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コラム
言葉になる前の感情は、色がついている ―パク・チャヌク監督作品から考える、聴くということ
記事
コラム
原田 せん
2026/08/22 18:40
20歳そこそこの頃、
「オールドボーイ」を観て、
しばらく言葉が出ませんでした。
「どうやったらこんな物語を思いつくんだろう…!」
…と、
衝撃と興奮がごちゃ混ぜになったまま、
しばらく画面の前から動けなかったのを覚えています。
それから、
「復讐者3部作」と呼ばれる
「復讐者に憐れみを」
「親切なクムジャさん」、
そして
「渇き」
「お嬢さん」
「別れる決心」と、
パク・チャヌク監督の作品を追いかけるようになりました。
今回は、
そんなパク・チャヌク監督の作品たちから感じたことを、
チャットレディとしてお客様のお話を聴く
私の仕事と重ねながら書いてみたいと思います。
色彩で語られる、言葉にならない感情
パク・チャヌク作品の魅力のひとつが、
作品ごとにまったく違う色彩設計です。
「お嬢さん」
は赤や金といった、
妖艶で濃密な色彩に満ちていて、
登場人物たちの欲望や駆け引きが
そのまま画面の温度として伝わってきます。
一方で
「別れる決心」
は、
青やグレーといった寒色系でまとめられていて、
登場人物の心の距離感や、
触れられそうで触れられない切なさが、
色そのもので表現されているように感じました。
言葉で説明されなくても、
色を見るだけでその人の感情が伝わってくる…。
これって、
相談を聴く仕事にもすごく通じるものがあります。
お客様が話してくれる言葉の裏には、
まだ言葉になっていない
感情の"色"のようなものがあることが多いんです。
焦りの赤なのか、
諦めのグレーなのか。
言葉そのものだけでなく、
声のトーンや間の取り方から滲み出る
その"色"を丁寧に感じ取ることも、
聴く側の大切な役割だと思っています。
「知らなかった真実」に、本人がたどり着く
「オールドボーイ」の衝撃は、
伏線が最後の最後に一気に繋がっていく構成にありました。
主人公自身が知らなかった過去の真実に、
物語を通してたどり着いていく。
この「本人が気づいていく」というプロセスが、
私はすごく好きです。
相談のお仕事でも、
似たようなことがよく起こります。
お客様自身、
最初は自分の気持ちがよく分かっていないことがあります。
でも話しているうちに、
「あ、私はこれが嫌だったんだ」
「本当はこうしたかったんだ」と、
ご本人が
自分の中の真実に気づいていく瞬間があるんです。
私たち聴く側にできるのは、
答えを渡すことではなく、
その気づきが生まれるまでの時間に、
じっくりと付き合うことなんじゃないかと思っています。
笑って良いのか分からないユーモア
パク・チャヌク作品には、
シリアスな場面に
ふっと奇妙な可笑しみが挟まれることがあります。
「復讐者に憐れみを」も
「親切なクムジャさん」も、
重いテーマを扱っているはずなのに、
どこかクスッとしてしまう瞬間がある。
「渇き」のような吸血鬼ものという、
少し毛色の違う作品まで手がけてしまうあたりも含めて、
白黒つけられない感情のグラデーションを、
そのまま作品にしてしまう懐の広さを感じます。
相談を聴いていても、
悲しいはずなのになぜか笑ってしまう、
という瞬間があります。
感情って、
そんなにきれいに「悲しい」「楽しい」で
分けられるものじゃないんですよね。
「笑って良いのか分からない」
その曖昧さごと受け止めることも、
聴く側には必要なんだと思います。
聴くということは、言葉になる前の色を感じ取ること
言葉になる前の感情には、色がある。
答えは与えるものではなく、
本人がたどり着くもの。
感情はきれいに分けられないから、
曖昧さごと受け止める。
パク・チャヌク監督の作品を観るたびに、
こんなことを考えます。
そしてそれは、
私が電話やチャットの向こうで、
日々感じていることでもあります。
言葉そのものより、その奥にある"色"を。
答えより、たどり着くまでの時間を。
きれいに割り切れない気持ちは、割り切らないまま。
そんな聴き方を、
これからも大切にしていきたいと思っています★
#映画オタク
#発達障害
#うつ病
#ひきこもり
#パクチャヌク
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