第6話「一瞬だけ、手が触れた」

第6話「一瞬だけ、手が触れた」

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占い
文化祭は、もう後半に入っていた。

忙しさの中で、時間だけがどんどん過ぎていく。

午前よりも、空気は少しだけ慌ただしい。

片付けと準備が同時に進み、
誰もが少し急ぎ足になっていた。

そんな中だった。

「これ、運んでくれる?」

いつもの声。

その一言に、自然と反応してしまう。

段ボールを持ち上げる。

思ったより重い。

(これ、結構きついな…)

そのときだった。

横から、もう一人の手が伸びてきた。

「…貸して」

短い言葉。

でも、断る前に手が重なった。

一瞬。

ほんの一瞬だけ。

触れた。

(っ…)

心臓が止まる。

すぐに離れる。

でも、感覚だけが残る。

相手は何もなかったように段ボールを持っている。

(え、今の…)

自分だけが反応している気がした。

周りは忙しい。

誰も気づいていない。

なのに。

その一瞬だけが、やけに鮮明だった。

午後。

さらに作業は続く。

でも、さっきのことが頭から離れない。

(なんで、あんなにドキッとしたんだろ)

ただの接触。

ただの偶然。

そう思おうとしても、無理だった。

視線を向けると、
相手は普通に笑っている。

その“普通”が、余計に意識させる。

(自分だけ変じゃないか?)

そう思った瞬間、少し怖くなる。

でも同時に。

なぜか嬉しい気持ちもあった。

何かが変わり始めている気がした。

言葉にはならないけれど。

確かに、距離が少しだけ近くなっている。

文化祭の音の中で、
その変化は誰にも気づかれないまま進んでいく。

続く。
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