はじめまして。女性向け恋愛・乙女ゲームのシナリオとプロットを制作している、雪@女性向けシナリオと申します。
創作のご相談を伺っていると、こんなお悩みをよく耳にします。
「結末は浮かぶのに、そこへ運ぶ道のりが組み立てられない」
「キャラは好きなのに、話がどこへ転がるか決まらない」
じつはこれ、才能や経験の問題ではありません。多くの場合、プロットを「出来事の順番」として作ろうとしていることが原因です。
私はプロットを「感情の設計図」として作ります。今日はその実例として、試し書きのショートシーンを1本と、その裏側にある設計図をお見せします。
■ 試し書き:『硝子の温室』(オリジナル・冒頭シーン)
夜会の喧噪から逃げるように、リディアは温室の扉を閉めた。
硝子の天井を、雨が細い指で叩いている。燭台の明かりは届かず、白薔薇だけが闇の中でぼんやりと浮かんでいた。
——ここなら、誰にも笑顔を作らなくていい。
手袋を外そうとしたとき、背後で靴音がした。
「夜会の主役が、こんなところにいらしては困ります」
振り返らなくても、わかる。八年ぶりに聞く声なのに、雨音の中から真っ先に拾い上げてしまう声。
「……ユリウス様こそ。隣国の外交官ともあろう方が、ご婦人の隠れ場所を暴くのは無作法では?」
「これは手厳しい」
彼は笑って、けれど一歩ぶんの距離を几帳面に空けたまま、隣に並んだ。硝子越しの雨を眺める横顔は、記憶の中の少年より輪郭が硬い。
昔は「リディ」と呼んだくせに。木登りを失敗した私を受け止めて、一緒に泥だらけになったくせに。
今のあなたは、敬語と役職の向こう側にいる。
「明日には発たれるのでしょう」
「ええ。公務ですので」
「そう。……お元気で」
差し出された私の手を、彼は一瞬だけ見つめた。手袋の指先に、触れるか触れないかの礼をして——去り際、雨音に紛れそうなほど小さく、確かに言った。
「風邪を引くなよ、リディ」
扉が閉まる。
温室にひとり残された私は、彼が触れた指先を、もう片方の手で包み込んだ。
■ このシーンの裏側にある「設計図」
上のシーンは、書き始める前に次の3つだけを決めています。逆に言えば、この3つ以外はほとんど決めていません。
1. 届けたい読後感(最初に決める)
「じれったさ」と「この先を読みたい予感」。切なさで終わらせず、最後の一言で心拍を一段上げて終わる設計です。
2. 感情の転換点(シーンに1つだけ置く)
このシーンの転換点は「呼び方が一瞬だけ崩れる」こと。敬語の応酬で距離を積み上げたぶんだけ、「リディ」の一言が効きます。転換点を欲張って2つ3つ入れると、どれも効かなくなります。
3. 演出の小道具(感情を代弁させる)
雨音(ふたりの沈黙を埋める)、手袋(触れられない距離の象徴)、白薔薇(暗がりでも視線が迷わない目印)。台詞で「切ない」と言わせない代わりに、小道具に語らせます。
プロットの段階でここまで決まっていれば、あとは場面を「撮影」するように書くだけです。逆に、出来事の順番だけを並べたプロットは、書く段階で毎回「で、ここで何を感じさせたいんだっけ?」と手が止まります。
結末が浮かんでいるのに道のりが組めない方は、足りないのが「出来事」ではなく「感情の通り道」であることがほとんどです。
■ ご案内
私の出品サービスでは、この「感情の設計図」としてのプロット(構成案)を制作しています。
・ご自身で執筆される方の、土台となる構成案づくり
・乙女ゲーム/ノベルゲーム/恋愛小説・ロマンス/TL/夢小説/BLに対応
・ご希望に応じて、今回のような冒頭シーンの試し書きもお付けできます(オプション)
「まだ設定が曖昧」という段階でも大丈夫です。むしろ、その段階からご一緒するのが一番スムーズです。出品ページの「見積り・カスタマイズの相談」から、お気軽にお声がけください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。