訪問診療では、患者様やご家族との信頼関係が大切であることは言うまでもありません。
しかし、私が訪問診療に携わる中で感じているのは「挨拶をする相手は患者様やご家族だけではない」ということです。
訪問診療では通常の外来診療と異なり、患者様のご自宅や施設へ訪問します。
そのため、
・ケアマネジャー
・訪問看護師
・訪問介護職員
・施設職員
・地域住民
など、多くの方々と関わる機会があります。
在宅医療では患者様を地域全体で支えていくことが重要であり、そのためにはお互いに顔の見える関係を作ることが欠かせません。
そして、その第一歩が「挨拶」だと考えています。
1.地域住民が患者様を支えていることもある
実際に私が担当していた独居の患者様では、親族等がおらずお隣にお住まいの方が事実上のキーパーソンとして、定期的に様子を見に来てくださっていました。
ある日、その方が患者様の転倒を発見しクリニックに連絡を頂けたため、すぐに緊急往診ができて患者様の容態を確認できたことがありました。
患者様の生活を支えているのは医療・介護職だけではありません。
地域住民の方々が見守りや声掛けを行い、結果として在宅療養を支えていることも少なくありません。
そのような方々と普段から良好な関係を築いておくことで、必要な情報を得られたり、緊急時に協力をお願いできたりすることがあります。
2.挨拶をしないことで不要なトラブルにつながることもある
一方で、地域との関係が十分に構築できていないと、思わぬトラブルにつながることもあります。
特に住民同士のつながりが強い地域では、見慣れない人が頻繁に出入りしていることを不審に思われることがあります。
もちろん訪問診療を行っているだけなのですが、地域住民の方からすると、見慣れない人が頻繁に出入りしているように見えるためです。
そのような場合でも、普段からしっかり挨拶をしていたり、必要に応じて身分をお伝えしたりすることで、不信感を持たれにくくなります。
3.施設職員の気付きが早期発見につながる
施設入居中の患者様の場合も同様です。
施設職員の方々は日常的に患者様と接しているため、
「いつもより元気がない」
「食事量が減っている」
「表情が違う」
といった小さな変化に気付くことがあります。
こうした情報は病状の変化を早期に把握するうえで非常に重要です。
普段から良好な関係を築いていると、職員の方も気軽に相談しやすくなり、結果として患者様にとってより良い医療につながります。
4.多職種連携は挨拶から始まる
在宅医療では、
・要介護認定の更新
・サービス担当者会議
・退院調整
・看取り対応
など、多職種との連携が欠かせません。
療養方針を統一し、患者様を包括的に支えていくためには、ケアマネジャーや訪問看護師、介護職員などとの円滑なコミュニケーションが必要です。
しかし、いきなり専門的な相談や調整を行おうとしてもお互い話しにくくなってしまうことが多く、先にお互いが話しやすい関係を作ることが大切です。
実際、普段から関係性ができていると、サービス担当者会議や急変時の情報共有もスムーズになることが多いと感じています。
その第一歩として、自ら積極的に挨拶を行うことが重要だと考えています。
最後に
訪問診療では、患者様の病気だけではなく、生活状況やキーパーソンを把握することも重要です。
そして、その情報は患者様やご家族だけではなく、多職種や地域住民の方々から得られることもあります。
要介護認定や療養方針の調整にはケアマネジャーとの連携が必要ですし、患者様を地域全体で支えていくためには多職種連携が欠かせません。
そのため、患者様だけでなく、関わる全ての方との良好な関係構築が適切な在宅療養につながります。
そのためにも、まずは自らしっかり挨拶をすることが大切です。
目を見て挨拶をされて悪い印象を持つ方はほとんどいません。
当たり前のことのようですが、在宅医療においてはその「当たり前」が非常に大切だと感じています。
挨拶は単なる礼儀ではありません。
患者様を地域全体で支え、必要な情報を得るための関係構築の第一歩だと考えています。
在宅医療を行ううえで、多職種連携や地域との関係構築に悩まれている先生方の参考になれば幸いです。