施設訪問の成功は施設スタッフとの連携が決める

記事
コラム

はじめに

「施設への訪問診療を始めたいが、営業をかけてもなかなか依頼につながらない」
「以前から訪問していた施設なのに、新規入居者の主治医が別の医師になってしまった」
「施設からの報告や、クリニックからの指示がうまく共有されず、すれ違いが多い」
このような悩みをお持ちの先生方も多いのではないでしょうか。

施設への訪問診療では、医師の診療技術や対応力ももちろん重要です。
しかし、それと同じくらい重要なのが、施設スタッフとの連携です。
施設は、患者様により良い医療・介護を提供するための大切なパートナーです。

そのため、施設訪問をうまく進めるには、
「クリニックが何をしたいか」
だけでなく、
「施設が何を求めているか」
を理解する必要があります。

施設の需要と、クリニックが提供できる医療・対応体制がどれだけ合っているか。
ここがうまく噛み合っている施設ほど、連携はスムーズになります。
逆に、ここがずれていると、どれだけ熱心に診療していても、
・報告がうまく届かない
・指示が現場に伝わらない
・緊急時に混乱する
・施設側の不満が蓄積する
・新規患者の依頼が他院へ流れる
といった問題が起こります。

今回は、施設訪問を成功させるために大切だと感じる、施設スタッフとの連携についてまとめます。

1.まずは施設の要望を聞く

施設訪問を始める際、最初に大切なのは、クリニック側の説明をすることではありません。
まずは施設側の要望を聞くことです。

施設には、施設ごとの細かいルールがあります。
入浴、食事、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ご家族対応、施設内カンファレンスなど、日々多くの業務が動いています。
その中に訪問診療が入るため、クリニック側が思っている以上に、施設側ではスケジュール調整や情報共有の負担が発生しています。

施設も患者様に安全で良質なサービスを提供するため、きちんとルールを作っています。
ただ、医師に対しては遠慮があり、困っていることを直接言いにくい場合もあります。
その結果、後になってから、
「もっと早く言ってくれればよかったのに」
というすれ違いが起きることがあります。

訪問スケジュール・診療時間について
施設では、患者様ごとに多くの予定があります。
・訪問看護
・訪問介護
・デイサービス
・食事
・入浴
・リハビリ
・ご家族面会
などです。

そのため、訪問診療の時間が他サービスと重なると、施設側で調整が必要になります。
また、容体について施設長やご家族への説明が必要な場合、診療時間を指定されることもあります。

クリニック側としては訪問ルートや医師の予定もあるため、すべてを施設の希望通りにすることは難しいかもしれません。
しかし、施設側がなぜその時間を希望しているのかを知るだけでも、連携の質は大きく変わります。

相談・緊急時の体制について
施設スタッフは、患者様、ご家族、施設方針、訪問診療医の間で板挟みになりやすい立場です。
そのため、何か問題が起きたときに、すぐ相談できる体制を求めている施設は多いです。
特に、
・発熱
・転倒
・食事摂取不良
・血圧低下
・呼吸状態の悪化
・看取り期の変化
などは、現場スタッフにとって不安が大きい場面です。

このときに、
「どこへ連絡すればよいか」
「どの程度で医師へ報告すべきか」
「夜間・休日はどう対応すればよいか」
が明確になっていると、施設側は安心して対応できます。

できるだけ施設全体を診てほしい
施設によっては、できるだけ入居者全体を1つのクリニックで診てほしいと考えることがあります。
これは、施設側が単に楽をしたいという話ではありません。

患者様ごとに主治医が異なると、
・連絡先が違う
・指示の出し方が違う
・緊急時の対応方針が違う
・情報共有の方法が違う
といった負担が発生します。
施設側としては、相談から解決までのルートをできるだけ一元化したいと考えています。

もちろん、クリニック側にも診療リソースや算定上の都合があります。
そのため、全員を受けることが正解とは限りません。
大切なのは、施設側がなぜ一元化を希望しているのかを理解した上で、現実的な対応範囲を話し合うことです。

診療後の情報共有について
施設スタッフが困ることの一つに、
「診察の結果、何が変わったのか分からない」
というものがあります。
薬の変更、検査予定、今後の方針、ご家族への説明内容などは、施設のケアにも大きく関わります。

そのため、診療後に毎回結果を共有する場を設けることは非常に重要です。
大きな変更がない場合でも、
「本日は大きな変更ありません」
「経過観察で問題ありません」
「次回も同じ方針です」
と一言伝えるだけで、施設側の安心感は大きく変わります。

情報共有は、単なる報告ではありません。
施設スタッフが安心してケアを続けるための土台です。

2.条件のすり合わせをしておく

施設の要望を聞くことは大切です。
しかし、施設の要望をすべて受けることが良い連携ではありません。
クリニックとして対応できること、できないことを明確にしておく必要があります。

無理な対応はいつか破綻する
訪問診療を始めたばかりの頃は、
「できるだけ施設の要望に応えたい」
「依頼を増やしたい」
「他院ではなく自院を選んでほしい」
という気持ちが強くなります。

その気持ちはとても大切です。
しかし、無理な対応を続けると、いつか必ず現場に負担が出ます。
例えば、
・訪問時間の指定が多すぎる
・緊急対応の期待値が高すぎる
・夜間連絡が頻回になる
・医師が対応できる範囲を超える
・スタッフが疲弊する
といった問題です。

一時的に施設の要望に応えられても、継続できなければ意味がありません。

できること・できないことを明確にする
施設との連携では、最初に以下のような点をすり合わせておくことが重要です。
・訪問できる曜日・時間帯
・緊急時の連絡方法
・夜間・休日の対応範囲
・看取り対応の方針
・家族説明の方法
・診療後の情報共有方法
・受け入れ可能な患者様の状態
・施設側にお願いしたい対応
これらを曖昧にしたまま始めると、後からトラブルになりやすくなります。

良い施設連携とは、どちらか一方が我慢する関係ではありません。
施設とクリニックがお互いにリスペクトを持ち、患者様により良い医療を提供するために協力する関係です。

3.お互いに適切な対応を依頼する

施設スタッフは、現場で患者様を日々支えています。
一方で、医師やクリニック側にも、医療安全や診療体制上の限界があります。
そのため、お互いに無理な要求をしないことも重要です。

施設側の不安を理解する
正直なところ、施設側が責任を負うことを恐れて、医師に過度な判断や対応を求めるケースもあります。
例えば、
・すぐに往診してほしい
・すぐ救急搬送の判断をしてほしい
・些細な変化でもすべて医師に確認したい
・家族説明をすべて医師に任せたい
といったものです。

しかし、これらは単に施設側が無理を言っているのではなく、現場スタッフの不安から出ていることも多いです。
だからこそ、感情的に受け止めるのではなく、仕組みで解決することが大切です。

プロトコルを作成する
発熱時、転倒時、食事摂取不良時、看取り期など、よくある場面については、あらかじめ対応方法を決めておくと安心です。
例えば、
・どの状態なら経過観察でよいか
・どの状態ならクリニックへ連絡するか
・どの状態なら救急搬送を検討するか
・夜間はどの連絡先へ連絡するか
・家族へ誰が連絡するか
を事前に共有しておくだけでも、施設スタッフの不安はかなり軽減されます。

プロトコルは、施設を縛るためのものではありません。
施設スタッフとクリニックが、お互いに安心して患者様を支えるための共通ルールです。

医師側も施設に無理な要求をしない
連携で気を付けるべきなのは、施設側だけではありません。
医師側も、施設に対して無理な要求をしていないか注意が必要です。
例えば、
・急な時間変更を当然のように依頼する
・指示内容が曖昧なまま施設に任せる
・ご家族説明を施設任せにする
・施設の業務負担を考えずに書類や確認を依頼する
このような対応が続くと、施設スタッフの不満につながります。

施設は医療機関の下請けではありません。
患者様を一緒に支えるパートナーです。

最後に

施設訪問の成功は、施設スタッフとの連携で決まります。
施設に訪問できること自体がゴールではありません。

本当に大切なのは、施設とクリニックが同じ方向を向き、患者様により良い医療・介護を提供できる関係を作ることです。
そのためには、
・まず施設の要望を聞く
・できること・できないことをすり合わせる
・お互いに適切な対応を依頼する
・普段から相談しやすい関係を作る
ことが重要です。

施設との連携がうまくいくクリニックは、単に医療技術が高いクリニックではありません。
施設スタッフが、
「この先生なら相談しやすい」
「このクリニックなら安心して任せられる」
「一緒に患者様を支えられる」
と思えるクリニックです。

訪問診療は、医師だけでは成り立ちません。
施設スタッフとの信頼関係こそが、施設訪問を継続的に成功させるための大きな鍵になります。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す