看取りを始める前に決めておくべきこと

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コラム
訪問診療を始めると、看取りのご相談を受けることもあります。

多くの医療従事者は「最期の瞬間をどう迎えるか」に意識が向きがちですが、実際には看取りが始まる前の準備の方が重要です。

事前の話し合いや情報共有が不十分なまま終末期を迎えてしまうと、
・ご家族が判断に迷う
・多職種間で方針が統一されない
・夜間や休日のトラブルにつながる
・救急搬送の是非で混乱する
といった問題が発生することがあります。

反対に、事前準備ができていると、患者様・ご家族・医療介護従事者が同じ方向を向いて終末期を支えることができます。

今回は、私が看取り対応を行う中で特に重要だと感じているポイントをご紹介します。

1.療養方針を事前に確認しておく

最も重要なのは、患者様やご家族がどのような最期を希望しているかを確認しておくことです。
例えば、
・最期まで自宅で過ごしたい
・施設で看取りたい
・状態が悪化しても救急搬送は希望しない
・延命治療は希望しない
など、考え方は患者様ごとに異なります。

また、ご本人とご家族の考えが一致しているとは限りません。
実際には、ご本人は自宅での看取りを希望されていても、ご家族は不安から救急搬送を希望されるケースもあります。
終末期になってから初めて話し合うのではなく、意思疎通が可能な段階から繰り返し確認しておくことが大切です。

2.緊急時の対応方針を決めておく

終末期には、
・呼吸状態の悪化
・発熱
・意識レベルの低下
・経口摂取量の低下
などが発生します。

その際、
「どの状態になったら連絡するのか」
「救急搬送は行うのか」
「夜間はどのように対応するのか」
を事前に決めておくことで混乱を防ぐことができます。

特に夜間や休日は、ご家族の不安が強くなりやすい時間帯です。
緊急時の連絡先や対応方法を事前に共有しておくことで、不要なトラブルを減らすことができます。

3.DNARの方針を確認し、カルテへ記録しておく

終末期の患者様では、DNAR(心肺停止時に心肺蘇生を行わない方針)について事前に確認しておくことも重要です。
患者様やご家族が看取りを希望されていても、急変時に救急隊や施設職員、ご家族が動揺し、救急搬送や心肺蘇生を希望されるケースがあります。

そのため、
・DNARの希望があるか
・誰と話し合ったか
・ご本人、ご家族がどのように考えているか
を確認し、カルテへ記録しておくことが重要です。

また、施設職員や訪問看護師など、関係する多職種にも方針を共有しておくことで、急変時の混乱を防ぐことができます。
DNARは単に書類を作成することが目的ではなく、患者様やご家族の意思を関係者全員で共有するためのプロセスだと考えています。

4.多職種で情報共有を行う

看取りは医師だけで行うものではありません。
訪問看護師、ケアマネジャー、訪問介護職員、施設職員など、多くの職種が関わります。
そのため、
・現在の病状
・予後の見通し
・療養方針
・ご家族の意向
を多職種間で共有しておくことが重要です。

情報共有が不十分なまま終末期を迎えると、
「聞いていた話と違う」
「どのように対応すれば良いか分からない」
といった不安や混乱につながります。

看取りが近づいてきた段階で、多職種間で改めて方向性を確認しておくことをおすすめします。

5.ご家族への説明を繰り返し行う

医療者にとっては予測できる経過であっても、ご家族にとっては初めて経験することがほとんどです。
そのため、
・食事量が減ること
・眠る時間が長くなること
・呼吸パターンが変化すること
・反応が少なくなること
など、終末期に起こり得る変化について事前に説明しておくことが重要です。

説明がないまま状態が変化すると、
「急変したのではないか」
「何か見落としがあったのではないか」
という不安につながります。
ご家族が安心して見守れる環境を整えることも、看取りにおける重要な役割の一つです。

また、状態によっては急速に意思疎通が難しくなる場合もあります。
そのため、「今のうちに会っておきたい方はいませんか」「伝えておきたいことはありませんか」といったお話をしておくことも大切です。

6.死後の対応についても事前に説明しておく

看取り後の対応についても、事前にご家族へ説明しておくことをおすすめします。
ご家族にとっては大切な方を亡くした直後であり、冷静な判断が難しいことも少なくありません。

そのため、
・ご逝去後の連絡先
・死亡診断書のお渡し方法
・葬儀社への連絡
・その後の手続きの流れ
などについて事前に説明しておくことで、ご家族の不安を軽減することができます。
特に在宅で初めて看取りを経験されるご家族にとっては、「亡くなられた後に何をすれば良いのか」が分からないことも少なくありません。
また、クリニック内でも、
・誰が連絡を受けるのか
・誰が往診するのか
・死亡診断書をどのように作成するのか
を整理しておくことで、看取り後の対応を円滑に進めることができます。

患者様の最期を支えるだけでなく、ご家族が安心して送り出せる環境を整えることも、在宅医療における重要な役割の一つです。

まとめ

看取りで最も大切なのは、最期の瞬間ではなく、その前の準備です。
・療養方針を確認する
・緊急時の対応を決める
・DNARの方針を確認・共有する
・多職種で情報共有する
・ご家族へ繰り返し説明する
・死後対応を事前に説明する
これらを事前に行うことで、患者様・ご家族・医療介護従事者が同じ方向を向いて終末期を支えることができます。

看取りは決して医師一人で行うものではありません。

多職種が連携し、患者様やご家族の想いを共有しながら支えていくことで、より良い看取りにつながると考えています。
看取りで最も重要なのは、患者様が亡くなられる瞬間ではなく、その時を迎えるまでの準備と関係者全員での情報共有です。

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