私の“タイミング”は、
やっぱり仕事だった。
オフィス長になろうとしていた。
いや、
正確には違う。
ずっと心の奥では思っていなかった。
自分に言い聞かせていた。
「ならなくてはいけない」
そう腹をくくっていただけだった。
頭のどこかでは、本当に求めているわけではないことに気が付いていたが
自分の本音に蓋をしていた。
そんな時、
部下がミスを起こした。
私は異動したばかりだった。
なぜか今までの異動より忙しく、
心が落ち着かなかった。
上から下から、急かされることなんて日常茶飯事。
もしかしたら、
“オフィス長になる”
そう決めたことで、
さらに自分を追い込んでいたのかもしれない。
そのミスで、
私は散々な目にあった。
終わらない聞き取り。
コンプラ研修。
どうせ後で分かるのに、
名乗り出ることができない苦しさ。
故意ではない。
重大事故でもない。
けれど、
精神的には十分苦しかった。
こんな経験、
今まで一度もなかった。
お客様は怒っていなかった。
けれど、
部下のミスに気づけなかったのは
私の責任。
そこは理解していた。
しかし、
オフィス長に言われた。
「自分がやってなくても、やったと言え」
私はそれが許せなかった。
さらに後日、
部下が陰で
「ミスをしたのはトレーナー」
そう言っていたことを知った。
私は、
そんな初歩的なミスはしない。
許さない。
その感情しかなかった。
そこから、
今まで耐えてきた
組織の理不尽さに、
耐えなくなっていた。
そして、
もう耐える必要はない。
そう思うようになっていった。
重箱の隅をつつかれ、
睨んでくる昭和な会議。
平等を欠きながら、奴隷のように行動する管理職たち。
まるで軍隊だった。
私はロボットではない。
今まで耐えることが出来た。
けれど、
「もう、こらえない。」
そう思った。
何も許せなかった。
私の心境は、
そこでガラッと変わった。
中途覚醒が増えていた。
出勤前の早朝ウォーキングも増えた。
そんなある日。
ふと上を見上げると、
お墓があった。
いつも歩いている道なのに、
気がつかなかった。
目線を戻すと、
そこにはお地蔵様。
不思議だった。
なぜ今まで気づかなかったのだろう…?
私は、
そこに何か意味を感じて
手を合わせた。
するとそのタイミングで、
向こうからお婆さんが歩いてきた。
「おはようございます!」
とても明るく声をかけてくれた。
それから、
その方と会うことが増えた。
いつも励ましてくれた。
早朝散歩の中で、
私は気づいた。
「私も、
ただ話を聞いてくれる場所があったらいいのに」
そう思った。
ちょうどその頃、
保険会社では
メンタル特約が発売され始めていた。
「これから、
こういう悩みを持つ人が増えていくという事だろうな」
そう思った。
「それなら、
そういう場所を私が作ればいいんじゃないか」
そこに気づいた私は、
退職を申し出た。
娘が高校を卒業するタイミング。
私が会社を辞めるタイミング。
すべては、
あの事故があったから。
もしあれがなければ、
私はきっと、
休みもままならず、
気の休まらない毎日を、
定年まで続けていたと思う。
あの出来事は、
組織という
宗教のような場所から離れるために、
必要な出来事だった。
今の私は、
ピアノ+傾聴セッションを叶えるために、
中小企業診断士の方と相談しながら進んでいる。
自分らしく生きている。
全部、
タイミングだった。
すべてのピースが、
ちゃんと揃っていたのだと思う。
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