#3 現場の「これでいいの?」は、研究の種だった
こんにちは。
最近、豪雨や災害のニュースを目にするたびに、「この地域では初めて」「これまで経験したことがない」という言葉を耳にすることが増えたように感じます。
そんななか、防災の分野で注目されている考え方の一つに「フェーズフリー」があります。
防災のためだけに特別なものを用意するのではなく、普段使っているモノやサービスを災害時にも役立てようという考え方です。たとえば、普段は照明としてインテリアで楽しみながら、停電時にも役立つライトなど。日常の中に自然に「備え」を組み込んでおくという発想です。
私は、この考え方を知ったとき、
「これって、研究の進め方にも少し似ているな」
と思いました。
研究も、「さあ、研究をしよう!」と特別なところから始まるものばかりではありません。
毎日の仕事のなかで、
「あれ?これでいいのかな?」
「いつもこうしているけれど、本当にこれが一番いいの?」
「この患者さん(利用者さん)にはうまくいったけれど、どうしてだろう?」
と感じること。
実は、そんな日常の小さな「なぜ?」の中に、研究の種があります。
私も研究の世界に入るまでは、「自分がすることなんて、世の中を変えたりできるわけがない」と思っていました。
でも、現場で感じた小さな「なぜ?」を研究の疑問に変えることで、それが「私だけの疑問」から「ほかの誰かも感じているかもしれない疑問」へ変わっていくことを知りました。
では、どうやって変えるのでしょう?
たとえば、ある看護師さんが退院指導をしていて、
「説明しているけれど、本当に患者さんに伝わっているのかな?」
と思ったとします。
これも立派な研究の種です。
まず、
誰について?
→ 退院する高齢患者さん
何が気になる?
→ 退院指導の内容が本当に理解されているのか
何か工夫できる?
→ 患者さん自身の言葉で、説明内容を確認してもらう
どうなってほしい?
→ 退院後に必要なセルフケアを理解し、自分で実践できる
と整理してみます。
すると、
「退院指導、本当に伝わっているのかな?」
という日常のモヤモヤが、
「退院する高齢患者に、患者自身の言葉で説明内容を確認することで、退院後のセルフケアに関する理解は深まるだろうか?」
という、研究で確かめられそうな「問い」に変わってきました。
最初から難しい研究テーマを考える必要はありません。
毎日のケアの中で感じる、
「なぜ?」
「これでいいの?」
「もっと良い方法はないの?」
まずは、それを言葉にしてみる。
患者さんのそばにいる看護師だからこそ気づける「なぜ?」があります。
それはまだ立派な研究テーマではないかもしれません。
でも、研究の種としては、それで十分です。
これは、医療の現場だけでなく介護福祉やいろいろな現場で同じように考えられると思います。
では、その「なぜ?」は、何でも研究にできるのでしょうか?
そして、漠然とした疑問を、実際に研究できるテーマにするにはどうすればよいのでしょう?
次回は、
#4「その『なぜ?』、研究にできる?―研究テーマを絞ってみよう」
についてお話しします。