今日から3回にわたって、「なんだか、自分の歌詞が素人っぽい……」という悩みを解決するための、具体的なアプローチを綴っていこうと思う。
さて、突然だがひとつ質問がある。
「夕焼けが綺麗だった」
「君の笑顔が好きだった」
なぜ私たちの言葉は、時にこんな風に「ありきたり」になってしまうのだろうか。その答えは、言葉の引き出しの数ではなく、私たちの「視点」そのものにある。
ありきたりな歌詞は、ただ見える世界を「説明」しようとする。 でも、作詞家は世界を説明しない。代わりに「描写」をする。
たとえば、「夕焼けが綺麗だった」と説明する代わりに、プロの作詞家ならこんな風に表現するかもしれない。
ビルの隙間からこぼれたオレンジ
夕焼けの向こうから明日の音が聴こえる
夕焼け空とキミの匂い
ほろ苦い思い出とあの日の夕日
夕日が頭を撫でてくれた
この違いはどこから生まれるのか。 それは、日常を「五感」で味わい尽くす、特別な観察眼を持っているかどうか、だ。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。
作詞家は、この5本のアンテナを常に全開にして、世界から言葉の「素材」を集めている。
「綺麗だった」という大まかな感想の、その奥にある「どんな匂いがしたのか」「どんな音が聞こえたのか」「どんな肌触りだったのか」という五感までを、深く言葉に置き換えてみると、新しい言葉が自然と生まれてくるはずだ。
【今日のトレーニング】
あなたの作詞ノートを開いて、今日一番「心が動いた風景」をひとつだけ思い出してみてほしい。 そして、五感(見たもの、聞こえた音、感じた匂いなど)を使って、自由に書き出してみる。
これが、ありきたりな言葉から卒業するための、最も重要で、最も確実な第一歩になる。
素晴らしい「観察」ができたら、次はその情景をどうやって「物語」に変えていくのか。 明日は、 『説明』ではなく『描写』するための具体的な方法について、深く掘り下げていきたい。