第3章:①|クリーニング費用──知っていたのに、判断を誤った瞬間
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コラム
クリーニング費用については、
これまで何度も書いてきました。
どこまでが借主負担で、
どこからがそうではないのか。
基準や考え方についても、すでに理解しているつもりでした。
ですので今回は、
「払うべきかどうか」を解説する記事ではありません。
知っていたにもかかわらず、判断を誤ってしまった瞬間についての話です。
退去当日。
立ち会いは淡々と進んでいきます。
部屋の状態を確認し、
チェック項目を一つずつ見ていき、
最後に、よくある形でこう言われました。
「クリーニング費用は〇万円ですね」
その金額が妥当かどうかについては、
本当は分かっていました。
ただ、その日は次の予定が詰まっており、
鍵を返却し、書類の手続きを終え、
できるだけ早くこの場を離れたいという気持ちがありました。
相手は慣れた様子で説明を進め、
こちらは初めて、もしくは久しぶりの退去です。
「通常かかります」
「皆さんお支払いされています」
その言葉を聞いた瞬間、
頭の中にあった判断基準が、
すっと引っ込んでしまいました。
「あとで考えればいいだろう」
「ここで話を止めるのも面倒だ」
そう考えてしまい、
そのまま話を進めてしまったのです。
あとから振り返ると、
判断を誤った理由ははっきりしています。
知識がなかったわけでも、
説明を理解できなかったわけでもありません。
判断する余裕がなかった。
それだけでした。
退去当日というタイミング、
時間の制約、
その場の空気。
それらが重なった結果、
「その場で立ち止まって考える」という選択を
後回しにしてしまったのだと思います。
クリーニング費用でトラブルになる方は多くいらっしゃいます。
ただ実際には、
トラブルになる前に飲み込んでしまう方のほうが多い印象です。
それは、
判断を間違えたからではありません。
判断するための余白を、
その場で失ってしまっただけなのです。
もし今後、同じような場面に立つことがあれば、
一つだけ思い出していただきたいことがあります。
その場で結論を出さなくてもよい、
という選択肢があるということです。
契約の知識よりも、
判断するための一呼吸が必要になる瞬間があります。
この記事は、
そのことを思い出すための記録として書きました。