前回、ココナラの依頼138件を集計した数字を出しました。もう一度載せます。
・EPUB … 38回
・表紙 … 34回
・Word … 25回
表紙は2番目に多く出てくる言葉です。前回は1位のEPUB変換について書いたので、今回は表紙の話をします。
ただし、サイズやデザインの話ではありません。もっと手前で、知らずに踏むと後が面倒になる「権利」の話です。
責任は、すべて出版する人にあります
まず、ここを押さえてください。KDPの公式ヘルプに、こう書かれています。
「出版者はAmazonにアップロードして販売するすべてのコンテンツの出版に関して必要な権利を保有していることが必要です」
そして、権利がない場合どうなるかも明記されています。
「出版に関して必要な権利をお持ちでないコンテンツをアップロードした場合、本が却下または削除される、アカウントが停止される、またはロイヤリティが失われる可能性があります」
本が消えるだけでなく、アカウント停止とロイヤリティ失いまで書かれています。表紙に使った画像1枚が原因で、それまで出した本すべてに影響が及ぶ可能性があるということです。
Amazonが事前に全部チェックしてくれるわけではありません。確認する責任は、出版する側にあります。
こう書くと怖い話に聞こえますが、確認すべき点は決まっています。順に見ていきます。
1. 「フリー素材」は「商用利用可」とは限りません
いちばん多い誤解がここです。
「フリー」という言葉には、無料という意味と自由に使えるという意味の両方があります。多くの素材サイトでいう「フリー」は前者、つまりダウンロードが無料という意味でしかありません。
素材サイトの利用規約には、たいてい次のような区分があります。
・商用利用の可否
・加工の可否(文字を載せる、切り抜く、色を変える)
・クレジット表記の要否
・再配布の禁止
書籍の表紙は、販売する商品そのものです。ブログに貼るのとは扱いが違います。「商用利用OK」と書かれていても、その下に「商品の主要な要素としての使用は不可」という条件が付いていることがあります。表紙はまさにこれに当たります。
ダウンロードする前に、利用規約の商用利用の項目を実際に開いて読む。これだけで、ほとんどの事故は防げます。
2. フォントにもライセンスがあります
見落としが最も多いのがフォントです。
パソコンに入っているフォント、無料でダウンロードしたフォント。それぞれに使用許諾があります。「パソコンに入っているから自由に使える」わけではありません。
特に注意が要るのが、フォントを画像化して使う場合です。表紙は画像として作るので、文字は画像の一部になります。この使い方をラスタライズと呼びますが、これを禁止しているフォントがあります。
無料フォントでも、個人利用は無料・商用利用は有料という形式のものが多くあります。ダウンロードページに「商用利用OK」と大きく書いてあっても、同梱されている利用許諾ファイルを開くと条件が付いていることがあります。
確認するのは、ダウンロードページではなく許諾ファイルの本文です。
3. 人物の写真には、もう一つの権利があります
写真素材の場合、著作権とは別に肖像権があります。
素材サイトで買った写真でも、写っている人物が「書籍の表紙に使われること」まで許諾しているとは限りません。多くの素材サイトでは、モデルリリース(被写体の使用許諾)の有無が表示されています。
さらに、写真の使われ方によってはその人が本の内容を推奨しているように見えることがあります。健康、投資、宗教といったテーマでは、これが問題になりやすい領域です。
4. 他社のロゴ、書影、キャラクター
表紙に「メディア掲載」風のロゴを並べたり、有名企業の商標を入れたりする例を見かけます。これは商標権の問題になります。
公式にも、表紙画像として使えないものとして明記されています。
「他の出版者やアーティストの著作権を侵害するもの」
「参考にした本の表紙に似せる」のも危険です。ジャンルの型に合わせるのと、特定の本を模倣するのは別のことです。
5. AIで作った画像は、申告が必要です
前に書いたとおり、AmazonはAI生成コンテンツについて申告を求めています。表紙にAIを使った場合、登録画面に申告項目があります。
申告そのものは難しくありません。問題は、申告項目があることを知らずに出してしまうことです。
なお、AIで生成した画像だからといって権利の問題が消えるわけではありません。使用するAIサービスの利用規約で、生成物の商用利用が認められているかを確認する必要があります。
確認は、4つだけです
長く書きましたが、やることは多くありません。
1. 画像は、利用規約の商用利用の項目を開いて読む。「商品の主要な要素として使えるか」を見る
2. フォントは、ダウンロードページではなく同梱の許諾ファイルを読む。画像化の可否を見る
3. 人物写真は、モデルリリースの有無を確認する
4. AIは、生成サービスの規約を確認し、KDPの申告項目を埋める
この4つを済ませておけば、表紙で困ることはまずありません。
逆に言えば、表紙を作る作業の半分は、デザインではなく確認作業です。「デザインソフトが使えないから表紙が作れない」と思っている方が多いのですが、実際にはこちらのほうが手間がかかります。
私の場合は、素材の権利確認まで含めて表紙をお作りしています。「デザインは自分でやるけれど、この使い方で大丈夫か見てほしい」というご相談も承ります。
ご相談とお見積りは無料です。今どの段階で止まっているか教えていただければ、そこからご提案します。
▼サービスページはこちら