でも購入できますか」と尋ねるよりも、契約前に整理したい内容が明確になります。
■まとめ:未登記増築は登記・建築・融資の3つを分けて確認する
中古戸建てに未登記の増築部分があっても、それだけで購入できないと判断するものではありません。
ただし、登記記録と現況が一致していない場合は、登記手続きだけでなく、増築時の建築確認の状況や住宅ローンの融資条件にも注意が必要です。
購入前には、次の3つを分けて確認すると整理しやすくなります。
・登記上の問題:増築部分を登記に反映する必要があるか
・建築上の問題:増築当時の法令や建築基準への適合状況はどうなっているか
・融資上の問題:住宅ローンの利用にどのような条件が付くか
そのうえで、誰が必要な手続きを行い、いつまでに完了させるのかを売買契約書で確認します。
確認が終わっていない事項がある場合には、そのまま判断を急ぐのではなく、調査方法や契約条件を不動産会社と整理することが大切です。
■契約前の資料を確認したい方へ
中古戸建ての重要事項説明書や売買契約書について、未登記増築に関する記載や特約の確認ポイントが分からない場合には、不動産取引実務の観点から資料を確認し、不動産会社へ質問したい事項を整理するサービスをご用意しています。
建築基準法への適合判定や法律判断を行うものではありませんが、契約前の確認事項を整理したい方はご参照ください。