相続した実家は名義変更前でも売却できる?相続登記と売買契約前の確認事項

相続した実家は名義変更前でも売却できる?相続登記と売買契約前の確認事項

記事
コラム
親が亡くなり、実家を相続することになったものの、誰も住む予定がないため売却を考えている。

そのようなとき、不動産会社へ相談する前に気になるのが、登記上の名義ではないでしょうか。

「登記簿には亡くなった父の名前が残っている」
「兄弟で相続する予定だが、まだ話し合いが終わっていない」
「名義変更をしていなくても売却を進められるのか」

相続した不動産では、通常の住宅売却とは異なる確認事項があります。

特に重要なのは、誰が不動産を相続するのか、現在の登記名義がどうなっているのか、売買契約から引渡しまでにどのような手続きが必要なのかという点です。

今回は、相続した実家を売却する際に確認したい相続登記の仕組みと、売買契約前に整理しておきたい事項について説明します。

■名義が亡くなった親のままでも売却の相談はできる?

最初に結論から整理します。

相続登記が完了していなくても、不動産会社へ売却の相談をしたり、査定を依頼したりすることは可能です。

また、相続登記の手続きを進めながら、売却に向けた準備を行うこともあります。

ただし、相談できることと、買主へ所有権を移転できることは別です。

通常、亡くなった方の名義から買主へ直接所有権移転登記をするのではなく、相続による権利移転を登記したうえで、買主への所有権移転登記を行う必要があります。

そのため、相続登記が終わっていない場合は、売却活動だけではなく、引渡しまでに必要な登記手続きも考えておかなければなりません。

売買契約の締結時点では相続登記が完了していない取引も考えられますが、その場合は登記の見通しや契約条件について慎重な確認が必要です。

■最初に登記事項証明書で確認すること

相続した実家を売却する際、まず確認したい資料が登記事項証明書です。

登記事項証明書は、不動産の所在地や面積、所有者、抵当権などの権利関係を確認するための資料です。

ここでは、特に権利部の甲区を確認します。

甲区には、所有権に関する事項が記録されています。

例えば、亡くなった父親が単独で所有していた不動産であれば、その方の名前が登記上の所有者として残っていることがあります。

一方、父親と母親が共有名義で所有していた場合は、相続の対象となる持分が異なります。

確認したいのは次の事項です。

・土地の登記名義人は誰か
・建物の登記名義人は誰か
・単独名義か共有名義か
・共有の場合、それぞれの持分はいくらか
・抵当権などの登記が残っていないか

土地と建物は別々の不動産として登記されるため、それぞれ確認します。

実家の土地は父親名義、建物は母親名義というケースも考えられます。

住宅が一つだからといって、土地と建物の所有者が同じとは限りません。

■誰が相続するのか決まっていない場合

相続した実家を売却する際に、登記とあわせて確認したいのが相続人の状況です。

例えば、父親が亡くなり、母親と子ども2人が相続人になるケースを考えてみます。

この場合、子どものうち1人が実家の売却を希望していても、その人だけの判断で不動産全体の売却を進められるとは限りません。

遺言書の有無や遺産分割の状況によって、誰が不動産を取得するのかが変わるためです。

確認する内容は次のとおりです。

・遺言書があるか
・相続人は誰なのか
・遺産分割協議が成立しているか
・不動産を取得する人は誰か
・共有で取得する予定か
・売却について関係者の意向が一致しているか

遺産分割協議とは、相続人の間で遺産をどのように分けるかを話し合うことです。

遺言書や協議の内容によって必要な手続きは変わります。

相続関係が複雑な場合や意見がまとまっていない場合は、司法書士や弁護士などの専門家へ確認することも考えられます。

■相続登記は2024年4月から義務化されている

相続登記については、制度の変更も押さえておきたいところです。

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

相続によって不動産を取得した人は、原則として、自分のために相続が開始したことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

また、遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に、協議の結果に基づく登記を申請する義務も定められています。

注意したいのは、2024年4月より前に発生した相続も対象となることです。

制度開始前から相続したことを知っていた未登記の不動産については、原則として2027年3月31日までが申請期限になります。

ただし、不動産を相続によって取得したことを知った時期などによって期限は異なります。

正当な理由なく申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

もっとも、売却を予定している場合は、義務化された期限だけを見て手続きを考えるものではありません。

買主への所有権移転登記を行うために、売却日程に合わせて相続登記を進める必要があるからです。

■相続人申告登記をすれば売却できる?

相続登記の義務化とあわせて、「相続人申告登記」という制度も設けられています。

これは、相続人が自分は登記名義人の相続人であることなどを法務局へ申し出ることで、一定の相続登記申請義務を履行できる制度です。

例えば、相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまらず、期限内に相続登記を行うことが難しい場合などに利用が考えられます。

ただし、相続人申告登記と相続登記は同じものではありません。

相続人申告登記は、不動産の所有権が誰に移ったのかを公示する登記ではありません。

そのため、相続人申告登記を済ませただけでは、相続による所有権移転登記の代わりにはなりません。

相続した不動産を売却する場合には、別途、相続登記が必要になります。

「相続人申告登記をしたから名義変更は終わった」と考えないようにしたいところです。

■売買契約を結ぶ前に確認したいこと

不動産会社に売却を依頼し、買主が見つかった場合には、売買契約の条件を具体的に確認します。

相続登記が未了の場合は、特に次の事項が重要です。

・売主となる人が確定しているか
・共有者がいる場合、売却について必要な意思確認ができているか
・相続登記に必要な書類がそろっているか
・登記手続きにどの程度の期間を要する見込みか
・引渡しまでに相続登記を完了できる見通しがあるか
・予定どおり登記できなかった場合の契約上の取扱いはどうなるか

例えば、売買契約書の売主欄に記載される人と、現在の登記名義人が一致していない場合です。

その理由が相続によるものであれば、相続関係を確認したうえで、どのように所有権移転登記を進める予定なのかを整理します。

相続登記が未了のまま契約を進める場合は、登記完了の期限や、必要な手続きができなかった場合の対応について、契約条件を確認しておくことが重要です。

■具体例:兄弟で相続した実家を売却する場合

ここでは、説明のための架空の事例を考えます。

父親が亡くなり、実家には現在誰も住んでいません。

相続人は長男と次男の2人です。

両者とも実家を使用する予定がないため、売却する方向で話し合っています。

しかし、登記事項証明書を確認すると、土地と建物はいずれも亡くなった父親の名義のままでした。

このような場合、最初に整理するのは、誰がその不動産を相続するのかという点です。

例えば、長男が実家を相続し、その後売却する方法が考えられます。

一方、兄弟が共有で相続し、共有者として売却する方法も考えられます。

どちらの場合も、相続関係や必要な手続きが異なります。

不動産会社へ売却の相談をする段階では、相続登記が完了していなくても相談できます。

ただし、買主が見つかってから相続人の間で意見が分かれたり、必要書類がそろわなかったりすると、予定していた引渡しに影響する可能性があります。

そのため、売却を検討する段階で、相続人の意向や登記手続きの見通しを整理しておくことが大切です。

■売却に向けて確認する資料と順番

相続した実家の売却を考える場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

まず、土地と建物の登記事項証明書を取得し、現在の登記名義を確認します。

次に、遺言書の有無や相続人の状況を整理します。

相続する人が決まっていない場合は、遺産分割の状況を確認します。

続いて、司法書士などに相談し、必要な相続登記の内容、書類、手続きの見通しを確認します。

相続登記では、戸籍関係の証明書や遺産分割協議書などが必要になる場合がありますが、具体的な書類は相続の内容によって異なります。

そのうえで、不動産会社へ売却を相談し、買主との売買契約や引渡しの予定を調整します。

なお、相続登記の準備と不動産会社への売却相談は、状況に応じて並行して進めることもできます。

■不動産会社へ確認するときの質問例

相続した実家の売却について相談するときは、次のように質問すると具体的な確認につながります。

・現在、土地と建物が亡くなった親の名義になっていますが、この状態でも売却の相談や査定を進められますか?

・相続登記がまだ完了していない場合、売買契約を結ぶまでに何を準備しておく必要がありますか?

・今回の不動産について、登記上の所有者と実際に売主になる人の関係をどのように確認しますか?

・兄弟で相続する予定ですが、売却に向けて全員で確認しておく事項はありますか?

・相続登記の手続きと売却活動を並行して進める場合、どのような順番になりますか?

・買主が見つかった時点で相続登記が完了していなければ、引渡しの日程にどのような影響がありますか?

・相続登記が予定どおり進まなかった場合、売買契約ではどのような取扱いを予定していますか?

・相続登記の手続きについて、司法書士へ相談するタイミングや必要書類を教えてください。

不動産会社へ相談する際には、現在分かっている事項と、相続人の間でまだ決まっていない事項を分けて伝えると、必要な確認が進めやすくなります。

■まとめ:相続登記と売却手続きは分けて考える

相続した実家は、登記名義が亡くなった親のままでも、不動産会社への売却相談や査定を進めることができます。

ただし、売却の相談ができることと、買主へ所有権を移転できることは別です。

相続人の状況、遺産分割の内容、現在の登記名義、相続登記の手続き、引渡しまでの日程を整理する必要があります。

特に、複数の相続人がいる場合は、誰が不動産を取得し、誰が売主になるのかという点が重要です。

相続登記に関する具体的な手続きは司法書士などへ確認し、不動産会社とは売却日程や契約条件を相談すると、それぞれの役割を整理しやすくなります。

■売買契約前の資料を確認したい方へ

相続した不動産の売買契約書や重要事項説明書について、どの部分を確認すればよいのか分からない場合には、不動産取引実務の観点から資料を確認し、不動産会社へ質問したい事項を整理するサービスをご用意しています。

相続登記の申請代行や法律判断を行うものではありませんが、売買契約前の確認事項を整理したい方はご参照ください。

サービス数100万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す