看護研究でアンケート調査をするとき、
「何人くらい集めればいいですか?」
と気になることがあります。
100人集まれば十分?
50人では少ない?
できるだけ多い方がいい?
もちろん、回答者数は大切です。
でも、もう一つ見ておきたいのが、
「何人にお願いして、そのうち何人から回答が得られたのか」
ということです。
今回は、混同しやすい「回答数」と「回収率」について考えてみます。
「100人から回答があった」だけでは分からない
例えば、2つのアンケート調査があったとします。
Aの研究では、
100人にアンケートを配って、80人から回答がありました。
Bの研究では、
500人に配って、100人から回答がありました。
回答者数だけを見ると、
Bの研究の方が多くなります。
でも回収率を見ると、
Aは80%。
Bは20%です。
同じように「たくさん回答が集まった」と見えても、その意味は少し違います。
そのため、
回答者数だけでなく、どのくらいの人が回答してくれたのか
も確認する必要があります。
回答率・回収率とは?
簡単に考えると、
アンケートを依頼した人のうち、どのくらいから回答が得られたのか
を示すものです。
例えば、
200人に依頼して150人から回答があれば、
150 ÷ 200 × 100 = 75%
となります。
ただし実際の研究では、
「配布数」
「回収数」
「有効回答数」
を分けて考えることがあります。
150人から返ってきても、
すべての回答を分析に使えるとは限らないからです。
「回収できた」と「分析できた」は同じではありません
例えば、
200部を配布して、
150部が返ってきたとします。
でも、そのうち10部に大きな記入漏れなどがあり、分析対象から除外した。
すると、
回収数:150部
有効回答数:140部
となります。
ここを曖昧にしてしまうと、
「結局、何人のデータを分析したの?」
と分かりにくくなります。
研究結果を書くときには、
配布 → 回収 → 分析対象
という流れが分かるようにしておくと整理しやすくなります。
回収率が低いと何が問題なのでしょうか?
回収率が低い場合に考えたいのが、
「回答した人と、回答しなかった人に違いはないか?」
ということです。
例えば、
ある研修についてアンケートを行ったとします。
研修に満足した人だけが積極的に回答して、
不満を持っている人はほとんど回答しなかったとしたらどうでしょうか。
集まった回答だけを見ると、
「この研修は非常に満足度が高かった」
という結果になるかもしれません。
でも、
それを参加者全体の意見として考えてよいのかは慎重になる必要があります。
回答しなかった人のことも考える
アンケート調査では、
回答してくれた人のデータを分析します。
そのため、どうしても、
「回答してくれた人」
に目が向きます。
でも、
研究結果を考えるときには、
「回答しなかった人はどんな人だったのだろう?」
という視点も大切です。
忙しい人は回答しなかったかもしれません。
テーマに興味がある人ほど回答したかもしれません。
逆に、強い不満を持っている人ほど回答した可能性もあります。
実際に回答しなかった理由をすべて知ることは難しいですが、
回答者だけに偏った結果になっている可能性
は考えておく必要があります。
では、回収率は何%あれば大丈夫?
ここで気になるのが、
「では、何%なら大丈夫なの?」
ということだと思います。
ただ、
「○%以上なら必ず大丈夫」
と単純に決められるものではありません。
対象者、
調査方法、
研究テーマ、
回答の負担、
配布方法などによって状況が違うからです。
高い回収率が望ましいことは確かですが、
回収率だけで研究の質が決まるわけではありません。
「何%だったか」だけではなく、
なぜその回収率になったのか
結果にどのような影響が考えられるのか
まで考えることが大切です。
「必要な人数」と「回収率」は別の話です
ここは特に混同しやすいところです。
例えば、
「100人の回答が必要」
と考えたとします。
だからといって、
100人にアンケートを配ればよいとは限りません。
全員が回答してくれるとは限らないからです。
必要な分析対象者数が100人で、
実際の回答率が50%程度になると予想するのであれば、
100人に依頼しただけでは足りない可能性があります。
つまり、
必要な対象者数を考えること
と、
実際にどの程度回答してもらえるかを考えること
は分ける必要があります。
「とにかくたくさん配る」でもありません
では、
多く配れば解決するのでしょうか。
これも少し違います。
研究対象として適切ではない人まで広げて、
とにかく回答数を増やしても、
研究目的に合ったデータとは言えません。
以前の記事でも触れましたが、
研究では、
「何人集めたか」だけでなく「誰から集めたか」
も大切です。
対象者を適切に設定したうえで、
必要な人数と回収の見込みを考える。
この順番が重要になります。
アンケートを配る前に考えておきたい
回収率は、
アンケートを配り終わってから初めて考えるものではありません。
研究計画の段階から、
どのくらいの人に依頼できるのか。
どのくらいの回答が見込めるのか。
回答しやすい質問量になっているか。
回答方法は分かりやすいか。
回答者の負担が大きすぎないか。
といったことを考えておく必要があります。
質問項目をたくさん作ることが、
必ずしも良いアンケートではありません。
「最後まで回答してもらえる設計になっているか」
という視点も大切です。
まとめ
アンケート調査では、
「○人から回答が集まった」
という数字に目が向きやすくなります。
でも、その数字だけでは研究全体は分かりません。
大切なのは、
何人に依頼したのか。
何人から回答があったのか。
そのうち何人を分析したのか。
そして、
回答しなかった人による偏りは考えられないか。
というところまで見ることです。
回答数が多ければ、それだけで良い研究になるわけではありません。
反対に、回収率だけで研究の良し悪しが決まるわけでもありません。
「何人集まったか」だけを見るのではなく、
その数字がどのように集まったものなのか。
そこまで考えると、アンケート調査の結果をもう一段丁寧に見ることができると思います。
研究計画を立てていて、
「対象者を何人にすればよいか分からない」
「アンケートの項目数が多すぎないか心配」
「研究目的と調査方法が合っているか確認してほしい」
といった場合には、看護研究の研究計画や質問紙の整理についてもサポートしています。
看護研究計画書テンプレート