決めたことを実行に移す方法② プロジェクトチャーターで、やることを明確にする

決めたことを実行に移す方法② プロジェクトチャーターで、やることを明確にする

記事
ビジネス・マーケティング
前回は、優先順位を決めただけでは実行されないこと、重要なテーマは通常業務の延長ではなく、プロジェクトとして扱う必要があることを書きました。

今回は、プロジェクトを立ち上げる時に有効な「プロジェクトチャーター」について考えます。

プロジェクトチャーターという言葉は、聞き慣れないかもしれません。

難しく言えば、プロジェクトの立ち上げ文書です。
ただ、実務ではもっとシンプルに考えてよいと思います。

プロジェクトチャーターとは、
プロジェクトの目的、ゴール、対象範囲、責任者、関係者を
最初に明確にするための設計書
です。

難しい文書である必要はありません。
大切なのは、プロジェクトが始まる前に、
関係者が「何のために、何を、どこまで、誰が進めるのか」
を同じ理解で持てるようにすることです。

1. 最初の認識がずれていると、後で止まる


プロジェクトが進まない原因の一つは、
関係者の認識が最初からずれていることです。

たとえば、「利益率を向上させる」というプロジェクトがあったとします。

経営層は、会社全体の利益改善のためだと考えている。
営業部は、値引きや受注判断を厳しくされる話だと感じている。
製造部門は、特別対応や小ロット対応を減らす話だと受け取っている。
管理部門は、顧客別・案件別の採算を見える化する話だと考えている。

同じプロジェクトに参加していても、
何のためにやるのか、どこまでやるのかの認識がずれていることがあります。

この状態で進めると、途中で必ず噛み合わなくなります。

「それは今回の目的ではない」
「そんな話だとは聞いていない」
「うちの部署だけ負担が増えるのか」
「結局、誰が判断するのか」

このような状態を防ぐために、
最初にプロジェクトチャーターを作ることが有効です。

2. プロジェクトチャーターで決めること


プロジェクトチャーターは、分厚い資料である必要はありません。

A4一枚でも構いません。
大切なのは、関係者の認識を揃えることです。

整理すべき項目は、たとえば次のようなものです。
ブログ34_表1.png
この程度で十分です。

むしろ、最初から細かく作り込みすぎるよりも、
まずは「なぜやるのか」「何を達成するのか」「誰が関わるのか」
を揃えることが大切です。

3. 目的とゴールを分けて考える

プロジェクトでは、「目的」と「ゴール」が混同されることがあります。

目的とは、なぜこのプロジェクトを行うのかです。
ゴールとは、何が達成されたら完了なのかです。

たとえば、「顧客別採算を見える化する」というプロジェクトを考えます。

目的は、顧客ごとの採算を把握し、値上げ、撤退、重点顧客の判断に使えるようにすることです。

一方で、ゴールはもう少し具体的になります。

主要顧客について収益構造(売上、限界利益、特別対応回数、物流費、値引きなど)を整理し、顧客別の採算を定例会議で確認できる状態にする。
採算性の低い顧客について、価格改定や取引条件見直しの判断材料を作る。

このように、目的とゴールは似ていますが、役割が違います。

目的だけでは、方向性は分かっても完了条件が曖昧になります。
ゴールだけでは、作業は進んでも何のためにやっているのかが見えにくくなります。

両方を明確にすることが重要です。

4. 対象範囲を決める

プロジェクトでは、何をやるかだけでなく、何をやらないかも決める必要があります。

たとえば、「顧客別採算を見える化する」というプロジェクトでも、範囲の決め方はいくつもあります。

全顧客を対象にするのか。
主要顧客だけにするのか。
全商品を見るのか。
特定カテゴリーだけを見るのか。
過去何年分を見るのか。
値上げ判断まで含めるのか。
営業評価の見直しまで含めるのか。

ここが曖昧だと、途中で範囲が広がり続けます。

最初は顧客別採算を見るだけだったのに、途中から商品別採算も見たい、営業評価も変えたい、システムも入れ替えたい、という話になってしまうことがあります。

もちろん、関連するテーマが出てくること自体は悪くありません。

しかし、すべてを一度にやろうとすると、プロジェクトは重くなります。
関係者も増えます。
判断事項も増えます。
結果として、前に進みにくくなります。

また、対象範囲が曖昧なままだと、途中で無茶ぶりが入りやすくなります。
本来は今回のプロジェクトに含まれていないことまで、
「せっかくだからこれも」「ついでにここも」と追加されてしまうからです。

さらに、後になってから「それもやる前提だった」「そこまで含めて対応してほしい」といった、いわば後出しじゃんけんのようなことも起こりやすくなります。

こうした状態になると、現場は振り回されます。
当初の目的もぼやけます。
スケジュールも崩れやすくなります。

だからこそ、最初に対象範囲を決めることが大切です。

「今回はここまでやる」
「ここから先は次のテーマにする」

この線引きが、実行を助けます。
同時に、無茶ぶりや後出しじゃんけんを防ぎ、プロジェクトを前に進めやすくします。

5. 責任者と判断者を明確にする

プロジェクトでは、責任者を明確にすることも重要です。

「営業部で進める」
「管理部門で検討する」
「関係部署で対応する」

このような決め方では、実行が曖昧になります。

誰が責任者なのか。
誰が実務を進めるのか。
誰が判断するのか。
誰に相談すればよいのか。

ここを明確にしないと、全員が関係者でありながら、誰も責任を持って進めない状態になります。

特に重要なのは、判断者です。

プロジェクトが止まる時、多くの場合、作業が止まっているだけではありません。
判断が止まっています。

どの顧客を対象にするのか。
どの数字を使うのか。
どこまで精度を求めるのか。
値上げ提案まで踏み込むのか。
既存の会議体にどう組み込むのか。

このような判断が曖昧なままだと、担当者は動きにくくなります。

プロジェクトチャーターでは、誰が責任を持ち、誰が判断するのかを最初に整理しておく必要があります。

6. 関係者を最初に見える化する

プロジェクトは、担当者だけでは進みません。
多くの場合、複数の関係者が関わります。

営業部の協力が必要。
製造部門の情報が必要。
管理部門の数字が必要。
システム部門の対応が必要。
経営層の判断が必要。
現場メンバーの理解が必要。

こうした関係者を最初に整理しておくことが大切です。

誰に影響があるのか。
誰の協力が必要なのか。
誰が判断者なのか。
誰に早めに説明しておくべきなのか。
誰が反対しそうなのか。

ここを見落とすと、途中で止まりやすくなります。

「聞いていない」
「そのやり方では現場が対応できない」
「データを出すのにかなり手間がかかる」
「うちの部署にはメリットが見えない」

このような反応が後から出てくると、調整に時間がかかります。

プロジェクトは、関係者を後から巻き込むほど難しくなります。
だからこそ、最初の段階で関係者を見える化することが重要です。

7. 成功基準を決める

最後に、成功基準も決めておきたいところです。

プロジェクトは、進んでいるように見えても、何をもって成功とするかが曖昧なことがあります。

資料を作れば成功なのか。
会議で報告すれば成功なのか。
システムに数字が入れば成功なのか。
実際の経営判断に使われるようになって初めて成功なのか。

ここを決めておかないと、形だけの成果物で終わることがあります。

たとえば、顧客別採算の資料を作ったとしても、それが経営判断に使われなければ意味がありません。

値上げ判断に使われる。
撤退判断に使われる。
重点顧客の見直しに使われる。
会議で継続的に確認される。

ここまでつながって初めて、プロジェクトの成果と言えるかもしれません。

成功基準は、プロジェクトの最後に考えるものではありません。
最初に決めておくことで、途中の判断がしやすくなります。

まとめ

優先テーマを実行に移すには、最初の立ち上げが重要です。
プロジェクトチャーターは、難しい文書である必要はありません。

大切なのは、関係者の認識を揃えることです。

何のためにやるのか。
何が達成されたら完了なのか。
どこまでを対象にするのか。
誰が責任を持つのか。
誰の協力が必要なのか。
いつまでに進めるのか。
何をもって成功とするのか。

これらを最初に整理することで、プロジェクトは前に進みやすくなります。

プロジェクトは、最初の認識がずれていると、後で必ず止まりやすくなります。

だからこそ、優先テーマほど、最初にプロジェクトチャーターを作ることが有効です。

次回は、立ち上げたプロジェクトを実際に前に進めるための、WBSや進捗管理の考え方について書いていきます。

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