前回は品質管理を題材に、設問1の技術的課題から設問2の検討・対応処置、評価までを手順で示しました。今回は同じ骨格を安全管理に当てはめ直します。安全管理は品質管理と並んでくり返し出題されてきたテーマで、令和6年度からは5つの管理項目のうち2つが指定され、同じ工事について書き分ける形式に変わりました。品質管理だけを用意しておけば足りる試験ではなくなったということです。ところが安全管理の答案は「KY活動を実施した」「安全パトロールを行った」と一般的な活動が並ぶだけになりやすく、自分の工事でなくても成立してしまう文章になりがちです。今回はそこを避ける組み立て方を扱います。
設問1は「現場条件」「危険」「課題」の3点で書く
品質管理では現場条件と原因と課題の3点に切り分けました。安全管理も3点構成は同じですが、真ん中が「原因」ではなく「どこに、どんな危険があったか」に変わります。たとえば供用中の道路に近接した切土掘削という現場条件があり、そこから一般車両や歩行者と重機が接触する危険、法肩での墜落・転落の危険が具体的に生じていた、という書き方です。そのうえで、その危険を防ぐことが技術的課題だと結びます。ここで「安全管理に留意した」と抽象的に始めてしまうと、以降の検討内容が宙に浮きます。危険をどうやって特定したか、着手前の現地調査やリスクアセスメントで洗い出したという1行を添えておくと、事前に検討していたことが読み手に伝わります。安全管理の設問では、事前にどのような対応が必要だと考えていたかが見えるかどうかが評価の分かれ目になります。
検討項目は「設備」「作業手順」「人」の3観点から挙げる
設問2では検討した項目と検討理由、検討内容を書きます。安全管理は打ち手の種類が多く、思いついた順に並べると重複しやすいので、観点をあらかじめ3つに決めておくと整理できます。1つ目は設備で、墜落防止設備や防護柵、土留め支保工など物理的に危険から隔てる対策です。2つ目は作業手順で、重機と作業員の動線分離、立入禁止措置、誘導員の配置など、段取りで危険に近づけない対策です。3つ目は人で、新規入場者教育やツールボックスミーティング、有資格者の配置など、人の側の対策です。この3観点から2つか3つを選び、それぞれに検討理由と検討内容をセットで書きます。「防護柵を設置した」だけで終わると、なぜその対策を選んだのかが伝わりません。危険の種類と対策が一対一で対応しているかを、書いたあとに確認してください。
対応処置は数値、評価は「危険が下がった根拠」で締める
現場で実際に行ったことが対応処置です。品質管理と同じく、ここは数値が入ると具体性が出ます。防護設備の設置範囲、点検の頻度、誘導員の配置人数と時間帯、教育や打合せの実施回数など、自分の工事で実際に決めた数字を入れます。評価で差がつくのはこの次です。安全管理の評価は「無災害で工事を完了した」で終わってしまいがちですが、それだけでは何が効いたのか分かりません。設問1で特定した危険が実際に低減したこと、たとえば第三者との接触事案が発生しなかった、安全パトロールで指摘された不安全状態を是正できた、というように、処置と結果を結びつけて2〜3行で締めます。発注者側で工事書類を審査してきた立場から見ても、この結びが具体的な答案は印象が違います。
安全管理でありがちな減点パターン
安全管理の記述で目立つ失敗は3つあります。1つ目は、どの現場でも書ける一般的な安全活動の羅列で終わり、その工事に固有の危険が出てこないパターンです。2つ目は、書いているうちに工程や品質の話へ流れてしまい、指定された管理項目から外れるパターンです。3つ目は、対応処置が「周知徹底した」「注意喚起した」で終わり、設備と手順と体制のどれをどう変えたのかが分からないパターンです。いずれも、設問1で危険を具体的に特定できていれば起きにくくなります。
まとめ
安全管理の答案は3つの手順で組み立てます。1つ目は、設問1を現場条件と危険と課題の3点に切り分け、どんな危険があったかを工事に固有の形で書くこと。2つ目は、検討項目を設備と作業手順と人の3観点から2つか3つ選び、それぞれに検討理由と検討内容をセットで書くこと。3つ目は、対応処置に設置範囲や頻度といった数値を添え、評価では特定した危険が下がった根拠まで書くことです。
ここまでの手順は品質管理の回とほとんど同じ形をしています。骨格を1つ覚えれば、指定される管理項目が変わっても組み立て直せるということです。5つの管理項目それぞれについて完成した答案を手元に置き、自分の工事に置き換えながら練習したい場合は、1級土木の第2次検定向けにテーマ別と年度別の模範答案をまとめたセットを用意しています。
ご購入後はトークルームでPDFを一括してお送りします。テーマ別の完成答案と年度別の過去問模範答案の両方が入っているので、指定されそうなテーマから引くことも、受験する年度の出題傾向から引くこともできます。
この連載では、落ちる答案の型から始めて、独学で伸びない理由、予想テーマでの練習、品質管理と安全管理の書き方まで扱ってきました。まずは自分の工事を1つ決めて、今回の3点に沿って設問1から書き出してみてください。