文化祭の中で生まれた恋 第2話「距離が近すぎる机の上」
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朝から教室は騒がしかった。
文化祭の準備が本格的に始まり、
机は動かされ、段ボールが積まれ、空気が一気に“非日常”に変わっていく。
そんな中で、
自分の席はいつの間にか決まっていた。
(…近い)
気づいたときにはもう遅かった。
隣。
いや、かなり隣。
さっきまで普通の距離だったはずなのに、
今はすぐ横に“あの人”がいる。
「これ、どこに貼る?」
普通の声。
普通の会話。
なのに。
なぜか、うまく返せない。
(なんでこんなに意識してるんだろ)
ただ机を並べているだけ。
ただ作業しているだけ。
それなのに。
手が少し動くたびに、気になってしまう。
視線が少しずれるたびに、気になってしまう。
気づけば、息まで浅くなっていた。
「ここ、押さえてて」
指示されて、慌てて手を伸ばす。
その瞬間だった。
手が、少しだけ触れた。
(っ…)
ほんの一瞬。
それだけなのに。
心臓が変な音を立てる。
相手は気づいていないのか、
普通に作業を続けている。
(自分だけだ)
また、そう思う。
でも。
その“自分だけ”が、
妙に苦しい。
作業は進む。
会話も続く。
なのに、距離だけが変わらない。
いや、むしろ。
少しずつ近くなっている気さえした。
気のせいだと分かっているのに、
目が離せない。
「ねえ、それさ」
また声。
普通の一言なのに。
なぜか、心が反応する。
(やばいな、これ)
ただの文化祭準備。
ただの隣の席。
それだけのはずなのに。
気づけば、
“意識してしまう関係”に変わっていた。
この日から、
距離はもう元には戻らなくなる。
続く(第3話へ)