【介護士の独り言】なぜ特養は「介護を知らない親族経営」が多いのか?

【介護士の独り言】なぜ特養は「介護を知らない親族経営」が多いのか?

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コラム
特別養護老人ホーム(特養)で働いたことがある人なら、一度はこんな疑問を持ったことがありませんか?

​「なぜ、うちの施設長や副施設長は、理事長の息子や嫁ばかりなんだろう?」

「しかも、介護のことなんて何一つ知らない素人なのに……」

​現場で叩き上げで頑張ってきた優秀な職員たちに支えられながら、お飾りだけの施設長が一番高い給料をもらっている。もちろん、中には愚直に現場と向き合っている素晴らしい親族の方もいますが、少なくとも私が30年以上のキャリアの中で見てきた特養の多くは、この「お飾り親族経営」でした。

​では、なぜこんな歪んだ構造が生まれてしまったのでしょうか。

その答えは、特養の歴史を振り返ると見えてきます。

​昔、老人ホームは「嫌悪施設」だった

​私が介護士になったのは、もう30年以上も昔の話です。その頃でさえ、老人ホームは周辺住民から「おばすて山」や「精神科病院」のようなイメージを持たれ、建設反対運動が起きるほど嫌がられていた時代でした。

​歴史のある古い特養の立地を調べてみてください。駅から遠い、交通の便が悪い辺鄙(へんぴ)な場所にポツンと建っていることが多いはずです。当時はそれほど、住宅街や駅近くには作らせてもらえない施設だったのです。

​しかし、日本は急激な高齢化に直面し、圧倒的に老人ホームが足りなくなります。

国はどうしても施設を増やしたいため、社会福祉法人に対して「建設費の7割以上を国が補助する」という破格の補助金制度を作りました。さらに、残りの3割の借入金に対する利息まで補助したのです。

​つまり、「土地さえあれば、建物はタダ同然で建てられる」というボーナスタイムが到来しました。

​この制度に目をつけた「田舎の農家の2代目」

​ここに目をつけたのが、地方の農家の2代目たちでした。

​「親から引き継いだ広い土地(農地)はある。でも、自分は農業なんてやりたくない……」

​そう考えた2代目は、自分が理事長となる社会福祉法人を設立し、そこに農地を寄付します。一見、土地を手放して損をしているように見えますが、実はここからが錬金術です。

​当時は介護保険制度が始まる前。特養の運営費は税金から、入居者は役所から自動的に紹介されてきました。施設が足りない時代ですから、常に満床。収入は完全に安定しています。

​農業をやりたくなかった2代目は、こうして合法的に「年収1000万円以上の理事長」へと転身したのです。田舎の農地を二束三文で売るよりも、社会福祉法人にして自分がトップに座り続けた方が、圧倒的に生涯年収が高くなるからです。

​肥大化していく一族経営のリアル

​さらに、施設を運営しながら法人にお金を貯めていき、その資金でまた近くの安い土地を買い、次の施設を建てる。そして、自分の息子や親族に役職を与え、高い給与を払い、一族の繁栄を確固たるものにしていきました。

​親族経営の特養で働いている介護士のみなさん。

いくら現場で夜勤を頑張っても、成果を上げても、あなたが施設長になれる可能性は限りなくゼロに近いですよね。なぜなら、その椅子は最初から「一族のため」に用意されたものだからです。

​元々の目的が「田舎の価値のない農地の有効活用と一族の生き残り」なのですから、介護の「か」の字も知らない息子や、半日しか出勤してこない理事長の妻がふんぞり返っているのは、彼らの歴史から見れば「当然のこと」なのです。

​やる気のないトップの顔が浮かんだあなた。

あなたの施設にも、こんな「歴史の産物」がいませんか?

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