土地や中古戸建てを購入するとき、現地を見ても敷地の境界がはっきり分からないことがあります。
隣の土地との間にブロック塀があっても、その塀が正確な境界線上にあるとは限りません。また、境界を示す杭や金属標が見当たらない場合もあります。
「境界が分からなくても土地は購入できるのか」
「測量図があれば境界は確認できているのか」
「購入後に隣地所有者と境界の問題が起きたらどうなるのか」
こうした疑問を持つ方もいるでしょう。
土地の境界は、購入後の建築計画や土地の利用、将来の売却にも関係します。
今回は、土地を購入する前に確認したい境界標や測量図の見方、境界明示の意味、売買契約で確認しておきたい引渡し条件について整理します。
■境界が分からない土地でも売買契約はできる?
最初に押さえておきたいのは、土地の境界が明確になっていないことだけを理由に、売買契約が一律に禁止されるわけではないという点です。
実際の不動産取引でも、境界が未確定の状態で売買するケースがあります。
ただし、境界が分からないまま購入する場合には、その状況を理解したうえで契約条件を確認する必要があります。
特に重要なのは、次の3点です。
・現在、どこまで境界を確認できているのか
・売主が引渡しまでに境界を明示するのか
・境界が確定できなかった場合、どのような取扱いになるのか
単に「境界が不明です」という説明を受けるだけでは、購入後にどのような影響があるのか判断しにくいものです。
なぜ境界が不明なのか、確認する方法があるのか、何が未解決なのかを具体的に整理することが大切です。
■境界標があれば境界は確定している?
土地の現地確認では、境界標と呼ばれる目印を探すことがあります。
境界標には、例えば次のようなものがあります。
・コンクリート杭
・金属製の境界標
・金属鋲
・石杭
これらは土地の境界点を示すために設置されるものです。
ただし、境界標が見つかったからといって、それだけで現在の正しい境界位置が確認できたとは限りません。
過去の工事で動かされていたり、境界標の位置と既存の資料が一致していなかったりする可能性もあるためです。
反対に、境界標が見当たらないからといって、直ちに境界が確定していないとも限りません。
過去に測量や境界確認が行われていても、境界標だけが失われている場合があります。
そのため、現地の境界標と測量図などの資料を照合することが重要です。
■「筆界」と「所有権界」は同じとは限らない
土地の境界について調べると、「筆界」という言葉が出てきます。
筆界とは、土地が登記された際に、その土地と隣接する土地を区画するものとして定められた線です。
これに対して、所有権界とは、土地の所有権がどこまで及んでいるかを示す境界です。
通常は一致していることが多いものの、土地の一部を譲渡した場合など、事情によって一致しないことがあります。
また、筆界は、隣接する土地の所有者同士が話し合って合意するだけで自由に変更できるものではありません。
境界について確認するときは、単に隣地所有者との認識が一致しているかだけではなく、登記上の土地の区画と、実際の所有権の範囲がどのようになっているかという視点も必要です。
専門的な確認が必要な場合には、土地家屋調査士などへの相談が考えられます。
■公図と地積測量図では確認できる内容が違う
土地の購入前には、境界に関係する資料を確認します。
代表的なものが、法務局に備え付けられている地図や地図に準ずる図面、一般に公図と呼ばれるものと、地積測量図です。
公図は、土地の配置や隣接関係、地番などを確認する際に利用されます。
ただし、公図の種類や作成された時期によって精度は異なります。
公図に描かれた土地の形状だけで、現地の正確な境界位置を判断できるとは限りません。
一方、地積測量図には、土地の形状や面積、境界点、辺の長さ、求積方法などが記載されます。
地積測量図を確認するときは、次の点に注目します。
・いつ作成された図面なのか
・どの土地について作成されたものか
・境界点や境界標の記載があるか
・辺の長さや面積が記載されているか
・現地の状況と一致しているか
注意したいのは、すべての土地に地積測量図が存在するわけではないことです。
また、古い地積測量図では、現在の測量技術による図面と精度が異なる場合があります。
「法務局に地積測量図があるから、境界はすべて確認済み」とは判断せず、図面の内容と作成経緯を確認します。
■現況測量図と確定測量図は何が違う?
不動産会社から測量図を提示された場合には、その種類を確認したいところです。
実務上、よく使われるものに「現況測量図」と「確定測量図」があります。
現況測量図は、一般的に、現地の境界標や塀などの状況をもとに測量した図面を指します。
隣接地所有者との境界確認が完了していない状態で作成される場合もあります。
一方、確定測量図は、一般的に、隣接地所有者などとの境界確認を経て作成される測量図を指します。
道路などの公共用地に接している場合は、道路管理者等との境界確認が必要となることもあります。
ただし、これらの名称だけで、測量や境界確認の範囲が一律に決まるわけではありません。
確定測量図と呼ばれていても、どの境界について、誰と、どのような確認が行われたのかを資料で確かめることが大切です。
購入前には、測量図だけでなく、境界確認書などの関連資料があるかも確認しておくとよいでしょう。
■売主による「境界明示」とは?
土地の売買契約書には、売主が買主に対して境界を明示する旨の条項が設けられている場合があります。
境界明示とは、一般的には、売主が売買対象となる土地と隣接地との境界位置を、現地で買主に示すことです。
ここで区別したいのが、境界明示と確定測量です。
売主が現地で境界を示すことと、隣接地所有者の立会いなどを経て確定測量図を作成することは、同じではありません。
契約によっては、既存の境界標を示すことが予定されている場合もあれば、新たに測量を行い、確定測量図を交付することが条件となっている場合もあります。
そのため、売買契約書に「境界を明示する」と記載されている場合には、具体的に何を行うことになっているのかを確認します。
■売買契約書で確認したい引渡し条件
境界が不明確な土地では、契約書の内容が特に重要になります。
確認したいのは、次のような事項です。
・引渡しまでに境界を明示する取り決めがあるか
・確定測量図の作成が契約条件になっているか
・測量にかかる費用は誰が負担するか
・隣接地所有者との立会いが必要か
・境界確認を完了させる期限はいつか
・測量が予定どおり完了しなかった場合はどうするか
例えば、売主が引渡しまでに確定測量図を交付する条件で契約する場合です。
隣接地所有者の協力が得られず、期限までに測量が完了しない可能性も考えられます。
このような場合、引渡し期限を延長するのか、契約条件を再協議するのか、一定の条件で契約を解除できるのかなど、あらかじめ取扱いを整理しておくことが重要です。
境界が確定しなかった場合の対応は、契約内容によって異なります。
「測量をする予定です」という説明だけでなく、契約書にどのような条件が記載されるのかまで確認しておきたいところです。
■登記面積と実測面積が違ったらどうなる?
土地の売買では、登記記録に記載された面積と、実際に測量した面積が異なる場合があります。
ここで関係するのが、公簿売買と実測売買という考え方です。
公簿売買とは、一般的に、登記記録上の面積を基準に売買代金を定め、実測面積と差があっても代金を精算しない方式です。
一方、実測売買は、実際に測量した面積を基準に売買代金を定める方式として使われます。
ただし、これらは法律で内容が一律に定義された契約方式ではなく、具体的な取扱いは契約条項によって確認する必要があります。
例えば、登記面積より実測面積が小さかった場合でも、自動的に売買代金が減額されるとは限りません。
また、公簿売買であることと、境界が確認できていることも別の問題です。
購入前には、土地面積の差が生じた場合の精算方法と、境界の確認状況を分けて確認することが大切です。
■具体例:住宅用地を購入したいが境界標が見つからない場合
ここでは、説明のための架空の事例を考えます。
ある買主が、新築住宅を建てるために更地の購入を検討しているとします。
敷地には道路と隣接地を区切るブロック塀がありますが、境界標は一部しか確認できません。
不動産会社からは、古い地積測量図があると説明されています。
しかし、その図面が現在の境界を確認するための資料として十分なのかは、まだ調査されていません。
買主は、敷地内に住宅と駐車場2台分のスペースを確保したいと考えています。
この場合、境界が不明確であることは、単に土地の面積だけの問題ではありません。
実際に利用できる敷地の形状や、建物・駐車場の配置計画にも影響する可能性があります。
そのため、購入前に次のような順番で確認することが考えられます。
・既存の地積測量図と現地の境界標を照合する
・境界確認書などの資料が残っているか調べる
・確認できていない境界がどこなのか整理する
・必要に応じて土地家屋調査士へ調査を依頼する
・建築計画への影響を設計担当者へ確認する
・測量や境界明示について売買契約上の条件を整理する
ここで大切なのは、境界が不明確だからといって、直ちに購入できないと判断することではありません。
希望する土地利用に対して、何が確認できていて、何がまだ分からないのかを明らかにすることです。
■隣接地所有者と境界の確認ができない場合
境界確認を進めようとしても、隣接地所有者と連絡が取れなかったり、境界の認識が一致しなかったりする場合があります。
このような場合には、境界確認に必要な期間が長くなることも考えられます。
また、境界をめぐる問題については、法務局の「筆界特定制度」という仕組みもあります。
これは、登記された土地の筆界について、法務局の筆界特定登記官が調査などを通じて、その位置を特定する制度です。
ただし、筆界特定制度は所有権の範囲そのものを判断する制度ではありません。
境界問題の内容によって適切な対応は異なります。
購入予定の土地で境界に関する未解決事項がある場合は、その内容と解決の見通しを確認し、必要に応じて専門家へ相談することが考えられます。
■不動産会社へ確認するときの質問例
土地の境界について分からないことがある場合は、次のように質問すると具体的な確認につながります。
・今回の土地について、すべての境界点を現地で確認できますか?
・境界標が見当たらない場所はありますか?ある場合、その位置をどの資料で確認していますか?
・提示された測量図は、現況測量図ですか、それとも隣接地所有者との確認を経た確定測量図ですか?
・境界確認書など、隣接地所有者と境界を確認した資料はありますか?
・道路との境界について、道路管理者との確認は行われていますか?
・売主は引渡しまでに境界を明示する予定ですか?どのような方法で行いますか?
・新たに確定測量を行う場合、費用は誰が負担し、いつまでに完了する予定ですか?
・隣接地所有者の協力が得られず、測量が完了しなかった場合、売買契約ではどのような取扱いになりますか?
・登記面積と実測面積に差が生じた場合、売買代金の精算はありますか?
・現在確認できていない境界が、予定している建築計画に影響する可能性はありますか?
質問するときは、単に「境界は大丈夫ですか」と聞くよりも、資料の有無、確認状況、契約条件を分けて尋ねると、回答内容を整理しやすくなります。
■まとめ:境界の確認状況と契約条件を整理してから判断する
土地の境界が不明確であっても、売買契約を結ぶこと自体が一律に禁止されるわけではありません。
ただし、境界標がない場合や、隣接地所有者との確認が完了していない場合には、購入後の土地利用や将来の売却に影響する可能性があります。
そのため、購入前には、公図や地積測量図、境界確認書などの資料を確認し、現地の境界状況と照合することが重要です。
さらに、売買契約書で境界明示や測量図の交付がどのように定められているかを確認します。
確認した結果、まだ不明な境界がある場合には、引渡しまでにどのような対応が予定されているのか、対応できなかった場合はどうなるのかを整理しておきたいところです。
■契約前の資料を確認したい方へ
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境界の測量や法的判断を行うものではありませんが、契約前に確認しておきたい事項を整理したい方はご参照ください。