文化祭の前夜、教室はもう静かになっていた。
段ボールや紙、色とりどりの飾りがそのまま残され、
明日への準備がすべて置かれたまま。
でも、心の中は静かではない。
あの人のことを考えると、胸が締め付けられるような気持ちになる。
近づきたいけど、近づけない。
笑わせたいけど、変に思われたくない。
(どうしてこんなに意識してしまうんだろう)
一人、机に向かい、手帳を開く。
作業のチェックリストを書こうとするけれど、頭に入らない。
さっきまでの会話、
些細な視線、手が触れた瞬間。
どれも、頭から離れない。
「こんな気持ちで明日、うまくやれるのかな」
不安と期待が、混ざり合う。
少しだけ窓の外を見る。
夕暮れの光が柔らかく差し込む。
その光は、
少しだけ心を落ち着かせてくれるような気がした。
でも、心臓はまだ高鳴る。
(明日、何か起こるんだろうな)
一歩先の未来が、楽しみでもあり、怖くもある。
結局、手帳に書いたのは、
やるべき作業のことだけではなかった。
自分の気持ち。
初めて、あの人にどう思われたいか。
どうしたいか。
書くことで、少しだけ整理できた気がする。
でも、心の奥にあるドキドキは、
まだ消えていない。
その夜、ベッドに入っても、
顔が浮かぶ。
笑顔も、怒った顔も、少しだけ寂しそうな表情も。
(明日、どうなるんだろう)
心臓の音を聞きながら、
少しだけ眠れない夜が続いた。
続く。