経営者は数字をこう読む⑤ その「原因」、本当に数字で説明できますか?

経営者は数字をこう読む⑤ その「原因」、本当に数字で説明できますか?

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ビジネス・マーケティング
「今月の売上は前年比90%でした。」
会議でこの種の報告の後にはこんな説明が続くことがあります。

「物価高で消費者の節約志向が強まっています。」
「競合が値下げしている影響だと思います。」

どちらも、もっともらしい説明です。
しかし、市場全体を見てみると前年比105%で伸びていたらどうでしょう。
競合各社も売上を伸ばしているとしたら、本当に「消費者の節約志向」が原因なのでしょうか。

数字が動くと、人はその理由を説明したくなります。
問題は、その説明が正しいとは限らないことです。

今回は、経営者が数字を見る6つの視点の5つ目、
「原因を説明できるか」について考えます。

1. 「説明できる」と「原因が分かっている」は違う

業績が悪化すると、原因らしい言葉はいくらでも出てきます。

「景気が悪い」
「競争が激しくなった」
「営業力が弱い」
「顧客ニーズが変わった」

どれも間違っているとは限りません。
しかし、経営で必要なのは、もっともらしい説明ではなく、
その説明と数字が整合しているかを確認することです。

例えば、
「市場が悪いから売上が落ちた」
のであれば、市場全体も落ちているはずです。

市場が伸びているのに自社だけ落ちているなら、
少なくとも「市場が悪い」だけでは説明できません。
まずここを疑うことが、原因を見る第一歩です。

2. 自分が信じたい原因を探していないか

原因分析でもう一つ気をつけたいのが、
最初から答えを決めてしまうことです。

以前から「価格が高すぎる」と思っている人は、売上が落ちると、
「やっぱり価格ですよ。」
と言いたくなります。

一方、「営業力が弱い」と考えている人なら、
「営業活動が足りないからです。」
と考えるでしょう。

同じ数字を見ても、持っている問題意識によって見え方は変わります。

そこで私は、
「自分の仮説を証明する数字」だけでなく、
「自分の仮説が間違っているとしたら、どんな数字になるか」
も考えることが重要だと思います。

3. 「本当にそれが原因なら?」と考える

例えば、
「値上げしたから販売数量が落ちた」
という説明が出たとします。

そこで、
「本当に値上げが原因なら、どんな数字が出ているはずだろう?」

と考えます。
値上げ幅の大きい商品の方が数量は落ちているのか。
値上げしていない商品はどうなのか。
価格に敏感な顧客ほど離れているのか。

もし値上げしていない商品まで同じように落ちているなら、
別の原因があるかもしれません。

原因を「説明する」のではなく、原因の仮説を確かめる。
この違いは大きいと思います。

4. 「原因は一つ」とは限らない

現実の経営では、
一つの数字が一つの原因だけで動いていることはむしろ少ないものです。

例えば売上が前年比10%減ったとしても、
値上げによる数量減少、大口顧客の失注、新商品の伸長、
競合商品の発売など、複数の要因が同時に動いているかもしれません。

つまり、
「売上が落ちた原因は何か?」

と一つの答えを探すより、
「何が、どれくらい数字を押し上げ、何が、どれくらい押し下げたのか?」
と考えた方が、実態に近づきます。

例えば利益が5,000万円減ったとしても、
その裏で値上げによる増益が3,000万円あったなら、
悪化要因は実際には8,000万円あったことになります。

「利益が5,000万円減った」という結果だけを見るのとでは、
次に打つ手が変わります。

5. 原因を確認するのは「誰が悪いか」を探すためではない

ここで、経営者としてもう一つ大切なことがあります。

数字が悪化したときに、
「なぜこうなったの?」
と聞けば、経営者にそのつもりがなくても、
聞かれた側は問い詰められているように感じることがあります。

「何を失敗したんだ」「誰の責任なんだ」と聞かれているように受け取れば、人は自然と自分を守ろうとします。

すると、
「市場環境が悪かった」
「他部署の対応が遅れた」
といった、自分に責任が及びにくい説明が増えてしまうかもしれません。

しかし、原因を確認する目的は犯人探しではありません。
次に何をすればよいかを考えるためです。

売上が落ちたのであれば、
「誰が悪かったのか」ではなく、
「何が売上を押し下げたのか」
「その要因は今後も続くのか」
「次は何を変えるべきか」
を考える。

原因分析は、過去を裁くためではなく、
未来の打ち手を考えるための前向きな作業なのです。

6. 「聞き方」で、出てくる情報は変わる

だからこそ、経営者のコミュニケーションも重要です。

例えば、
「責任を追及したいわけではなく、次の打ち手を考えたい。
 今の時点で、何が影響していると思う?」
と伝える。

あるいは、
「まだ原因が分からなくても構わない。まず可能性を整理しよう。」
と伝える。

これだけでも、受け取られ方は変わります。
経営者が「正解を答えろ」という姿勢になれば、
現場から出てくるのは無難な説明になりがちです。

一方で、
「一緒に原因を探して、次の手を考えよう」
という姿勢なら、都合の悪い事実や「まだ分からない」という情報も共有されやすくなります。

正しい原因を知るためには、
分析力だけでなく、本当のことを話せる関係づくりも必要なのです。

7. 「分からない」を許す

原因は、すぐに分からないこともあります。
価格なのか、商品力なのか、競合なのか。
現時点では判断できないこともあるでしょう。

そんなとき、
「現時点では特定できない。ただし、価格と競合の二つの可能性が高いので、追加で確認する。」
で構いません。

分からないことと、考えていないことは違います。
根拠の弱い説明を無理に「原因」とするより、
何が分かっていて、何がまだ分からないのかを明確にした方が、
次の判断は正確になります。

まとめ

数字が動けば、理由はいくらでも考えられます。

だからこそ、
「その説明を裏付ける数字はあるか?」
と考えてみてください。

そして、原因を確認する目的は誰かを責めることではありません。
原因を知り、次の打ち手を考えるためです。
経営者には、数字を分析する力だけでなく、
現場が本当のことを話せる聞き方も必要なのだと思います。

次回は、6つの視点の最後、「次の意思決定につながるか」について考えます。数字を分析して「なるほど」で終わらず、そこから何を決めるのかを取り上げます。

最後に

「会議では原因が説明されるが、本当に正しいのか分からない」
「原因を聞くと、現場が防御的になってしまう」
「分析しても、次の打ち手につながらない」
そんなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
数字と事実を整理し、誰かを責めるのではなく、未来の意思決定につながる原因分析を一緒に考えます。

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