「それでは、今日の会議を始めます。」
商品企画部長が資料を画面に映します。
「今日は新商品の発売について話したいと思います。まず資料を説明します。」
そこから20分かけて資料を説明。すると営業部長が質問します。
「そもそも、ターゲットは誰なんですか?」
商品企画部長が答えます。
「そこも今日、皆さんと議論したいと思っています。」
今度は製造部長から、
「発売時期は決まっているんですか?」
と質問が出ます。
「それもまだです。」
話しているうちに、ターゲット、価格、発売時期、販売方法……と論点が次々に広がっていきます。
気がつけば1時間。
最後に商品企画部長が言います。
「いろいろ意見が出たので、一度持ち帰って整理しましょう。」
結局、何も決まっていません。
こうした会議に心当たりはないでしょうか。
会議が長くなると、「参加者の発言が長い」「人数が多すぎる」といったことが原因だと思いがちです。
もちろん、それもあります。
しかし私は、もっと根本的な原因があると思っています。
会議が始まる前の準備です。
会議は、時間を取っただけ長くなりやすい
会議を設定するとき
「とりあえず1時間」
と予定を入れていないでしょうか。
ここで知っておきたいのが、「パーキンソンの法則」です。
英国の歴史学者C・ノースコート・パーキンソンは1955年、『The Economist』に掲載された風刺的なエッセイの中で、「仕事は、完成のために与えられた時間を満たすまで膨張する」という趣旨の考え方を示しました。
つまり、本来30分で終えられる仕事でも、1時間与えられると、
必要以上に時間をかけてしまうことがあるということです。
これは単なる格言だけではありません。
1967年の実験では、同じような課題でも余分な時間を与えられたグループの方が、実際に完了まで長い時間を使いました。
1999年の研究でも、予定していた後続作業がなくなり時間に余裕ができると、目の前の作業により長い時間をかける現象が確認されています。
会議でも、似たことが起きます。
1時間取ってあるから、最初の20分を資料説明に使う。
本題から少し外れた話もする。
そして終了時刻が近づいて、ようやく結論を急ぎ始める。
最初から「1時間ありき」で考えるのではなく、
その会議の目的を達成するために、本当に何分必要なのか
を考えることが大切です。
ただし、単純に会議を30分にすればよいわけではありません。
短い時間で中身のある議論をするには、準備が必要です。
ポイントは3つだけです。
① ゴールを決める
② 論点を事前に提示する
③ 資料を事前に共有する
1. 会議の「ゴール」を決める
先ほどの会議で最も問題なのは、
「新商品について話す」ということしか決まっていないことです。
「話す」は会議のゴールではありません。
例えば、
「新商品のメインターゲットを決める」
「発売時期を決める」
「A案とB案のどちらで進めるか決める」
ここまで明確にします。
情報共有が目的なら、「○○について参加者全員が理解する」でも構いません。
重要なのは、会議が終わったとき、どのような状態になっていれば成功なのかを決めておくことです。
ゴールが明確なら、途中で価格や物流など別の話題が出ても、
「それは今日決めることではないので、別途議論しましょう。」
と戻すことができます。
会議の時間を決めるのも、その後です。
ゴールを決めてから、「この内容なら30分で十分」「これは重要な意思決定なので1時間必要」と考えます。
2. 「何を話すか」を事前に伝える
ゴールを決めたら、次に考えるのが論点です。
例えば、「新商品のターゲットについて議論します」だけではなく、
・30代と40代のどちらをメインターゲットにするか
・既存顧客を狙うのか、新規顧客を狙うのか
・判断するために不足している情報はあるか
と、会議で考えてほしいことを事前に伝えます。
そうすれば参加者は、会議室に入ってから初めて考えるのではなく、あらかじめ自分の意見を持って参加できます。
これは意外と大きな違いです。
会議が始まってから、
「皆さん、どう思いますか?」と聞かれて初めて考え始めるのと、
「この3点について意見を持ってきてください」
と言われて参加するのでは、議論のスタート地点が違います。
会議を「考え始める時間」ではなく、「意見をぶつけて結論を出す時間」にする。
そのために、論点を事前に提示しておきます。
3. 資料は会議の前に読んでもらう
会議の最初の20分を使って、資料を1ページ目から説明する。
これも、よくある光景です。
しかし、参加者全員が集まっている時間を使って、事前に読める資料を読み上げる必要があるでしょうか。
資料は事前に共有し、
「資料は事前に確認してください。当日は○○について議論します。」
と伝えておきます。
もちろん、専門的な内容など、その場で説明しなければ理解しづらい部分は説明する必要があります。
しかし、資料に書いてあることを最初から最後まで説明する必要はありません。
会議では、資料の説明ではなく、
「この数字をどう解釈するか」
「A案とB案のどちらを選ぶか」
「何を決めるか」
といった、会議でしかできないことに時間を使うべきです。
会議は「始まってから」効率化するのではない
会議を効率化しようとすると、
「発言は3分以内にしよう」
「会議は30分以内にしよう」
「参加者を減らそう」
といったルールを作りたくなります。
それも有効ですが、その前に見直してほしいことがあります。
ゴールを決める。
論点を事前に提示する。
資料を事前に共有する。
この3つです。
実は、会議の効率は会議が始まってからではなく、始まる前にかなり決まっています。
そして、何となく1時間の予定を入れるのではなく、ゴールと論点から必要な時間を考える。
30分で十分なら30分にする。
15分で済むなら15分でも構いません。
会議時間を短くすること自体が目的ではありません。
必要な人が集まっている貴重な時間を、価値のある議論や意思決定に使うこと。
それが会議を効率化する本当の目的だと思います。
まとめ
長い会議を短くするために、たくさんのルールを作る必要はありません。
まずは、
① ゴールを決める
② 論点を事前に提示する
③ 資料を事前に共有する
この3つから始めてみてください。
そして会議を設定するときには、
「本当に1時間必要だろうか?」
と一度考えてみる。
それだけでも、会議の時間は短くなり、議論の密度は高くなるはずです。
最後に
「会議が多く、なかなか仕事が進まない」
「議論はするものの、結論が出ない」
「経営会議や部門会議をもっと機能させたい」
そんなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
会議そのものを短くすることだけでなく、論点の整理や意思決定、決定後の実行まで含めて、実務で機能する進め方を一緒に考えます。