皮肉やとぼけの中にこそ、本音は隠れている。 〜三木聡監督作品と傾聴の話〜

皮肉やとぼけの中にこそ、本音は隠れている。 〜三木聡監督作品と傾聴の話〜

記事
コラム
三木聡監督の作品を観ていると、
いつも不思議な気持ちになります。


死や孤独、
人間関係の面倒くささといった、
決して軽くはないテーマを扱っているはずなのに、

なぜか観終わったあとにクスッと笑ってしまう。


転々」も
亀は意外と早く泳ぐ」も、

登場人物たちはやたらと真面目な顔で、
どうでもいいようなことを大真面目に話し続けます。

そのズレ具合が、
たまらなくおかしくて、
そしてどこか切ない。



まっすぐには言わない、という表現


三木監督の作品の登場人物って、
あまり
自分の気持ちをまっすぐには言わないんですよね。


本当は寂しいはずなのに、
その気持ちをそのまま口にする代わりに、

どうでもいい世間話や、
ちょっとしたボケで場をはぐらかしてしまう。

皮肉っぽい一言で笑いに変えてしまう。


「亀は意外と早く泳ぐ」の主人公も、
「転々」の登場人物たちも、

シリアスな状況にいながら、
なぜか飄々としている。


でも、
その「とぼけ」の奥に、

ふとした瞬間、
本音がこぼれ落ちる瞬間があるんです。

会話の本筋とは関係なさそうな、
ちょっとした一言。

そこにこそ、
その人が本当に抱えているものが滲み出ている気がして、

私はそこがたまらなく好きなんだと思います。



雑談の中にこそ、本当の気持ちがある


これは、
私が電話相談のお仕事をしている中でも、
よく感じることです。


相談に来てくださる方が、
最初から本題をまっすぐ話してくださることは、
実はそれほど多くありません。

天気の話や、
最近観たテレビの話、
ちょっとした愚痴。


一見
どうでもよさそうな雑談を重ねていく中で、
ふと言葉のトーンが変わる瞬間があります。

「実はさっきの話なんだけど」と、
そこから
本当に話したかったことがぽつぽつと出てくる。


三木監督の映画の登場人物たちが、
皮肉やとぼけの奥に本音を隠しているように…。

人は誰しも、
一番大切な気持ちほど、
まっすぐには差し出せないものなのかもしれません。


だからこそ私は、
相談の場でも、
本題を急かさず、

一見関係なさそうな雑談にも
ちゃんと耳を傾けるようにしています。

そのズレた会話の中にこそ、
その人らしさや、
本当の気持ちが隠れていることが多いから。



シュールな笑いの奥にある、生きづらさへの優しい眼差し


三木監督の作品は、
「万人受けする」タイプの映画ではなさそうです(笑)


テンポも独特ですし、
笑いどころも人を選ぶ。

でも、
刺さる人にはとことん刺さる。

ドラマの「時効警察」とか
熱海の捜査官」とかも

同監督作のドラマなので
そういう感じですね、おそらく(笑)


それは、
脱力した笑いの奥に、
生きることの面倒くささや孤独への、

監督なりの
優しい眼差しがあるからなんじゃないかと感じています。


シリアスに向き合いすぎると、
かえって苦しくなってしまうことがあります。

だからこそ、

少し力を抜いて、
皮肉やユーモアを挟みながら
気持ちを話せる空気も、
時には必要なんじゃないかと思うんです。



***


まっすぐには言えない気持ちを、
皮肉やとぼけに包んで差し出す。


三木監督の映画のそんな登場人物たちのことを、

私はこれからも、
少し愛おしい気持ちで見てしまうと思います。


そしてそれは、
日々の相談の中で出会う、
色々な方の言葉にならない本音とも、

きっとどこかで繋がっているのだと思います。
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