占い師・理科準備室の博の、あたたかいレシピの話
仕事でくたくたの日は、家でご飯を作るのがしんどい。
そんなとき、最近の私の定番は天津飯だ。
以前の私は、
「天津飯なんて、中華屋さんで食べればいいじゃない」
と思っていた。
あのふわふわの卵に、野菜たっぷりの餡。
どう考えても手間がかかりそうで、自分で作ろうなんて思わなかった。
喫茶店を手伝っていた頃、
友達がお昼のまかないに天津飯を作ってくれることがあった。
白いご飯の上にふわりとのった卵。
その上には、その日の残り野菜――きのこ、はくさい、にんじん、時々ピーマン。
優しい餡がとろりとからんで、
卵の中には小さなかにかまも隠れていた。
驚くほどあたたかい味だった。
その友達が喫茶店を閉めるとき、
「はくちゃん、自分の食べるものは、自分で作らなきゃだめだよ」
と一冊の大学ノートを渡してくれた。
中には、毎日作ってくれていたまかない料理が、
かわいいイラストと一緒に書き込まれていた。
久しぶりにキッチンに立ち、
ノートを開いて天津飯に挑戦してみた。
すると――思っていたより行程が少ない。
20分もかからずに出来上がってしまった。
味はもちろん、彼女のレシピのおかげで大成功。
一緒に食べた息子が
「ママ、おいしい!やればできるんだね」
と言った瞬間、
“今までどれだけ微妙なものを作っていたのか”と
思わず笑ってしまった。
私は、新しいことを前にするとすぐ身構えてしまう癖がある。
「難しそう」「大変そう」と決めつけてしまう。
でも天津飯は教えてくれた。
やってみると案外、すぐできることは多いのだ、と。
それ以来、しんどい日ほど天津飯を作るようになった。
残り野菜と卵とかにかまさえあればいい。
鍋の中で餡がとろりと輝きはじめたら、
もうそれだけで心が少し軽くなる。
今日も、ノートのページをめくりながら天津飯をつくった。
ふわふわの卵と、やさしい餡のあたたかさが、
あの頃の彼女の声まで連れてきてくれる気がした。
そして、あの時と同じように、おなかがはちきれそうになった。
◆おまけ:彼女から受け継いだ、やさしい天津飯レシピ(1人前)
【材料】
・卵…2個
・かにかま…3本
・白いご飯…食べられるだけ
【餡の材料】
・残り野菜
(おすすめ:きのこ類・はくさい・にんじん…一種類でもOK)
・水…200ml
・オイスターソース…小さじ1
・醤油…小さじ1
・鶏ガラ粉末…小さじ1
・水溶き片栗粉…大さじ1(お好みで調整)
【作り方】
1.卵とかにかまをざっくり混ぜて、ふわっと焼き、ご飯にのせる。
2.水溶き片栗粉以外の餡の材料全てを、鍋でひと煮立ち。
3.水溶き片栗粉でとろみをつける。
卵の上に餡をやさしくかけたら完成。
難しそう(私だけかもですが)に見えて、実はとても簡単。
そして何より、心まであたたかくなる味です。