「経営戦略」という言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
市場分析、競合分析、差別化、ポジショニング、中期経営計画。
もちろん、こうした考え方は大切です。
ただ、経営戦略をもっとシンプルに言えば、
自社が何で選ばれるのかを決めること
だと思います。
お客様は、なぜ自社を選ぶのか。
競合ではなく、なぜ自社なのか。
安いからなのか。
便利だからなのか。
品質が高いからなのか。
対応が早いからなのか。
ここでしか買えないものがあるからなのか。
この「選ばれる理由」をはっきりさせることが、経営戦略の出発点です。
1. コンビニが選ばれる理由
たとえば、コンビニを考えてみます。
コンビニは小売店です。
飲み物、弁当、お菓子、日用品などを売る場所です。
しかし、今のコンビニは、単なる小売店ではありません。
ATMでお金を下ろせる。
公共料金を支払える。
宅配便を出せる。
チケットを買える。
コピーや印刷ができる。
商品を受け取ることもできる。
つまり、コンビニは「商品を買う場所」であると同時に、
日常生活の用事をまとめて済ませられる場所になっています。
コンビニの商品は、スーパーやドラッグストアと比べて、
必ずしも安いわけではありません。
それでも多くの人が利用します。
なぜなら、近いからです。
早いからです。
いつでも使えるからです。
買い物以外の用事も済ませられるからです。
つまり、コンビニは「安さ」ではなく、便利さで選ばれているのです。
2. ここでしか買えない理由をつくっている
コンビニには、そこでしか買えない商品があります。
それはコンビニのプライベートブランドだけではありません。
メーカーは特定のコンビニ向けに限定商品を出しています。
そうすると、お客様の判断軸から価格比較は外れます。
「安いから買う」のではなく、
「ここでしか買えないから買う」
という理由が生まれます。
ここに、コンビニの戦略があります。
近い。
早い。
用事が済む。
しかも、ここでしか買えない商品がある。
このように、選ばれる理由を重ねているのです。
3. 店舗数が、メーカーにとっての魅力になる
もう一つ重要なのは、店舗数です。
コンビニは店舗数が多く、多くの消費者との接点を持っています。
そのため、メーカーから見ても無視できない売り場になっています。
たとえば、もし店舗が100店しかなければ、
メーカーがそのチェーン専用の商品を開発したり、
限定商品を出したりするのは難しいかもしれません。
限定商品を作っても、販売できる場所が少なければ、
大きな効果は出にくいからです。
しかし、全国に多くの店舗があり、
毎日のように多くの人が利用する売り場であれば、話は変わります。
メーカーにとっては、新商品を届ける場所になります。
限定商品を出せば、話題を作れます。
消費者の反応を見る場にもなります。
その結果、コンビニには限定商品が並びます。
すると、お客様にはまた一つ来店する理由が生まれます。
店舗数が多い。
多くのお客様との接点がある。
メーカーにとって魅力的な売り場になる。
限定商品が生まれる。
お客様が来店する理由が増える。
このように、選ばれる理由がつながっているところに、
コンビニの強さがあります。
4. 戦略とは、選ばれる理由がつながる構造をつくること
コンビニの例から分かるのは、
経営戦略とは単発の打ち手ではないということです。
便利な場所に店を出す。
サービスを増やす。
限定商品を置く。
店舗数を増やす。
一つひとつを見ると、個別の施策に見えます。
しかし、それらがつながると、強い構造になります。
近いから来店する。
用事が済むから来店する。
限定商品があるから来店する。
人が来るからメーカーも商品を出したくなる。
メーカーの商品があるから、さらに来店理由が増える。
このように、選ばれる理由が積み重なり、
次の選ばれる理由を生み出していく。
これが戦略です。
経営戦略とは、立派な計画書を作ることだけではありません。
自社が選ばれる理由をつくり、それが続く構造をつくることです。
5. 中小企業でも考え方は同じ
もちろん、多くの中小企業がコンビニのような店舗網を持つことは
難しいでしょう。
全国に多くの店舗を展開することも、簡単ではありません。
大手メーカーと限定商品を共同開発することも、簡単ではありません。
しかし、考え方は応用できます。
自社は何で選ばれているのか。
価格なのか。
品質なのか。
対応の早さなのか。
専門性なのか。
地域密着なのか。
一括で任せられる安心感なのか。
担当者の提案力なのか。
この問いに答えられないまま、目の前の売上だけを追うと、
会社の判断はぶれます。
品質で選ばれたいと言いながら、値引きで受注してしまう。
専門性で選ばれたいと言いながら、何でも引き受けてしまう。
地域密着で選ばれたいと言いながら、対応エリアを広げすぎてしまう。
一つひとつの判断は間違っていないように見えても、
会社全体としては方向が揃わなくなります。
だからこそ、まずは自社が何で選ばれたいのかを決める必要があります。
まとめ
経営戦略とは、難しい計画書を作ることではありません。
自社が何で選ばれるのかを決めることです。
コンビニは、単に商品を売る場所ではありません。
近い。
早い。
いつでも使える。
用事が済む。
限定商品がある。
店舗数が多いから、メーカーにとっても無視できない売り場になる。
このように、選ばれる理由がいくつも重なっています。
そして、それぞれの理由がつながり、
さらに強い来店理由を生み出しています。
自社は、何で選ばれているのか。
これから何で選ばれたいのか。
そのために、何を強めるのか。
何をやめるのか。
どこに人とお金を使うのか。
こうした問いを整理することが、経営戦略を考える第一歩です。
経営判断、事業計画、管理会計、業務改善などについて、
「何から整理すればよいかわからない」
「自社の場合はどう考えればよいか相談したい」
という方は、お気軽にご相談ください。
現状を一緒に整理しながら、
次に取るべき打ち手を考えるお手伝いをいたします。