その「なぜ?」、研究にできる?―研究テーマを絞ってみよう
こんにちは。
前回は、毎日のケアの中で感じる、
「あれ?これでいいのかな?」
「もっと良い方法はないのかな?」
という小さな疑問が、研究の「種」になるというお話をしました。
では、その「なぜ?」をそのまま研究テーマにできるのでしょうか?
実は、もう一段階、整理する必要があります。
今回は、現場の「なぜ?」を、研究で答えられる「問い」に変える方法についてお話しします。
① まずは「なぜ?」をそのまま書いてみる
例えば、ある看護師さんが、
「退院指導をしているけれど、本当に患者さんに伝わっているのかな?」
と感じたとします。
この段階では、まだ漠然としています。
そこで、まずは難しく考えず、
「私は、何が気になっているんだろう?」
と考えてみます。
「退院指導そのものが気になる?」
「説明の方法?」
「患者さんの理解?」
「退院後にちゃんとできているか?」
同じ「退院指導が気になる」でも、知りたいことによって研究はまったく違うものになります。
② 「誰の、何を知りたい?」まで絞ってみる
次に、もう少し具体的にします。
例えば、
誰について?
→ 退院する高齢患者さん
何が気になる?
→ 退院後のセルフケアについて、説明した内容を本当に理解できているのか
ここまでくると、最初のモヤモヤが少し形になってきます。
さらに、
「何か工夫するとしたら?」
と考えてみます。
例えば、看護師が一方的に説明するだけでなく、
患者さん自身の言葉で、理解した内容を説明してもらったらどうだろう?
というアイデアが浮かんだとします。
すると、
誰に?
→ 退院する高齢患者さん
何をする?
→ 患者さん自身の言葉で説明内容を確認する
どうなってほしい?
→ 退院後のセルフケアへの理解が深まる
と整理できます。
なんだか研究っぽくなってきましたよね。
③ ここで文献を探してみる
でも、ここですぐ研究を始めるわけではありません。
大切なのが、
「これって、もう誰かが調べていない?」
を確認することです。
前回までにお話しした文献検索の出番です。
例えば、
「高齢者」「退院指導」「セルフケア」「理解」
などのキーワードから文献を探してみます。
すると、
「同じような研究がすでにある」
かもしれません。
でも、
「高齢者を対象にした研究は少ない」
「入院中の理解は調べているけれど、退院後までは分からない」
など、「ここまでは分かっているけれど、ここはまだ分からない」が見つかることがあります。
ここが、とても大事です。
研究は「誰も考えたことのない、ものすごいテーマ」を探すことではありません。
すでに分かっていることと、まだ分かっていないことの間を見つける。
これも研究テーマを絞る大切な作業です。
④ 「研究で答えられる質問」にしてみる
ここまで整理したら、最後に「問い」の形にします。
例えば、
退院する高齢患者に、患者自身の言葉で説明内容を確認する方法を取り入れることで、退院後のセルフケアに関する理解は深まるだろうか?
最初は、
「退院指導、本当に伝わっているのかな?」
でした。
それが、一つずつ整理することで、研究によって答えを探せそうな問いになりました。
このような、研究によって明らかにしたい問いを「研究疑問(Research Question)」といいます。
研究テーマは「ひらめく」ものではなく「絞っていく」もの
研究初心者だった頃の私は、「研究テーマを考える」と聞くと、
何かすごいアイデアを思いつかなければならない!
と思っていました(笑)。
でも、そうではありませんでした。
現場で感じた、
「なぜ?」
から始めて、
何が気になる?
→ 誰について?
→ 何を知りたい?
→ すでに何が分かっている?
→ まだ何が分かっていない?
と、一つずつ整理していく。
そうすると、ぼんやりしていた「現場のなぜ?」が、少しずつ研究できる「なぜ?」に変わっていきます。
研究テーマは、どこかから立派なものを探してくる必要はありません。
みなさんが今日のケアで感じた「これでいいの?」が、その出発点になるかもしれません。
さて、研究疑問が少しずつ形になってくると、次に必要になるのが、
「これまでに、どんな研究がされているの?」
を調べることです。
そこで次回からは、「現場の『なぜ?』を研究へ。」を少しお休みして、文献検索シリーズをお届けしたいと思います。
研究を始めたばかりの頃の私は、
「文献ってどこで探すの?」
「Googleで検索するのと何が違うの?」
「英語の論文なんて無理!」
「集めた論文、どうやって整理するの?」
……というところからのスタートでした(笑)。
そんな当時の私でも分かるように、
① 和文献の探し方
② 英文献の探し方
③ 見つけた文献の整理・管理の方法
の3回に分けて、できるだけやさしくお話ししてみようと思います。
「研究を始めたいけれど、文献検索で止まってしまった」という方にも、まずはここまでできれば大丈夫!と思ってもらえる内容にしたいと思います。
それでは次回、
文献検索編 #1「まずは日本語の論文を探してみよう―医中誌Webの基本」
から始めます。