家族には怒るのに、看護師の前では普通。訪問看護師が気にしていること

家族には怒るのに、看護師の前では普通。訪問看護師が気にしていること

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コラム
家族にだけ、きつく当たる。その一方で、看護師や主治医の前ではおだやかにしている。精神疾患のある方を支えるご家族から、こんな話を聞くことがあります。

「私が何か言うと、すぐ怒るんです」「家では怒鳴るのに、先生の前では普通なんです」

訪問したときには穏やかに話していて、看護師の質問にも普通に答える。「特に変わりありません」と本人は言う。

でも、看護師が帰ったあとの家では違って、薬のことを聞いただけで怒ったり、お金のことで怒鳴ったり、物に当たったりする。

こういうとき、いちばんつらいのは、その落差を誰にも分かってもらえないことだと思います。

「看護師さんの前ではいい子なんだから」と言われているようで、家族だけが、家の中で怖い思いをしている。

でも私は、家族に見せる顔と、医療者に見せる顔が違うこと自体を、大切なことだと思っています。

「私の前では普通ですよ」で済ませるつもりはありません。むしろ、家族にしか見せない顔がある、というその一点を、いちばん知りたいと思っています。


「看護師から言ってもらえませんか」と頼まれたとき

家族から、「看護師さんから本人に言ってもらえませんか」と頼まれることがあります。

気持ちは、よく分かります。家族が何を言っても聞いてくれないなら、看護師から言えば聞くかもしれない。そう思うのは、当然です。

ただ、家族から聞いたことをそのまま「お母さんが困っているから、やめてください」と本人に伝えるのは、少しためらいます。

なぜなら、看護師が家にいるのは、ほんの短い時間です。そのあとの長い時間を本人と過ごすのは、家族だからです。

本人が「家族が看護師に言いつけた」と受け取れば、その反動が、また家族に向かってしまうことがあります。

だから、家族が本人に「先生もそう言ってたでしょ」「看護師さんもやめなさいって」と、医療者の言葉を借りて伝えるのも、あまりおすすめしていません。

「自分では何も言わず、他人に言わせている」と受け取られて、こじれてしまうことがあるからです。

外の人に相談することは、本人を言い負かすためではありません。

家族が一人で抱え込まないため。そして、家族と支援者が同じ方を向いて対応を考えるためです。ここがバラバラだと、本人もかえって混乱してしまいます。


お金のこと、薬のこと

同じ「家族に怒る」でも、中身はいろいろです。そのなかで、私が特に軽く見ないのが、お金のことです。

本人がお金を要求して、家族が断る。すると怒鳴って、物に当たって、大きな音を出す。家族が怖くなって、お金を渡してしまう。これが繰り返されている状態を、私は軽く考えません。

「怒ればお金がもらえる」という関係になってしまうと、要求はなかなか止まらなくなるからです。

「借金でもされたら困る」「これ以上怒らせたら怖い」。そう思って、渡してしまう親御さんもいます。

でも、家族がおびえながら要求に応じ続けているなら、それはもう、本人をどう説得するかという話ではありません。

家族の安全を、どう守るか。そこまで一緒に考える必要があります。

薬のことは、少し違います。

「薬を飲んで」と言うたびに怒るなら、家族は軽く声をかける程度にとどめてもらうこともあります。

飲まないからといって、家族が毎回追いかけて飲ませなくていい。「なぜ飲みたくないのか」は、看護師が本人から聞いていきます。

飲んでいないのに「飲んでいます」と言う方もいますが、その場合も、問い詰めるのではなく、症状の変化を見ながら考えていきます。

同じ「怒る」でも、お金の要求なのか、薬の声かけなのか、生活のことなのか。そして、家族がどれくらい怖いと感じているのか。そこによって、できることは変わります。

だから私は、「怒らせないようにしてください」とも「言うべきことは言ってください」とも、はじめから決めてしまうことはありません。まず、家の中で何が起きているのかを知りたいんです。


その怖さを、家の中だけに置いておかないでください

看護師や主治医の前で本人が穏やかだからといって、家で起きていることが小さなこと、とは限りません。家族にしか見せない様子は、確かにあります。

だからこそ、支援者に伝えるときは、「怒ります」だけで終わらせないでほしいと思っています。

何があったときに、どんなふうに怒るのか。薬のことなのか、お金のことなのか、断ったときなのか。最近始まったのか、前から続いているのか。

そうした具体的なことが、支援者にとっては、状況を一緒に考えるための大事な手がかりになります。

私はココナラの3日間相談でも、本人をどう説得するかだけではなく、今、家の中で何が起きていて、ご家族がどう過ごしているのかを伺いながら、一緒に考えていきます。

支えている自分の方が、こわくてたまらない。

もしそうなら、それを家の中だけで抱えなくて大丈夫です。そのまま、話してください。




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