1級・2級土木施工管理技士の第2次検定で、施工経験記述だけは勉強量と点数が素直に比例しません。学科のように答え合わせで閉じる作業ではないからです。
全5回の連載の第2回は、「見てもらったほうがいいのか」という判断の手前にある話をします。独学だと自己採点そのものが構造的に成立しない、その理由です。
止まっているのは努力量ではなく、答え合わせの不在
択一は正解と照合すれば終わります。間違えた問題が分かり、次に潰すべき論点も分かる。学習が回るのは、毎回フィードバックが返ってくるからです。
施工経験記述には、その返り値がありません。書き上げた答案に対して「ここが足りない」と言ってくれるものが存在しないまま、書き直しを重ねることになります。フィードバックの無い反復は、上達ではなく同じ癖の固定です。何本書いても伸びないと感じるとき、原因は書いた量ではなく、書いたものを測る手段が無いことにあります。
書いた本人だけが、書かれていない情報まで読んでいる
ここが独学の核心です。自分の答案を読むとき、あなたの頭の中にはその工事の現場が丸ごと入っています。地形も、地下水の状況も、工期の逼迫も、協力会社とのやり取りも、当時の判断の理由も、全部覚えている。
だから、文章に書かれていない前提を無意識に補いながら読んでしまいます。たとえば「出水が多かったため土留め工法を変更した」と書いたとき、本人の頭では湧水量も地下水位も掘削深も工程の制約もつながっています。しかし紙の上には「出水が多かった」しか無い。初めて読む人には、なぜその工法でなければならなかったのかが最後まで分かりません。
そして本人は、この欠落に気づけません。読み返せば意味が通っているように見えるからです。通っているのは記憶が補っているからで、文章が通っているからではない。時間を空けて読む、声に出して読むといった工夫は補完を少し弱めるだけで、消すことはできません。自分の記憶を消して自分の答案を読むことは、原理的に不可能です。
つまり、自己採点が甘くなるのは意志が弱いからではなく、書き手と読み手が同一人物だと持っている情報量がそもそも違うという、構造の問題です。
一人で潰せる層と、どうしても残る層
答案の質は三つの層に分かれます。上の層ほど自分では見えません。
一つ目は形式です。字数が収まっているか、工事概要の各項目が埋まっているか、設問ごとに別の内容を書けているか。これは基準が外にあるので、一人でも確実に潰せます。
二つ目は具体性です。処置に数値や管理基準、試験方法が入っているか。半分は自分で気づけますが、「入れたつもり」で一般論に留まっているケースは、他人に読まれるまで表面化しません。
三つ目が論理の通りです。課題から検討、処置、評価までの因果が文章の上で切れていないか。ここだけが、さきほどの脳内補完の直撃を受けます。書いた本人には最初から最後までつながって見えるので、独学でどれだけ丁寧に見直しても検出できません。
模範解答をいくら読んでも埋まらないのはこのためです。模範解答は完成形を見せてくれますが、あなたの答案のどこが完成形と違うかは教えてくれません。差分は、その工事を知らない誰かに読まれて初めて姿を現します。
まとめ
要点は三つです。一つ目、経験記述が伸びないのは書いた量の問題ではなく、書いたものを測る手段が無いことの問題です。二つ目、自分の答案は自分では測れません。記憶が欠落を埋めてしまうという構造上の理由からで、注意力や真面目さでは解決しません。三つ目、形式と具体性は独学で相当のところまで詰められます。だからこそ、詰め切ったうえで残る「論理の通り」だけに外の目を使うのが、いちばん無駄がありません。
その外の目として、令和6年度からの新形式である2テーマ必答に対応した答案の添削を承っています。元自治体土木の職員として、発注者=提出書類を審査する側で工事の書類を読み続けてきた立場から、あなたの答案に赤を入れます。
ご購入後は、まずトークルームで工事の概要をうかがうヒアリングシートをお送りします。ご記入いただいた内容と下書き2テーマを受け取り、NG から OK への書き換え案を入れた赤入れ、六つの観点で見た判定表、そして読み手側から見たコメントをお返しします。返却後の書き直しを一度分まで含みますので、直した答案をもう一度お送りください。あなたが実際に経験した工事のみを対象とし、経験していない工事の答案作成はお受けしていません。合格を保証するものではありません。
次回は、予想テーマを使って実際に書く練習をどう回すかを扱います。