「昔からこうだからを見直す。職員が辞めたくなる職場にしないために

「昔からこうだからを見直す。職員が辞めたくなる職場にしないために

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はじめに

看護・介護の現場では、日々さまざまな業務が行われています。

患者さん・利用者さんへのケア、記録、申し送り、情報共有、会議など、必要な仕事はたくさんあります。

その一つひとつには、始めた理由や目的があったはずです。

しかし、毎日の業務に追われていると、いつの間にか目的を確認しないまま、同じ方法を続けていることはないでしょうか。

「昔からこうしているから」
「今までこのやり方で問題なかったから」
「みんな同じようにやっているから」

もちろん、長年続いている方法がすべて不要というわけではありません。安全を守るために必要な手順や、現場の経験から生まれた工夫もあります。

大切なのは、長く続いているという理由だけで、今も必要だと判断しないことです。

職員の人数や経験、患者さん・利用者さんの状態、業務量は少しずつ変化しています。以前は合理的だった方法も、今の現場には合わなくなっているかもしれません。

私自身、長く看護師として働く中で、職員から何度も聞いてきた声があります。

それは、

「理由も聞かされずに、ただやらされている」
「仕事を押し付けられていると感じると、辞めたくなる」

という声です。

仕事そのものが嫌なのではなく、目的が分からないまま業務を求められることや、自分の意見を聞いてもらえないことが、働く意欲に影響する場合があります。

職員の声を単なる不満として片づけず、背景にある思いや課題に目を向けること。

それが、職員の働きやすさと、よりよい看護・介護につながるのではないでしょうか。

今回は、管理者が見直したい慣習や業務と、職員の思いを改善につなげる方法についてお伝えします。

1.職員の「こうしたい」という声に改善のヒントがある

看護師や介護職として働く人の中には、

患者さん・利用者さんと、もう少しゆっくり関わりたい

小さな変化に気づいたら、丁寧に対応したい

本人や家族の話をきちんと聞きたい

もっと自分が大切にしたいケアを実践したい

そんな思いを持っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、日々の業務に追われていると、必要な仕事を終わらせることが優先され、本来やりたいケアが後回しになってしまうことがあります。

そのようなとき、職員から「もっと時間がほしい」「今のやり方では難しい」という声が出ることがあります。

管理者としては、人員や予算、業務上の制約もあり、すぐに対応できないこともあるでしょう。

それでも、そこで話を終わらせず、

「何を実現したいと思っているのか」
「なぜ、それができないのか」

を確認することが大切です。

例えば、記録に時間がかかっているのか、業務の分担に無理があるのか、特定の職員に仕事が集中しているのか。

背景を確認することで、改善できる部分が見えてきます。

職員の「こうしたい」という声は、現場の問題を知るための大切な手がかりです。

2.「忙しい」「なんとかしてほしい」の背景を考える

職員から「忙しい」「人手が足りない」という声が出たとき、単純に業務量や人員の問題として受け止めていないでしょうか。

もちろん、本当に業務量が多すぎる場合もあります。

ただ、その言葉の背景には、

「必要なケアをしたいのに時間がない」
「患者さんの話を聞く余裕がない」
「気づいていても、十分に対応できない」

という思いが隠れていることもあります。

忙しさを訴える職員は、単に仕事を減らしたいのではなく、自分が大切にしたい看護・介護を実践できないことに悩んでいるのかもしれません。

だからこそ、管理者は言葉だけで判断せず、具体的に聞いてみることが大切です。

何が一番負担になっているのか

どの業務に時間がかかっているのか

本当はどのようなケアをしたいのか

それができない原因は何なのか

職員の思いを知ることが、改善の第一歩になります。

3.管理者から現場に足を運び、声を掛ける

職員の思いや現場の課題は、会議や報告書だけでは十分につかめないことがあります。

同じ職場でも、その日の職員の人数や経験、業務量、患者さん・利用者さんの状態によって、現場の状況は変わります。

だからこそ、管理者自身が現場に足を運ぶことが大切です。

職員が相談に来るのを待つのではなく、管理者から声を掛けてみましょう。

例えば、

「今日の業務で、やりにくいことはない?」

「最近、仕事で困っていることはある?」

「今のやり方で、見直したほうがよいと思うことはある?」

このような何気ない声掛けが、職員の本音を聞くきっかけになることがあります。

また、現場を見るときには、業務の進み具合だけでなく、職員同士の声の掛け合いや表情、口調にも目を向けてみてください。

忙しくても、職員同士が自然に助け合い、落ち着いて業務を進められている日があります。

反対に、同じような業務量でも、会話が少ない、返事がそっけない、表情が硬いという日もあります。

その違いには、業務の進め方や職員間の連携など、現場の状態を知るヒントがあるかもしれません。

さらに、うまく業務を進めている職員がいたら、その人の工夫にも注目してみましょう。

「あの人だからできる」で終わらせず、どのような工夫をしているのかを聞き、ほかの職員にも共有する。

良い実践を職場全体で活用することも、管理者の大切な役割です。

4.「昔からこうしている」を見直す5つの問い

慣習を見直すときは、いきなり業務をなくそうとするのではなく、まず目的を確認します。

次の5つの問いを参考にしてみてください。

① この業務は何のために行っているのか?

安全を守るためなのか、情報共有のためなのか。目的を具体的に説明できるでしょうか。

② その目的は今も変わっていないのか?

導入された当時と現在では、職員の構成や業務の流れが変わっているかもしれません。

③ 今の方法でなければ目的を達成できないのか?

目的を維持したまま、手順や役割分担、実施する時間帯を変更できないか考えてみます。

④ その業務によって、どのような負担が生じているのか?

作業時間だけでなく、特定の職員への負担の集中や、ほかの業務への影響も確認します。

⑤ 見直すことで安全性やケアの質に影響はないか?

必要な確認や記録、情報共有が保たれるかを必ず確認します。

大切なのは、業務を減らすことだけを目的にしないことです。

必要な目的を守りながら、今の現場に合った方法へ変えていくことが業務改善につながります。

5.職員の意見を改善につなげる5つのステップ

職員の声を聞いても、実際にどう改善すればよいのか迷うことがあります。

そんなときは、次の順番で整理してみましょう。

ステップ1:職員の話を聞く

何に困っているのか、何を変えたいのかを具体的に確認します。すぐに解決策を提示せず、まずは話を聞きましょう。

ステップ2:実際の業務を確認する

どの作業に時間がかかっているのか、どこで業務が滞るのかを確認します。誰かを責めるのではなく、原因を探すことが大切です。

ステップ3:目的を確認して改善策を考える

必要な目的や安全性を維持しながら、手順や役割分担、情報共有の方法を見直します。実際に業務を行う職員の意見も取り入れましょう。

ステップ4:できること、できないことを説明する

すべての意見を実現できるわけではありません。変更できない場合は、その理由をきちんと説明し、代わりにできることがないかを考えます。

ステップ5:実施後に振り返る

職員の負担は軽くなったか、必要なケアにつながったか、安全性に問題はないかを確認します。必要に応じて修正していきましょう。

職員の意見を聞くことは、すべての希望をかなえることではありません。

大切なのは、意見を受け止め、検討し、判断した理由を伝えることです。

6.管理者自身も変化を受け入れる

ここで、管理者自身の姿勢についても考えてみたいと思います。

私が実際に耳にした管理職の言葉に、

「自分が決めてきた、つくりあげてきたことだから変えてほしくない」

というものがありました。

長い時間をかけて仕組みを整え、現場を支えてきたという思いがあることは理解できます。

しかし、自分がつくってきた仕組みだからという理由だけで変更を拒んでしまえば、現場の変化に対応できなくなります。

以前は最善だった方法が、今も最善とは限りません。

管理者に必要なのは、これまでの取り組みを否定することではなく、今の現場に合った方法へ更新していく姿勢です。

自分が決めたことでも、必要であれば見直す。

「もっとよい方法はないだろうか」と考え続けることが、組織の成長につながります。

変えることは、これまでの努力を否定することではありません。

これまで積み重ねてきたものを土台にして、よりよい職場へ進めていくことなのです。

7.管理者が確認したい実践チェックリスト

ここまでの内容を、日々の管理業務で活用できるようにまとめました。

すべてを一度に実践する必要はありません。まずは、今の職場の状態を確認してみましょう。

A.職員の思いを把握できているか

□ 職員がどのような看護・介護をしたいのか聞いている

□ 「忙しい」という声の背景を確認している

□ 職員の意見を単なる不満として片づけていない

□ 職員が困りごとを伝えやすい関係をつくっている

B.現場の状況を把握できているか

□ 管理者から現場に足を運んでいる

□ 実際の業務の流れを確認している

□ 職員の経験や人数による負担の違いを把握している

□ 職員同士の連携や表情、口調にも目を向けている

□ 特定の職員に業務が集中していないか確認している

C.慣習や業務を見直しているか

□ 「昔からこうしている」という理由だけで続けている業務がないか確認している

□ それぞれの業務の目的を説明できる

□ 今の現場に合った方法になっているか確認している

□ 安全性や必要な要件を踏まえて改善を考えている

D.改善につなげられているか

□ 職員の話を聞いてから改善策を考えている

□ 実際に業務を行う職員の意見を取り入れている

□ できること、できないことを説明している

□ 改善後の結果を職員と一緒に振り返っている

チェックがつかなかった項目は、これから取り組めることを考えるきっかけになります。

まずは一つ、できることから始めてみましょう。

8.改善の成果は、効率だけで判断しない

業務改善というと、作業時間の短縮や業務量の削減に目が向きがちです。

もちろん、効率化は大切です。

しかし、それだけで改善の成否を判断してはいけません。

例えば、記録時間が短くなっても、必要な情報が共有されなくなっていれば、よい改善とはいえません。

業務の分担を変更して一人の負担が軽くなっても、別の職員に負担が集中していれば、職場全体の改善にはなっていません。

改善後には、次の点も確認してみましょう。

職員が大切にしていたケアを実践できるようになったか

患者さん・利用者さんへの関わりに変化があったか

必要な記録や情報共有が維持されているか

職員の負担が軽くなったか

新たな問題が生じていないか

業務の効率化だけでなく、職員が必要なケアを実践できる環境になったかという視点を忘れないことが大切です。

おわりに:職員の声に耳を傾けることから始めてみませんか?

「昔からこうしているから」という言葉は、業務を続ける理由としては十分ではありません。

長く続いている業務には、必要な理由があるかもしれません。しかし、今の現場に合っているかどうかを確認しなければ、職員の負担を増やしてしまうこともあります。

私が長く看護師として働く中で聞いてきた、

「理由も聞かされずに、ただやらされている」
「仕事を押し付けられていると感じると、辞めたくなる」

という職員の声。

こうした気持ちを、職員個人の受け止め方だけの問題にしてはいけないと思っています。

管理者の関わり方や職場の仕組みによって、職員の働きやすさは変わる可能性があります。

職員が何に困っているのか、どのような看護・介護をしたいのか。

まずは話を聞き、現場を見て、できることから改善していく。

そして、すぐに変えられないことは、その理由をきちんと説明する。

そんな小さな積み重ねが、職員が安心して働ける職場づくりにつながるのではないでしょうか。

管理者も一人の人間です。人員や業務の調整、職員間の問題など、悩みながら判断しなければならないことも多いと思います。

「職員の気持ちをどう受け止めたらよいのか分からない」
「業務改善を進めたいけれど、職員との関わり方に悩んでいる」
「管理者として、今の対応でよいのか不安になる」

そんなときは、一人で抱え込まなくても大丈夫です。

私も看護師として現場で働き、さまざまな職員の声や職場の悩みに触れてきました。

看護師・介護士として働く中での悩みはもちろん、管理職としての悩みや、職員との関わり方についてもお話を伺っています。

答えを急がず、まずは今感じていることを話してみませんか?

誰かに話すことで、自分では気づかなかった考えや、次にできることが見えてくる場合もあります。

職員の「辞めたい」という気持ちを生まないために、まずは今の職場を見つめ直すことから。

そして、管理者自身も無理をしすぎず、よりよい職場づくりを考えていけたらと思います。
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